私が小さい頃、明治生まれの祖母がちょっと怖くて不思議な話をたくさん聞かせてくれました。少しずつアップしていきます。
「おばあちゃんの子どもの頃って、どんな遊びしてたの?」
ある日ふと気になって聞いてみた。
「一人ならお手玉に折り紙、二人ならあやとり、みんなで遊ぶならかくれんぼかな」
「かくれんぼ! やってたんだ」
「でも一時期、禁止されたことがあってね…」
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祖母が五歳の春、村の子ども達十数人が広田さんの家に集まっていた。ひな祭りだった。
甘酒とお菓子を食べた後、かくれんぼが始まった。
そこは古く広い家であらゆるところに隠れることができ、鬼になると大変だった。
「九十八、九十九、百!」
何度目かで鬼になった祖母は数え終えるなり走り出した。
「○ちゃん見つけた! △ちゃんも机の下にいた!」
次々と隠れていた友達を見つけていったが、どうしても最後の一人太介がいない。
「太介くーん、出ておいでー!」「太介ー!」
あんまり出てこないのでみんなで呼んだが返事がない。
Hさん一家にも隅から隅まで探してもらったが見つからない。
「家の中だから心配ない。どこかで寝ているのかもしれないな。そのうち出てくるだろうから今夜は泊めてやるよ」
広田さんは太介の家に電話でそう伝え、時間も遅くなったので子ども達を家に帰した。
だが一晩たっても太介は現れなかった
翌朝、これは一大事と村中に連絡が回り、手分けして山や川を探そうということになった。
それぞれの持ち場を決め出発しようとしたその時…
「おーい!見つかったぞー」家の中から広田さんが叫んだ。
隣村の駐在さんからの電話で太介を保護しているという
「山越えたところだぞ! なんでそんな所に?」
「五歳の子どもが一人で行けるとは思えんが…」
その日の夕方、太介は隣町の駐在さんに連れられて帰ってきた。
「納屋に隠れていたら、きれいなおばちゃんが来て…手を引くから一緒に山の方に行ったんだ。どんどん歩いてたら突然鶏の声が聞こえて…そしたら隣村の入口に一人で立ってた」
何があったのか聞かれた太介は、自分でも不思議そうにそう答えた。
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「それから一年くらい、かくれんぼは禁止されたよ…もっとも誰もやろうとは言い出さなかったけどね」