仕事で出向いた取引先でお会いした女性社員さん。大変感じの良い方なのですが、その後の応対に何だかモヤモヤ。そしてなぜか、最後にはなんとも不思議で楽しい状況になったのです。
取引先の女性社員さんはとても素敵な雰囲気
先日、私は仕事で取引先に出向きました。複雑な案件のため、直接教えていただくのが確実とのことで、指示された書類一式を揃えて伺いました。応対に現れたのは、私より10歳は年上と思われる、大柄なベテラン感漂う女性社員さん。ハキハキした口調、私の前を歩く元気な足取り。とても頼もしい雰囲気。
「本日はご苦労様です。粗茶ですが、どうぞお召し上がりください」彼女の心遣いとにこやかな笑顔を、私は大変嬉しく思いました。
「ハイ正解」!? あなたは先生? 私は生徒?
持参書類の確認後、複雑そうな用紙の束が私の目の前に置かれました。ここの住所欄は会社の所在地。けれどこっちの住所欄は、提出した運転免許証との整合性が必要なため、私の個人住所を記入。署名欄や押印欄も同様で、最初からとにかくややこしい! その他の箇所も、いちいち記入のルールがあり、よほど注意しなければ間違えてしまいそう。
斜め向かいに座った女性社員さんは、私が悩んでボールペンを動かす手を止めると、しっかり教えてくださいます。私はアドバイス通り、ひとつの欄を書きあげました。その瞬間、斜め向かいから
「ハイ正解!」と明るい声が響きました。え? 空耳かと思いましたが、とりあえず次の欄を埋めると、
「ハイ正解!」もはや空耳ではありませんでした。私が欄を書きあげるたび、彼女は
「ハイ正解!」と言うのです。
これは一体… 一生懸命書く私への励まし? ただ、同じ会社の先輩と後輩ならいざ知らず、彼女と私は別会社の初対面という関係。なんだか違和感。
「ハイ正解!」彼女の元気なかけ声に合わせ、ひたすら用紙を埋めていく私。もはや、先生の前で問題を解く生徒の気分でした。
決して悪い人ではありません! そんな彼女がもたらした結末とは…
書類が9割がた仕上がり、終盤の難しい箇所にさしかかりました。女性社員さんも、内容が難しいのでうーんと悩みながら腕組み。私が更に
「この部分の昨年の資料をを見せていただいて書きましょうか?」とたずねると、どうやらその資料の見当がつかないらしく、さらに困った様子。私も早く帰りたい一心で、
「では○○はどうですか」
「××のコピーはありますか」と思いつくままどんどん質問攻め。彼女はあたふたと焦った顔で
「質問はごめんなさい、ひとつずつ! ああ混乱してきた、ごめんなさい」と何度も謝りながら、後ろの棚から手あたり次第、ファイルを手に取り戻すことの繰り返し。
そしてようやく、これぞという書類発見! 彼女はとても嬉しそうな表情で私に向き直り、ほっとしたような口調で言ったのです。
「ハイ正解!」これには私もびっくり。あとで考えると、自分に向けてのシャレだったのでしょうか。さらに満面の笑みで
「あなたに質問攻めされて、私はもう焦ってしまいましたよ。さあこれで大丈夫、しっかり仕上げてしまいましょう!」
私は決して彼女を困らせようとしたわけではありません。また、彼女も決して悪気があったわけではないのですよね。わかっていても、ぬぐえない違和感にモヤモヤしてしまった
「ハイ正解!」の連呼。ですが、自分自身に向けても
「ハイ正解!」と笑顔で言っている姿を見て、なんだか憎めない人だなと思いました。
(ファンファン福岡公式ライター/山ナオミ)