「NTT西日本スペシャル おいでよ! 絵本ミュージアム2022」が福岡アジア美術館(福岡市博多区)で8月28日(日)まで開催されています。今回のメインビジュアルを手がけたのは絵本作家のたけうちちひろさんです。たけうちさんの切り絵作品はプロジェクションマッピングとして映像でも展示されています。たけうちさんにファンファン福岡編集部が話を聞きました。
「木の実に子どもたちの“だいすき”をいっぱい入れました」
ー今回のテーマは「だいすき!」。たけうちさんはメインビジュアルでどんな「だいすき」を表現しましたか?
モチーフにしたのは私が購入した「メルヘンの木」と呼ばれる観葉植物です。正式には「ソフォラの木」。「はてなの木」などともいわれているそうです。その姿がすごくかわいくて。「メルヘンの木」という名前もいいですよね。普段、子どもの絵画教室を経営しています。その子どもたちに「だいすきなもの」をアンケートして、木の実の中に表現しました。子どもたちの「だいすき!」をいっぱい入れたいと思いました。
ープロジェクションマッピングで表現された自身の作品については。
静止画で作った切り絵が動くのを見て感動しました。自分が作ったキャラクターは歯磨きするときにこんな動きをするのかと。時計の音も重厚でかっこよかったです。子どもたちが、動くキャラクターを走って追いかけていました。絵本のときとは違う反応が見られてよかったです。
ー切り絵を始めた経緯は。
新聞社で働いていたころ、ミニコミ誌の編集を18年間担当していました。ある日、5歳くらいだった息子から「最近、面白くないの? あんまり笑ってない」と言われたんです。「絵がうまいからお絵描きの先生になったら」とも。私は、はっとして「お絵描きの先生になりたかった」ことを思い出し、その道へ進みました。
それから何年かたったころ、教室の子どもたちが「大人は面白くない」と思っていることを知ったんです。「大人は楽しい」という背中を見せるためにコンクールへの挑戦をはじめました。そんな時、ボローニャ国際絵本原画展で入選することができ、絵本を出版することもできました。地元関西系のテレビで放映される機会もあり、「楽しい大人」の姿を見せられているかなと感じています。
「子どもたちの何げない日常の幸せを描きたい」
ーコロナ禍で作品に変化はありますか。
作りたいものが変わりました。子どもたちの日常の幸せを描こうと。猫と遊ぶ、夜にお茶を飲んでほっとするなど、何げないところにある楽しさを表現したいと思いました。
ー作品から子どもたちにどんなことを感じてほしいですか。
メッセージ性は設けない作り方をしていますので、受け手に委ねています。自由に考えてくれたらいいなと思っています。
ー今回のたけうちさんの展示箇所で特に見てほしいところは。
絵本の世界観を損なわずにプロジェクションマッピングで表現されています。映像を手がけてくれた“プラプラックス”さんが絵本の世界観を大事にしてくださったのがとても分かります。細かいところまで見てもらえたらうれしいですね。
会場のどこを見ても楽しいです! 親しみのある絵本のシーンを体感できたり、知らない絵本との新鮮な出合いもあったりすると思います。ぜひ来場してください!
たけうち ちひろ
大阪府生まれ。イラストレーター、切り絵作家、絵本作家。武蔵野美術大学短期大学部卒業。2015、2016年ボローニャ国際絵本原画展入選をきっかけに日本、イタリア、フラン ス、英語圏など世界各国で絵本を出版。切り紙をはじめとしたエ作本の執筆・監修を手掛けるほか、こども造形絵画教室 の開講、保育園・幼稚園・小学校・障害者福祉事業所のエ作指導など、手がける傍ら自らの作家活動にも励む。2018年3月8日「国際女性デー」には世界12人の女性アー ティストに選出され「Googleanniversary Logo」を制作。
NTT西日本スペシャル おいでよ!絵本ミュージアム
会期:8月28日(日)まで ※会期中無休
時間:9:30~17:30(入場は17:00まで)
会場:福岡アジア美術館7階 企画ギャラリー、アートカフェなど
※会場内の密を避けるため、観覧時間は約2時間