トゥクトゥクといえば、タイをはじめ東南アジアでよく見かける三輪自動車!そのトゥクトゥクが福岡の未来モデル都市といわれるアイランドシティを走っているのです。今回は、福岡のタウン情報誌の編集者として活躍していた帆足 千恵さんが、今年3月末にオープンした複合施設「アイランドアイ」のROUTE CAFEAND TUKTUKを拠点に、地域の課題を解決するトライの全貌をレポートします。
さまざまな地域と向かい合った経験から着想
福岡市は博多湾をぐるりと囲むような形になっていて、西は糸島に続くシーサイドももちエリア、東は志賀島、それに続く海の中道が観光名所にもなっています。 その海の中道にほど近いアイランドシティは、埋立でできた人工島であり、未来のモデル都市と称されるところ。 大規模な港湾エリアと戸建てや高層マンション、緑あふれる公園に学校と住環境が充実、医療機関や体育館も拡充し、商業施設やホテルも続々とオープン予定です。
2020年3月末にオープンした複合商業施設「アイランドアイ」の1階にオープンした「ROUTE CAFE AND TUKTUK」(以下ROUTE CAFE)では、三輪自動車トゥクトゥクのレンタルサービスを行っています。 普通自動車免許があれば、4人乗りが1時間4,000円〜。「左右に海が広がる海の中道を、風を感じながら突っ走るってどんなに気持ちいいだろう」と想像するだけでうっとり。
私自身ROUTE CAFÉを運営する株式会社ローカルデベロップメントラボ(以下LDL)とは、福岡市中央区大名にある和文化観光案内所「SUiTO FUKUOKA」などで外国人旅行者向けの体験プログラムを一緒に開発するなどの連携をしていました。 LDLの親会社である株式会社イーストは、全国約400を超える商業施設の売上管理システムやオペレーション、セールスプロモーション業務などを中心に、日本各地の地域といろいろやっているとは知っていましたが…。 「トゥクトゥクこそ、福岡のまちにぴったり」と唸ってしまいました。 まずは、担当者のお二人に企画開発の経緯をおききしました。
絹田さん: トゥクトゥクのことを着想したのは、LDL、イーストの代表取締役である長島秀晃ですね。私も地方自治体との仕事をしていくなかでどうしても地域に足りないものが、最寄りの公共交通機関と目的地を結ぶ二次交通でした。 “とても魅力的なエリアなのに、公共交通機関がないために旅行者が行くことができない” “逆にそういう不便な場所にこそ、魅力的なものがたくさんある” これをなんとかしたいと思ったときに、三輪バイクあるじゃないかと。 日本や世界各地を飛び回っている経験から得たものもあると思います。東南アジアだけでなく、ドイツやフランスなどでは観光の足として三輪電動自転車、さらにEVカーが使われていますし、沖縄でもこの三輪バイクが利用されています。 ここアイランドシティは、ホテル、MICEの施設がオープン予定で、体育館などもあり、これからより多くの旅行者が訪れるところになっていきます。また、地域住民もここの住みやすさを求めてどんどん増えている。来訪者と近隣の方々と共存していく、モデルケースになるのではないかと思っています。 もともとLDLは「地域の未利用のものを編集する集団」だと自負しています。土地や空間、食材、観光案内所や地域の体験コンテンツ開発、6次産業化に関わる商品開発などここを拠点にどんどん出していきたいと考えています。
原田さん: 実のところは正味3ヶ月で企画からオープンまでと猛スピードでした。昨年夏ぐらいにこのアイランドアイのお話がなんとなくあったのですが 実際は12月に正式に決定をして3ヶ月で車の手配や許可、店舗内装、スタッフの採用をすすめてきました。 3月27日にオープンしたと思ったら、コロナの影響により4月2日から休業。6月からやっと再開できました。トゥクトゥクは5台あって4人乗り3台と7人乗りが2台。このカフェから海の中道まで約10分、志賀島までも約20分と手軽に使うことができる足として楽しんでもらえると思います。 また、このカフェは東京の丸の内にある「ROUTE CAFE AND THINGS」という旅をテーマにしたカフェラウンジの姉妹店的な立ち位置です。旅路(ROUTE)で出会った様々な地域の商品を販売しています。
原田さん: この稼働力を活かして近隣のみなさんにも楽しんでもらおうと計画しています。コロナの影響で実現できていませんが、アイランドシティ中央公園に出向いて紙芝居などこどもたちに楽しんでもらったり、ヨガを開催するなどして、地域の方に馴染んでもらうこともどんどんやっていきたいですね。
観光の足+地域課題を解決
楽しい二次交通としてのトゥクトゥクは佐賀県や福岡・糸島で地域の事業者と連携して活用されているそうです。
絹田さん: 茶と温泉で有名な佐賀県・嬉野温泉では、観光協会に貸し出しています。観光協会の会員である宿の方がお客様を連れて運転。茶畑をみながら窯元を巡る乗り物として、喜ばれています。
糸島では九州大学の学生さんと産学連携で、トゥクトゥクの活用の話を進めています。5月には糸島で移動型スーパー「ファーマーズマーケット」を実施。野菜や産直のものをこちらから出向いていって、お届けしました。
考えたら観光だけではなくて、地域に貢献できることがたくさんある、可能性は無限だと感じています。
地域との連携で新しいコト続々
無限の可能性を秘めたこのモビリティを使って、今後手がけていきたいことや計画をきいてみました。
絹田さん: もうすぐホテルもできるので、ホテルの送迎などへの利用は考えています。そして、地域の方で一緒に『やりたい』と思っている方と連携していきたいですね。九州や他の地域の自治体から相談をいただいています。 なんでも自分たちだけでやるには限りがあるし、本来の二次交通の課題解決についても地元の方で管理・運営する方がいないと継続できません。着地型の体験ツアーも企画していきたいですね。
取材を終えて…
取材を終えて痛感したのは、トゥクトゥクは「水辺と風」という福岡の気持ちよさをまるごと体感してもらうのにぴったりの乗り物であること。 そして、アイランドシティを拠点にしたショートトリップは、金印が発見され、古来からの歴史が息づく志賀島とアイランドシティという福岡の過去(昔)と未来を行き来できる感覚も楽しめるのです。 二次交通の問題を解決するだけでなく、その土地ならではの風景をゆったりとした速度で感じられるので、さまざまな着地型ツアーに活用されることでしょう。 With コロナで自然の中でのびのびとした生活、旅が求められる中で、福岡でのこの挑戦がカスタマイズされて、全国各地に広がっていきそうです。 文=帆足 千恵
ROUTE CAFÉ AND TUKTUK
福岡市東区香椎照葉6-6-6 アイランドアイ1F https://routecafe-tuktuk.com/