福岡の魚はNo1! 福岡で“おいしい魚”が食べられるのには、理由がある。

福岡の経済界に精通する、近藤 益弘さんが、福岡の現在(いま)、そして未来(あした)を多彩なランキングを切り口にしながら、展望していくシリーズです。 〝食の都〟として脚光を浴びることも多い福岡市で特に人気なのは、〝おいしい魚〟です。玄界灘を臨む福岡市の漁港取扱高は、4年連続で日本一を記録しています。さらに人口10万人あたりの魚料理店の軒数も全国の大都市の中でトップ。今回は、「なぜ、福岡の魚はおいしいのか?」について考えてみます。

出典:フクリパ
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東京人・大阪人の胃袋さえも射止める、福岡のおいしい魚は世界有数の漁場を泳ぐ

「福岡でおいしい魚を食べたい」——。東京や大阪などから出張や観光で福岡市を訪れる人たちの間で〝福岡の魚〟が人気である。 『水産白書』によると、2016年における日本の漁業・養殖業生産量は436万トン、漁業・養殖業の産出額は1兆5856億円。四方を海に囲まれた日本は古来、魚を食して愛してきた歴史を持つが、この〝お魚大国〟といえる日本で近年、福岡の魚が注目を集めている。 おいしさで定評のある福岡の魚を取り扱う福岡市中央卸売市場鮮魚市場(通称:長浜鮮魚市場)の2016年における漁港取扱高は457億円に上り、全国の主要産地市場(漁港)の中で4年連続トップの記録を持つ。

出典:Fukuoka Facts

さらに、福岡市は魚関連の料理店の多い都市でもある。福岡市が、全国の20政令指定都市と東京都区部を対象に『2015年国勢調査』『iタウンページ』を基に調べた結果、魚料理店は人口10万人あたり22.1軒で第1位いう事実も明らかになった。

出典:Fukuoka Facts

水揚げが多く、魚料理店も多い福岡市は、博多湾から北へ向かうと玄界灘があり、その南西に五島灘が控え、東に転じると響灘となる。これら北部九州の海は、世界有数の漁場でもある。 豊富な栄養を含む黒潮は、鹿児島付近で太平洋側と日本海側へ分岐する。日本海側へ進む黒潮は対馬海流となって、九州西方の五島灘を通過して玄界灘、対馬海峡へ流れ込む。そして、九州北部の大陸棚で大量の日光と酸素を取り込んでプランクトンを爆発的に発生させる。 北部九州の海では、間宮海峡から南下して来た寒流のリマン海流が対馬海流とぶつかって、暖流と寒流の魚が豊富なプランクトンを求めて集まることで世界有数の漁場になっているのだ。

周辺の海で獲れた魚も集まって来る、漁港取扱高日本一の長浜鮮魚市場

「福岡の魚はなぜ、おいしいのか?」という点については、玄界灘や五島灘などの北部九州の漁場で獲れた良質な魚が集まって来て、日本一の漁港取扱高を誇る長浜鮮魚市場を抜きには考えられない。 鮮魚市場は通常、漁港にある産地卸売市場(産地市場)、消費地である都市に立地する消費地卸売市場(消費地市場)に大別される。漁港の産地市場で取り引きされた鮮魚は、地元の消費者へ届くだけでなく、都会の消費地市場向けに出荷されている。 先般、移転問題で注目された豊洲市場は、消費地市場。一方、長浜鮮魚市場は、国指定の特定第三種漁港である博多漁港を持つ産地市場なのだ。一大消費地である福岡市に立地する長浜鮮魚市場は制度上、産地市場に分類されるものの、消費地市場的な機能も備えた全国的に珍しい鮮魚市場という特徴を備える。 このため、周辺の漁港から出航した漁船も母港の産地市場よりも高額で取り引きさることが多い長浜鮮魚市場への水揚げを選びたがる。結果的に周辺の漁場で獲れた魚も長浜鮮魚市場へ集まって来るという流れを生み出している。そして、年間300種類もの豊富な魚種を取り扱う長浜鮮魚市場は福岡都市圏に限らず、関東・関西向けにも供給している。

出典:フクリパ:長浜鮮魚市場では、年間300種類もの豊富な魚種を取り扱う

『福岡市水産業総合計画』(2017年度~2021年度)では、「福岡市の水産業は、新鮮な水産物を市民に安定的に供給するほかにも、博多湾の環境保全など多面的な機能の発揮により市民の暮らしを支えています。また、『魚がおいしいまち福岡』として都市のイメージを支えており、その魅力を国内外へ発信していく必要があります」と、シティープロモーションにおいても重要視されている。

魚の鮮度を保ちながら、おいしさを引き出すスゴ技があった

血抜き、活き締め、神経抜き―――。漁師や鮮魚店、釣り人からショッキングな言葉を耳にすることがある。魚通を自認する人たちが、「おいしい魚は活き締めだ」「神経抜きの魚はうまい」と語り合う場面に出くわしたりもする。 魚に限らず、生き物の血は酸素を欠乏すると、黒く固まる。死んだ魚の血は黒く固まった上に細菌も繁殖しやすく、腐敗の温床となる。このため、魚の血を抜くことで腐敗を遅らせる下処理を「血抜き」と呼ぶ。血抜きのうち、魚が生きているうちに処理することを特に「活き締め」と言う。 また、真ダイをはじめとする中型魚やマグロなどの大型魚は、血抜きと同時に「神経抜き」と呼ばれる下処理を施す。神経抜きとは、魚の眉間に穴を開ける、もしくは鼻の穴からワイヤーを通して脊髄の神経を壊す行為。脊髄の神経を壊すことで脳からの「死んだ」という信号を遮断して、死後硬直までの時間を延ばすために行う。 たしかに血抜き・活き締めや神経抜きは人手を要する作業だが、自然死した魚に比べて鮮度を長期間保つことができ、味も良くなる。漁場に恵まれた九州北部は、昔から魚の味に敏感な土地柄であり、漁師をはじめ鮮魚市場や鮮魚店では、魚をおいしく味わうために手間暇を掛けながら下準備している。

出典:フクリパ:福岡市内の鮮魚店の店頭には、旬の魚が並ぶ(柳橋連合市場にて)

福岡の魚がおいしい理由としては、周辺の海で獲れた魚が集まって来る長浜鮮魚市場の存在に加えて、血抜きや神経抜きなどに代表される魚の味や鮮度に対する技術面でのこだわりも大きい。

東京とは〝一味違う〟、独自の魚食文化が生み出したのが甘いしょうゆだった!?

福岡をはじめとする九州では、アジ・サバなどの青身魚やタイなどの白身魚のコリコリとした食感の刺身を好む。このような食感を保つ上でも血抜き・活き締めや神経締めは重要である。

出典:フクリパ:福岡をはじめとする九州地区では、コリコリとした食感の刺身が好まれる

これに対して、東京をはじめとする関東では、刺身は寝かせて熟成させた上で味わうため、血抜き・活き締めや神経抜きなどの下処理を必要としない。 関東で多く消費されるマグロなどの赤身魚は筋肉質の魚であり、多く含まれたATP(アデノシン三リン酸)がうまみ成分であるイノシン酸などのアミノ酸に変化させる時間を必要とする。このため、関東では、刺身を熟成させることでアミノ酸を多く含んで甘みのある状態で食べるので辛いしょうゆが合う。 一方、食感を優先して新鮮な刺身を好む九州では、少なくなりがちなアミノ酸を甘いしょうゆで補う。つまり、魚食文化の違いが、しょうゆの違いにも表れている。

出典:フクリパ:九州各地のしょうゆメーカーが、刺身にあう甘口の商品を発売する

「福岡の魚がおいしい」という評判は、東京とは〝一味違う〟、新鮮な魚を味わう福岡の魚食文化が受け入れられている証ともいえる。 福岡市内に魚料理店が多い点について、飲食店の出店事情に詳しい株式会社リーシングサポートの吉住征一代表取締役は、以下のような見方を示す。

出典:フクリパ:㈱リーシングサポートの吉住社長

吉住さん: 2000年余りの歴史を持つ日本最古の港湾都市と称される福岡・博多は、古来から、海と親しみ、魚をおいしく食べて味わう食文化が根づいている土地柄です。 新鮮な生食用の真サバを用いたゴマサバをはじめ、透明なイカの活け造り、高級魚アラの刺身盛りなどの名物料理も人気のこのまちでは、それぞれのお店の料理人が腕を競い合っている。この点も福岡・博多で美味しい魚が食べられる理由の一つになっていると考えています。

地域の宝である〝おいしい魚〟を存分に味わおう!

北部九州の豊かな漁場に恵まれて、周辺の海で獲れた良質な魚も水揚げされる福岡市では長年、優れた下処理技術が積み重ねられている。そして、古来、魚を愛して味にもこだわってきた消費者が、地元の魚料理店を支え育んできた側面もある。

出典:フクリパ:”博多の台所”柳橋連合市場には、新鮮な魚を求めてプロの料理人だけでなく、多くの市民も訪れる

今日、新型コロナウイルスの猛威によって国内外の飲食業は大きなダメージを被っているものの、恵まれた豊かな漁場と長年培われた高い技術が、国内外に誇るべき〝地域資源〟であることに変わりはない。今後の情勢の推移いかんはあるものの、魚を獲る人、そしてさばく人が長年育んできた地域の宝である、おいしい福岡の魚を存分に味わってみてはいかがだろうか。

施設名:柳橋連合市場
住所:福岡県福岡市中央区春吉1-5-1

『Fukuoka Facts ~データでわかるイイトコ福岡~』  http://facts.city.fukuoka.lg.jp 4年連続1位!!海の幸が集まる港 福岡 - 全国主要産地市場(漁港)取扱金額(平成28年) http://facts.city.fukuoka.lg.jp/data/fish-market/ ラーメン、もつ鍋だけじゃない! - 魚に関する料理店の数 –  http://facts.city.fukuoka.lg.jp/data/fish-market/ 『美味しい魚はココにある博多長浜鮮魚市場』  http://nagahamafish.jp 水産庁『水産白書』  https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/index.html 福岡市『福岡市水産業総合計画(平成29年度~平成33年度)』

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