これは私が高校2年生の夏、沖縄へ修学旅行に行ったときに体験した不思議な出来事です。私には慕っていた祖父がいましたが、中学2年生の夏に癌を患い他界してしまいました。亡くなった祖父が天国から私の命を救ってくれたと言っても過言ではない、そんな不思議なお話です。
初めての旅行に高まる期待
私が通う高校は、修学旅行で沖縄に行っていました。私の家族は裕福でもなく、父は仕事が多忙、祖父母と同居していたため母も忙しく、更には兄と私は歳が離れていたので「家族旅行」というものに縁がありませんでした。
なので、産まれて初めての旅行は修学旅行。気の合うクラスメイトと同じ班を作り、どこに行くか計画を立てる時から、もう心が躍りワクワクしていました。
旅行前日から眠れず、当日は飛行機ですら楽しくて、飛行機で飲んだコンソメスープの感動を未だに覚えています。
ハイの状態で臨んだ修学旅行
そんな浮かれた状態で沖縄に着いてからは、本当に楽しい毎日でした。10年以上たった今でも、当時どこで、何をして、どんな感情だったか… 昨日の事のように思い出せます。
そして、一番忘れられない出来事が帰宅前日に起こります。その日は、昼から夕食の時間までプライベートビーチでの自由時間が設けられていました。私は部活の仲間と集まって楽しんでいました。私は泳げないので砂浜で遊んでいたのですが、「皆で海に入ろう」という話になりました。
「海に行くのは怖いな」と思いながらも、ハイになっていたので浅瀬にいれば良いかと思い、二つ返事で海の中へついて行ったのです。
海で助けてくれたのは…?
泳げないのですが、海は大好きなので、沖縄のきれいな海に入って遊べただけでも心はウキウキ大満足。しかし、本当に浮かれていたのか、私は遊んでいるうちに、気づかないままどんどん深い場所へ流されていってしまいました。
気付いた時にはもう足が着かず、友人達はボール遊びに夢中になって私が溺れている事に気が付きません。必死になって、上へ上がろうとすればする程海面が遠くなっていきました。
「あ、もうダメかも…」そう思って意識が遠のいたところまで鮮明に覚えています。最初は聞こえていた皆の笑い声がどんどん遠くなり、海の静かさを感じていたその時…!
誰かに上へ引っ張られた感覚がありました。意識も遠のいていて、視力も良くないのですが、そこには祖父の姿がありました。そして、次にハッキリ覚えているのは、友人達が一生懸命陸まで運んでくれた場面でした。
未だに夢なのか現実なのかハッキリしない所ですが、助けてくれた友人達に聞くと
「気が付いたら私がいなくなり、慌てて探したら突然浮かんで来て顔が見えた」と言っていました。
色あせない祖父との思い出
嘘のような本当の話ですが、私は今でもそれが祖父だったと信じています。祖父は生前、無口、無表情、頑固という典型的な昭和の祖父でした。しかし、出掛ける時は必ず私を連れて行ってくれてメロンクリームソーダを飲ませてくれたり、鬼ごっこしたいと言えば疲れていても庭に出て付き合ってくれる。そんな素敵な祖父でした。
亡くなって15年以上経ちますが、未だに祖父は私を助けてくれます。霊的なものは信じていませんが、ピンチの度に祖父を近くに感じるのです。しかし見えない姿に心はなんだか少し寂しくなります。
大好きだった祖父が亡くなったのも、暑い夏でした。夏になると生前の祖父との楽しい思い出と、沖縄で遠のく意識の中うっすらと見えた姿を思い出して無性に会いたくなります。
(ファンファン福岡公式ライター / ハッピーポイフル)