ビールのおいしい季節です。けれど福岡県の2021年飲酒運転事故発生件数は、いまだ全国ワースト7位。この時季にこそ、いま一度「適正飲酒」や「飲んだら乗らない」について考えたいですね。NPO法人はぁとスペースの山本美也子さんとキリンビール九州統括本部長の杉山和之が飲酒運転撲滅やスロードリンクについて話しました。
NPO法人はぁとスペース理事長 山本美也子さん
福岡県飲酒運転撲滅活動アドバイザー。看護師。障がい者スポーツ指導員
キリンビール九州統括本部長 杉山和之さん
「一番搾り」が発売された1990年に入社。2021年3月から現職
警察署と連携してノンアルコールにも注力
―現在取り組んでいる活動について。
山本美也子さん(以下山本) 飲酒運転の事故で息子を亡くし、飲酒運転撲滅活動を始めて11年。命の大切さを伝え、飲酒運転によって加害者も被害者もつくらないよう訴える講演をしています。コロナ禍で一時休止中ですが、キリンビバレッジの方々とキリンビール提供のノンアルコールを配布する街頭啓発活動などもしています。
杉山和之(以下杉山) 飲酒運転撲滅に関しては、酒類メーカーとしての社会的な責任を強く意識し、アルコールの良い面を伝え、有害な摂取を根絶するためにキリングループ全体で取り組んでいます。例えば2009年からハンドルキーパー運動※を推進し、警察署や自治体と連携して啓発活動を続けています。直近では7月18日にキリンビール福岡工場が朝倉警察署と「飲酒運転撲滅キャンペーン」を実施しました。
※ ハンドルキーパー運動…自動車で仲間や知人と飲食店などへ行く場合、お酒を飲まない人(ハンドルキーパー)を明確にする運動。
山本 ビールを飲みながらの楽しい思い出もあり、私はお酒が悪いとは思いません。大事なのはお酒について正しく理解し、“飲んだら乗らない”を意識するのが大切だと思います。
杉山 人と人をつなぎ、人生に彩りをもたらすお酒の価値を感じてくださっていて、本当にうれしく、同時に身が引き締まる思いです。お酒を飲めない時、飲めない体質の方、いろいろな場合がありますので、キリンビールではアルコール0.00%の商品「零ICHI(ゼロイチ)」〈写真右〉や「グリーンズフリー」のおいしさ向上にも力を入れています。
山本 ノンアルコールがおいしいとうれしいですよね。最近ではアルコール量の表示にも取り組まれていて先進的だと感じます。
自販機やリーフレットで啓発お酒は会話や食事とスローに楽しむ
―共同での取り組みについて。
杉山 はぁとスペースさんの活動を支援する「Stop!! 飲酒運転」の清涼飲料自動販売機を設置し、売り上げの一部を啓発ステッカー制作などに活用いただいています。
山本 ステッカーは啓発活動で子どもたちなどに配っていて、その枚数は20万枚超。御社とは既に11年ご一緒させてもらい、心から感謝しています。
杉山 山本さんには、弊社での講演もお願いしました。リアルな話を聞くことで、社員一人一人が「飲酒運転はあってはならない」と改めて思いを強くしました。
山本 リーフレット「お酒との上手な付き合い方」は、お酒の良い面、悪い面が紹介され、さらにアルコールパッチテストも付いていて感心しきり。他社での新入社員研修の教材に利用したら大変好評でした。
杉山 キリングループでは、お酒の時間は会話や食事とゆっくり楽しもうという「スロードリンク」を提唱しています。また、日本人の約4割は遺伝的にアルコールに弱いとか。自分の体質を知るのも大事ですね。
―飲酒運転のない社会の実現に向けて。
山本 昨年6月に福岡県が条例に定めた「飲酒運転をする人を見かけたら110番 」は、全国的にも画期的な動きです。私たち県民が県警に代わって通報する、社会の見守り運動だと思います。もっと浸透するといいですね。
杉山 一人一人が自分主体で行動するのが大事だと思います。お酒を正しく理解して「飲んだら車を運転しない」を一層周囲に呼びかけていきたいです。
【飲酒運転撲滅、アルコール有害摂取根絶に向けたキリンビールの取り組み】
自動販売機で発信「STOP!!飲酒運転」
キリンビバレッジ西日本統括本部(福岡市)は、はぁとスペースが展開する飲酒運転撲滅活動を支援するための自動販売機の設置に2012年から取り組み、現在福岡県内を中心に278台を設置しています。自販機には「STOP!!飲酒運転」のロゴマークを表示し、売り上げの一部をはぁとスペースの活動に活用いただくことでサポートし続けています。
SLOW DRINKのすすめ 適正飲酒について啓発
キリングループでは、アルコールの過度な摂取がもたらす問題に真摯に取り組むことは酒類メーカーとしての社会的責務と捉えています。
そんな中、提唱している一つが「SLOW DRINK(スロードリンク)」※。飲酒の時間をゆっくり楽しみ、ほどよく飲んで、スマートに心地よく過ごそうという提案。飲む「量」ではなく、流れる「時」に心を満たされる、そんな楽しみ方です。
詳しくはキリンのWebサイト『酒類メーカーとしての責任』をご覧ください。Webサイトでは、飲酒習慣のスクリーニングテストも受けることができます。
キリンビール商品に純アルコール量を表示
キリンビールでは、国内で販売する主なアルコール商品に含まれる純アルコール量の表示を5月から順次スタートしました。2023年末までの完了を目指しています。また、適正飲酒に関するWebサイトにつながるURLも表示しています。
キリンビール福岡工場が朝倉警察署と共同キャンペーン
キリンビール福岡工場(福岡県朝倉市/高橋伸夫工場長)でも適正飲酒に関する啓発活動を推進。朝倉警察署と手を携えて飲酒運転撲滅交通安全キャンペーンを展開しています。
4月21日にはイオン甘木ショッピングセンター(同市)で実施。飲酒運転の危険さをリアルに実感できる仮想現実(VR)を使用した疑似体験会やリーフレット「お酒との上手な付き合い方」を配布しました。7月18日には同工場併設のレストラン、キリンビアファーム前広場で4月同様の内容のほか、警察音楽隊によるミニコンサート、パトカーの試乗を実施。また「絶対に飲酒運転をやめてほしい」という切実な思いが込められた「飲酒運転撲滅メッセージカード」が、作成した園児たちのボイスメッセージとともに、代表で出席した園児から進呈されました。8月末日まで「キリンビアファーム」に展示しています。
キリンビール福岡工場が新成人にリーフレット提供
キリンビール福岡工場では、福岡県朝倉市、小郡市のこれからお酒が飲めるようになる2022年度の新成人に向けて、リーフレット「お酒との上手な付き合い方」約1,000部を提供しました。同リーフレットにはアルコール体質チェックパッチも付いていて、自分の体質が分かる仕掛けに。“自分の体質を知って、かしこく飲もう”と呼びかけています。