「国宝 鳥獣戯画と愛らしき日本の美術」が10月16日(日)まで福岡市美術館(福岡市中央区)で開催されています。“動物モチーフと表現の簡潔さとユーモア”をテーマに日本美術を展示する同展。日本美術の中でも名高い「国宝 鳥獣戯画(鳥獣人物戯画)」をはじめとした作品の魅力を紹介します!
愛らしい仕草や表情が見る人の心をつかむ
展示は「愛らしき鳥獣戯画」のほか、1章「祈りにはぐくまれしいのち」、2章「いのちへのまなざし」、3章「引き算の美」、4章「心を伝える」の章で構成されています。
愛らしき鳥獣戯画
甲・乙・丙・丁の4巻で構成される「国宝 鳥獣戯画」は人々の心を動かす愛らしさにあふれています。
その中でも最も有名なのが甲巻です。ウサギ、サル、カエルのメインキャラクターが水遊びや相撲などの遊びを人間さながらに繰り広げます。それぞれの愛らしい仕草や表情が見る人の心をつかみ、飽きさせません。動物たちの姿を表現する墨線の濃淡やかすれの一筆一筆に魅了されます。
乙巻は、甲巻と違い、擬人化されていない動物が登場。身近な動物から異国の動物や空想の動物も出てきて、わくわくさせてくれます。
丙巻には人間が登場し、囲碁、耳引き、闘鶏などの競技で勝負事が繰り広げられています。後半は擬人化された動物たちの競技の場面。オーバーな身ぶりの動物たちに注目してください。
丁巻には動物が登場せず、人間の営みが描かれています。個性豊かで同じ表情はありません。誇張された表情が笑いを誘い、作者の遊び心が感じられる作品です。
「国宝 鳥獣戯画」の「甲・丁巻」は前期[~9月25日(日)まで]、「乙・丙巻」は後期[2022年9月27日(火)~10月16日(日)]展示となります。
1章「祈りにはぐくまれしいのち」
明恵上人が中興した高山寺に伝わる動物彫刻の数々は動物への慈愛のまなざしと仏に対する祈りの気持ちが通じるものであったことを示しています。
人間にない特性を持った動物は聖なる存在とみなされていました。その結果、仏の尊さや力を象徴する存在として、あるいは姿の見えない神の意思を伝える使者としてあがめられました。
重要文化財の「子犬」は明恵上人がかわいがった子犬の像だと伝えられています。「馬」(重要文化財、鎌倉時代、京都・高山寺蔵)は当時生息していた日本在来馬を想起させ、神の使いまたは神に奉納する神馬として制作されたものと考えられます。
2章「いのちへのまなざし」
江戸時代に入ると動物に対する愛情が動物美術を生み出す原動力になりました。特に動物を好んで描いた絵師に18世紀の京都で活躍した円山応挙がいます。応挙の動物絵画は人気を博し、その弟子によって繰り返し描かれました。
この京都の潮流は齋藤秋圃や桑原鳳井らによって福岡へもたらされました。当時、福岡藩を治めていた黒田家にまつわる絵画には舶来動物を描いた作品もあります。
伊藤若冲の「鶏図」はデザイン化された形の面白さ、墨のにじみなどを生かした表現が光ります。ユーモアある鶏の表情も見どころです。
3章「引き算の美」
紙に墨線で描かれた「鳥獣戯画」のような白描画は、彩色画とは異なる魅力があります。「鳥獣戯画」と近い時期に制作された白描画に、仏の表情や姿勢などの違いが表現されています。余計なものをそぎ落していく引き算の美に価値が見いだされていたことがうかがえます。引き算の美は日本美術のあらゆる分野に息づいているのです。
その一つが「光琳画譜」です。体を大胆にデフォルメされた愛らしい千鳥に頰が緩みます。仏道修行のために一日一図描かれたという「日課観音図」(酒井抱一筆、江戸時代、個人蔵)も引き算の美といえる作品。江戸琳派を代表する絵師・酒井抱一の力強い筆遣いから作品にかける意気込みが感じられます。
4章「心を伝える」
擬人化された動物や人間が遊びに興じる「鳥獣戯画」の遺伝子は後の作品に受け継がれていきました。江戸時代の戯画には「鳥獣戯画」を参考にしたと思われる描写も多く見られます。少ない描線での表現方法は作者のメッセージを見る人にじかに伝える手法として注目されます。
この画法を意識したのが仙厓義梵です。見る人の心に訴えかける作品を生み出しました。「犬図」は、哀愁あるうつむき気味の表情と「きやふんきやふん」という鳴き声から愛らしさが漂います。
また、少ない描線でシンプルに形を捉えた「鳥獣略画式」にはかわいらしい動物が散りばめられています。それぞれの愛らしいフォルムが微笑ましい作品です。
簡潔な表現だからこそ奥深さが生まれるのではないでしょうか。そして、動物への親しみの情は、昔も今も変わらないということに気付かされます。
さらに、会場では愛らしきグッズに出合えます。ポストカード、マスキングテープ、ふせん、トートバッグをはじめ、「マルタイラーメン」とコラボした「鳥獣戯画麺」などラインアップが多彩です!
その他本展オリジナルグッズは公式サイトでもチェックできます。→https://artne.jp/chojugigafukuoka/goods/
国宝 鳥獣戯画と愛らしき日本の美術
会期:9月3日(土)~10月16日(日)
場所:福岡市美術館(福岡市中央区大濠公園1-6)
時間:9:30〜17:30 ※金・土曜日は20:00まで開館(入場は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日 ※ただし、月曜が祝日の場合は翌日
観覧料:一般1,800円、高大生1,200円、小中生800円
主催:福岡市美術館、高山寺、西日本新聞社、西日本新聞イベントサービス、テレQ、朝日新聞社
【チケットに関して】
■土・日曜、祝日は事前予約制(日時指定券)を導入
販売場所:ARTNEチケットオンライン、ローソンチケット(Lコード:83643)
【問い合わせ】
■チケットに関して
西日本新聞イベントサービス内「鳥獣戯画展」係(092-711-5491/平日9:30〜17:30)
■展覧会に関して
福岡市美術館(092-714-6051)
提供:西日本新聞イベントサービス