お正月休みを利用してポルトガルまで行ってきました。 ポルトガルのお正月とワイン、チーズを3回に分けてご紹介しようと思います。
ポルトガルってどんな国?
ポルトガルの国土は日本の1/4。人口は1/10くらい。 日本では1平方kmあたり350人が住んでいるのに対して、ポルトガルでは100人ほどになります。 ヨーロッパで最小のGNPを誇るこの国は現在、PIGSというEU諸国の経済的おちこぼれ4カ国に入っていますが、ポルトガルにはそれに対する焦りとか、巻き返してやろうという気迫みたいなものは感じません。 どこへ行ってもお金の動きがないというか・・・。のんびりしたお国柄。 しかし、このポルトガルを世界地図で見てください。 一番右端っこの日本に対してポルトガルはど真ん中。 そう、地図上では世界の中心です。 ポルトガルは大航海時代「大地が終わり、海が始まる場所」とも言われ、スペインと世界を二分するほどの強大な国家でした。 航海にたけ、多くの探検家を輩出。インドからスパイスを、ブラジルから黄金を持ってきて莫大な財産を築き上げた事は世界史で皆様勉強されたのではないでしょうか? またボタンや金平糖、カステラ、長崎の卓袱料理などポルトガルから日本へ伝わったものは多くあります。 ちなみに当時のポルトガルとスペインとの間でざっくり世界を半分こしたトルデシーリャス条約によると、日本の四国から東はスペイン領。西はポルトガル領・・・よってここ九州は丸々ポルトガルに覇権を握られているということになっています。 すっかり前置きが長くなりましたが 今回はそんな過去の栄光をすっかり過去のものにしている愛すべきポルトガルへ行ってまいりました。 リスボンのお正月 ポルトガルでは日本のように紅白を見てから初詣なんてことはもちろんなく、年が明ける数時間前から広場に集まって飲んで歌って花火を上げてのドンちゃん騒ぎが繰り広げられます。家の窓から半身を乗り出して爆竹を放り投げる・・・。 数年前には窓からTVを投げて通行人に当たる死亡事件も発生したとか。 年越しには葡萄や干し葡萄を12個食べるのが慣例だそうで、スーパーのフルーツ売り場はほぼ葡萄のみとなりますし、通りの隅で寝ている浮浪者にも誰かがそっと葡萄を差し入れます。 ホテルの部屋で新年を迎えた私も、にぎやかな花火を目にしました。
関係ありませんが、新年の世界各地からのTV中継は、パリもロンドンもニューヨークも花火の映像だったのに、日本は大勢の男性がふんどし一丁で神社へ向かって走り出す映像でした。 ・・・これをみたヨーロッパの人達から「日本人はふんどし一枚で新年をむかえる国だ」と思われてもなんら反論できません。 そんなこんなで大騒ぎの年越しを迎えるため、年明けの町はお酒の空き瓶と酔っ払いのみが転がる、静かで疲れきった静かな朝を迎え・・・そのまま昼までそんな感じになります。 ポルトガルのチーズ ポルトガルではたくさんチーズが作られています。 残念ながらそのほとんどは日本へ入ってきておらず、現地でないと食べられないものも多いと思います。 ほとんどのチーズが羊の無殺菌乳からできており、普通は羊と山羊を一緒に放牧するため、なんとなく山羊の乳も混ざっているんだとか・・・。 世界のチーズの多くは牛から抽出した凝乳酵素(レンネット)をで固めるのですが、ポルトガルの多くのチーズはそんな動物由来のレンネットではなく、植物性・・・朝鮮あざみの雄しべを使って乳を固めます。 私のお気に入りの一部をご紹介します ケージョ フレシュコ
真っ白なフレッシュチーズ。味わいは淡白ですが、ふわっとやさしいミルクの甘みと羊乳ならではのクリーミーなコクがあります。 スーパーでもカップ入りで売ってあり、このチーズとの最初の出会いはヨーグルトと間違えて買ってきたことでした。 MAGROと書いてある脱脂肪のものは正直美味しくないですし、ヨーグルトだと思って口に入れた場合、噴出しそうになることは間違いありません。 スーパーで買うならナチュラルを。 スーパーよりも市場で購入するのが最も美味しくこのチーズに出会う方法だと思います。 ・・・そのケージョフレシュコを作る時の副産物ホエーを加熱して作るのが リケイジャオン
癖がなく、非常にあっさりしていますが、やはり口の中で広がるミルクの風味が優しく 私はホテルの朝食でトマトと一緒にいただきました。 ケージョ セーラ ダ エストレーラ
ポルトガルで最も有名なチーズだそう。私のチーズプロフェッショナルの教本にも赤くぐるぐる丸がつけてあります(なぜつけたのかは忘れました・・・) チーズの外側を形が崩れないよう包帯で巻いてあり、表皮は金色に近い鮮やかな黄色。 熟成すると中からとろとろになりますので、スプーンですくって食べます。羊乳ならではの濃厚なミルクの風味と、アザミをつかっていることから後味に少し苦味が残るのが特徴です。 ケージョ アセイダオン
こちらも無殺菌羊乳をあざみで固めたチーズ。表皮は金色で独特の香りがあり、塩味も強く昔は壷に乳と塩をいれて暖炉で暖めながらつくったんだとか。 今は工房によって癖が強いものも、マイルドなものもありますが、共通して言えるのが後を引く濃厚な美味しさ。 ポルトガルのこれらのチーズはどれも、へんな言い方をすると田舎っぽくて素朴な味わいですが、羊乳ミルクのやわらかな甘み、クリーミーな風味は忘れることができず、訪れるたびに必ず食べたくなります。 もちろんこのほかにもたくさんの美味しいチーズがあり、 名前も知らないご当地チーズを見つけるのも旅の楽しみのひとつではないでしょうか? 年末年始をパスティスデベレンで過ごす パスティスデナタというお菓子はポルトガルでもダントツの一番人気を誇ります。 特に喜望峰を見つけ、ポルトガルへ莫大な財産をもたらしたポルトガルのスター、バスコダガマの眠るジェロニモス修道院のすぐそばにある「パスティスデベレン」というお店のパスティスデナタは最高です。
外側はたぶんパートフィローに近い春巻きの皮のような薄くて塩味の効いた生地でできていて口を切りそうなほどにパリッパリ。 中には濃厚なのに甘すぎない、卵たっぷりのカスタードクリームが入っています。
何個でも不思議と食べられるこのお菓子は元々はジェロニモス修道院で作られていたものの、19世紀初頭、修道会が廃止されてからこのお店へレシピが伝わり、今では3人しかそのレシピを知らないのだとか。 「シフト制なのかな?」正月大忙しのお店を眺めながら勤務体系が気になります。 さて、毎日大行列が出来ているパスティスデベレンですが、大行列の大抵はテイクアウト用のカウンターへ向かうもので、その行列を右に、店の左側奥へ進むと小さなサロンから大きな大食堂まで何部屋にも分かれたイートインのカフェがあります。
収容人数は軽く300人ほどでしょうか? 適当にあいている席を見つけて座ると店員さんがメニューを見せてくれますが、皆が頼むのはもちろん名物のパスティスデベレン。 温かいショコラや、甘いポートワインとの組み合わせがおすすめです。 一方、大行列のテイクアウトの方では・・・買ったついでにカフェなんかも注文して、ショーケースをテーブル代わりに立ち食いしている人も多く、彼等のお尻でショーケースの中なんて見えませんし、見えたところでどのお菓子も名前も値札もついておらず・・・素人がさらっと注文するのは至難の技ではないかと思われます。 こんな感じです↓ このおば様方のむこうがショーケース。
それに、イートインでも商売上手な店員さんがお持ち帰りのお土産パスティスデベレンをすすめてくださるので、こちらのほうでも買うことが出来ます。 年越しの大騒ぎを越え、酔っ払いが家で眠る元旦は どこのお店もしまっているものの、このパスティスデベレンは元気に営業中。 二件隣に出来ていたスターバックスをものともしない勢いで元旦も大行列でございました。 ゆるくて、時に熱く、美味しいものがたくさんある国。 ポルトガルの旅はまだまだ続きます。