ローズの恋心 ローズ・アブソリュート~緑のアロマ部屋vol.32

こんにちは。看護師・アロマセラピスト 緑です。 梅雨入りし、紫陽花が綺麗に咲いていますが、またまたローズについて。

出典:ファンファン福岡

今日はローズ・アブソリュートのご紹介と、患者さんのお話を。

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溶剤抽出法という手法で、芳香物質が抽出されます。抽出時、熱が加えられていないので、水蒸気蒸留法で抽出されるローズ・オットーよりも、 バラの花そのもののような香りがします。   溶剤石油エーテルやアルコールが残ることがあるので、人によっては肌に刺激を感じることがあります。マッサージなど肌につけるよりも、香水など香りを楽しむ使い方がおススメです。   商品名では、アブソリュートは”Abs.”と表記されることもあります。(ローズAbs、ジャスミンAbsなど)   ローズ・オットー同様に、哀しみや抑圧されたトラウマを慰め、安心感と幸福感をもたらす作用があります。ホルモンバランスを整え、月経の周期を整えたり、月経前緊張症を和らげるなど、女性特有の症状にも効果的。   また、女性だけでなく男性の不妊症にも効果があるとも言われています。さらに。ローズ・アブソリュートに多く含まれる香気成分、フェニルエチルアルコールには育毛効果があるらしいです。   お花が大好きで、自宅の庭でバラも育てている患者さんがいらっしゃいました。

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病気がわかった時には、すでに手術などができない状態で、緩和ケア病棟に転院されてきました。これまで病気をしたことがなかったご本人はもちろん、ご主人や息子さんたちもショックを受けていました。   お部屋にごあいさつに伺うと、張り詰めた空気が漂っています。   症状緩和のために、アロママッサージをさせてほしいと伝えた時、ご本人よりもご家族が乗り気でした。「おかあさん、マッサージなんてしてもらったことないでしょ?せっかくだから受けたら。」と勧めてくださいます。   マッサージ中、徐々に患者さんの表情が緩みます。「アロママッサージってこんなに気持ちよかったとねえ。はー、天使の手やね。」笑顔の患者さんを見て、娘さんの目に涙が。私の目も潤んでしまいました。

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それから訪室の度、ご主人が出迎えてくれるようになりました。「おかあさん、マッサージの人が来てくれたよ!」と言って、ベット近くに寄せていた椅子を下げられます。   そのまま側にいらしてください。とお伝えしても、いいからいいからと少し離れるのです。   「あー、眉間のシワが減ったね。気持ちいいんでしょうね。」「おかあさん、気持ちいいね?よかったね。」などとほっとされます。

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マッサージ中、患者さんが眠っている時に、おとうさんとお話をしました。「あんまり旅行なんかに連れて行ってなかった。これからって思っとったのに。」「ひとり残されたらどうしたらいいか。おかあさんが俺を看取ってくれんといかんかったのに…」   寝息をたてる患者さんの手を、そっとさすられます。   ある日。高熱で熱くなっている患者さんの手を、ご主人が握りしめています。「がんばれ、おかあさん。がんばれ!」「お母さんがいなくなったら、俺はなんもわからんよ。どうしたらいいか。」   ご主人の泣きそうな顔につられるように、患者さんも眉間にシワを寄せています。   いたたまれず、お顔のマッサージをしながら、ご主人に話しかけました。   『おとうさん、前からおかあさんと手をつないだりしてました?』「え?…いやー、買い物とかにはいつも一緒だったけど、手をつないだのは初めてかもね。ね、おかあさん。」と照れくさそうに話してくれました。患者さんのお顔が、なんだか笑ったように見えました。

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徐々に状態が変化してきた頃、息子さんが「マッサージを受けている時の母の顔はとても穏やかです。最期はマッサージを受けながら逝けたら幸せだと思う。」と言われました。   そこまで言っていただき、看護師として、アロマセラピストとして責任と感謝の気持ちがあります。でもやはり、最期はご家族の手を感じながらその時を迎えられたらと、私は思うのです。   それから少しずつ、ご家族と一緒にマッサージをするようにしました。   最期の日。ご主人が、患者さんの手をしっかりと握りしめ、名前を呼びかけました。「〇〇ちゃん、ようがんばったね。」   ご主人が、名前で呼びかけられたのを、初めて聞きました。 日に焼けたおとうさんの手と、白い白いおかあさんの手がしっかりと合わさっていました。 統計もあるのですが、配偶者との死別による悲嘆は、男性の方が強いようです。患者さんは、ご主人のことが心配でたまらず、意識がなくなってからもがんばっていたように思います。

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おかあさん、今年のバラも楽しみにされていましたよね。吐き気がなければ、ローズの精油の香りを嗅いでもらいたかったです。   おとうさん、気丈に見送ってくださいましたね。これからのおひとりでの生活を、娘さんたちと同じように私も心配しています。寂しくなったら、おかあさんと話したくなったら、おかあさんの思い出話をしにいらしてください。   ローズのハーブティー、おかあさんの分も入れますからね。 (ローズ・アブソリュートは皮膚刺激が起こる可能性があります。妊娠中の使用はおすすめできません。)

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