20歳の時に天神のミニシアターで『バートンフィンク(91)』を観てから22年間、ずっとコーエン兄弟のファンだ。映画好きには評価されても、一般受けしないという印象だったが、『ノーカントリー(07)』では作品賞を含むアカデミー賞4部門を受賞。いまや押しも押されもせぬ巨匠である。
50年代のハリウッドを舞台にスターの誘拐劇が描かれる本作『ヘイル、シーザー』は、超豪華なキャスティングが話題だ。大スターにジョージ・クルーニー、スタジオの何でも屋にジョシュ・ブローリン、お色気の若手女優にスカーレット・ヨハンソン、ミュージカルスターにチャニング・テイタム。 で、サスペンスにはあまり期待しないほうがいい。コメディ要素も多いが、センス良すぎて万人受けとはいかないだろう。衣装も造形も、音楽もセリフも、すべての演出が酒脱で、スタイリッシュで、個人的にはすごく楽しんだ。でも、なんとも人に勧めにくい、レビュアー泣かせの実に不思議な映画である。つまり一言でまとめると……映画好きにこそ観てほしい! ●執筆 元木哲三/ライター&ラジオナビゲーター
【監督】ジョエル・コーエン&イーサン・コーエン 【出演】ジョシュ・ブローリン/ジョージ・クルーニー/レイフ・ファインズほか 【配給】東宝東和 【上映館】TOHO天神、UCキャナルシティ13ほか