難聴の息子 私は“かわいそうな子”を生んだの?vol.14

夫のりひさへ 前回のあなたからの日記は、ハンカチでは追いつかないほど泣きました。出産当時を思い出したのもあるけど、嬉し泣きです。 「難聴の息子と親子3人 笑い絶えない家族に」あなたは、私たち家族に、笑顔を導いてくれる大きな存在だなと今も変わらず感じています。優しくて頼もしい夫であり、とても面白いパパですよ。

出典:ファンファン福岡

それに比べて、妻であり、母である私は…産後から大荒れで、あなたに心配をかけたり、迷惑をかけたりばかりでしたね。この6年間で、もうこんな妻は嫌だ!と逃げ出したくなったことはなかったですか?(恐る恐る聞いております。笑) 産後の私は、あなたがそばにいてくれたおかげでスタート地点に立てたのですが、なかなか進まない大渋滞にはまっていました。 生後2ヶ月の時に、大学病院ではっきりと『先天性重度難聴』とわかり、最初は補聴器をつけることになった息子。 母として、親として私は何をしたらいいのか?どう頑張ったらいいのか?考えなくてはいけないことはたくさんあるのに、考えることからは逃げたくなる毎日。 母の私が、体力もない、気持ちもついていかない、”障がい” “難聴” を受け入れるというよりは、自分自身の心と身体のバランスが、ぐちゃぐちゃだったのかもしれません。 補聴器を付け始めた頃は、何度も何度も補聴器を外して食べる!投げる!まだ産まれて3ヶ月の息子。そりゃそうだ、何もわからないまま補聴器をつけてるから仕方がなかったよね。10分おきくらいに耳をチラチラ見ては、外れてる補聴器を付け直し、また外され、付け直し。私はどっぷり疲れていました。『もう疲れた』が口癖のようになっていたように思います。 外出したときは、息子が補聴器をつけていることで、声をかけられることが多く、 『耳が聞こえないの?かわいそうに…』 『まぁ、こんなに小さい頃から補聴器をつけてかわいそうに…』 何度となく言われる、”かわいそう”という言葉が、私にはグサッ、グサッ、と痛いほど突き刺さっていました。 私たちは、息子が生まれてきてくれてとても嬉しい気持ちなのに、なんでこんなにも”かわいそう、かわいそう”って言われるのかな?生まれつき耳が聞こえないことは、そんなにかわいそうなことなのかな?なんで? こんなにもかわいそうと言われる子を私は産んだってことだよね?この子は一生の中で、何回かわいそうと言われるのかな? 私の頭の中はずっとずっとパンク状態。 声をかけられるたびに、泣きそうになることを堪えることも多かったんです。 そんな生活が続く時に、電車で出会った女性から、電話番号をその場で書いたメモを渡されました。 『私の友人が、手話を教えているの。何かあったら私に電話してね。困ったことがあればいつでもいいからね。』 その出来事をあなたに伝えると、 『なんかさ、たけがお耳(補聴器)をつけとうけん、色んな人に話しかけてもらえるね!』 私はハッとしました。 電車や街でかわいそうと言われる息子と私。声をかけてくださる方は、私に対して、 『お母さんも頑張ってるのよね!頑張ってね!』 いつもそんな優しい言葉もたくさんかけてもらえていたのに、”かわいそう”ばかりが頭に残っていた私。その事に気づかせてくれた、あなたの言葉。 そうだ!息子が耳に器械をつけていることで、1日誰とも話すことのなかった産後の私は、たくさんの人に声をかけてもらい、色んな話をしていたんだ、と気づかされました。

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電車で隣に座った方、いつも行くスーパーのレジの店員さん、近所の雑貨SHOPのお姉さん、百貨店のキッズスペースで毎週お会いしてたおばあちゃん。 名前も知らない、たくさんの方と顔見知りになり、声をかけてもらえていました。泣きそうになりながらも、ほんの少し会話をするだけで、あまり笑顔になれなかった私が、声をかけてくださる方との別れ際には、いつも笑顔で挨拶することができていました。 当時の私は、笑顔が本当に少なかったよね。笑顔の写真もあまり残ってないような気がします。育児のストレスと、これからの不安と、障がいと向き合いながらも何もできない自分への苛立ちから、あなたにあたってばかりだったように思います。 夕飯の支度をしながら、急に訳も分からず嫌になり、何もしたくなり、菜箸を突然投げたこともあったね。 『もう疲れた。ご飯なんて作りたくないっ!!』 そう言い出す私に対してあなたは、 『少し休んだら?まだご飯は後でいいよ。』 いつもいつも優しい言葉をかけてくれて、私の身体や気持ちを気遣ってくれていたあなた。今になって、今更だけど、あなたに謝らないといけないことがあります。 それは、あなたに全てをぶつけて、私の苛立ちやストレスの全てを受け止めてよ!と言わんばかりに、胸ぐらをつかみ…アザが残ってしまったこともあったこと。頻繁ではなかったとはいえ、あなたにぶつけることしかできなかった…というのは私の弱さだったと思っています。 元気に過ごせる時もあったけど、人間が変わってしまったように、自分でも全くコントロールができなくなることがあり、あなたにぶつけては泣き崩れていたあの頃。ちゃんと言葉で謝れていなかったよね。 本当にごめんなさい。 お家に帰るのが億劫になっていたんじゃないかな。 そんな中で、変わらず私たち夫婦にあったもの、それは、”会話” 私の心に寄り添って聞いてくれるあなたとの会話です。 その日の出来事、たけさんの様子、できるようになったこと、そんなたわいもない会話。私が一方的に話してる時もあったかもだけど(笑)難聴のことも、人工内耳手術をするかどうかなど、たくさんたくさん話をして、お互いの気持ちを確認したり、偏った思いを修正できたり、心が癒されたり… たくさんの会話がなければ、まだまだ暗いトンネルの中にいたかもしれないね。狂暴な私のまま(笑) なんだか、毎回この交換日記で、あなたにありがとうを伝えているような気がするけど溢れとーとよ!あなたへの感謝の気持ちが♡ありがとうね。本当に。(愛の気持ちもそろそろ溢れる予定ですが、もう少しお待ちください。笑)

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聞こえないという障がいを持って産まれてきた息子と、今1番大切にしているのも”会話” 両耳とも人工内耳手術をしてから4年。息子と言い合いが出来るほど会話ができていることを幸せに思います。器械を外しているときは、手話やジェスチャーでの会話。私たちにとっては普通のことだけど、”言葉”でなくても、表情やジェスチャーや手話での会話は、大切なコミュニケーションだということも、息子から学んだこと。 息子出産から6年経った私たち夫婦の今の会話はというと、 『ショックーー熱愛発覚したと!どう思う?ありえる?私、昨日韓国から帰ってきたばかりよ!』 と、わけのわからない話と、興味のない動画を見せられて、とても困っているあなた。そんな私のどうでもいい話にうんざりでしょうが(笑)あなたの言う、 『知らんがな。』 を聞くと、心がほっこりするんです。 これからも、時々は、お互いのイヤホンを外して、色んなことを話していこうね♪ 妻よしかより

出典:ファンファン福岡

※就寝前は、イヤホンでおのおの好きな音楽を聞きながら、お茶&焼酎タイムが、森本家の日常なのです。

※情報は2016.6.27時点のものです

出典:森本夫妻

※この記事内容は公開日時点での情報です。

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