私、乳がんかもしれなかった⑤

こんにちは、女性の幸せな生き方について取材・執筆をしている、ライターの尾越です。

小林麻央さんの乳がん報道が注目を集めていますが、今は12人に1人が乳がんになるともいわれています。 乳がんは女性なら誰でもなる可能性のある、身近な病気です。 2013年、私にも「乳がんの疑い」がありました。 これは、そんな私が経験した54日間の記録です。

出典:ファンファン福岡

■今日から始まるのか、今日で終わるのか 結果を聞くまでの10日間は、仕事もプライベートも予定をたくさん入れて、病気についてはあまり考えないように過ごした。 でも、ふとした瞬間にやっぱり頭をよぎる。 良性だった場合、悪性だった場合、先生が私にそれを伝えるどちらの場面も、交互に思い浮かんだ。 あぁ、怖いなぁ!!! 病院、行きたくないなぁ!!! 当日、電車を待つ駅のホームで、恐怖で涙を流す私。 でも、でも、行かなければ!! 待合室に座ると、祈る間もなく名前を呼ばれた。 ドアを開けた瞬間、笑顔の先生が見えた。 「検査、お疲れさまでした」 そして、 「結論から言いますと、大丈夫でしたよ。悪いものじゃありませんでした」 ほっとして、全身から力が抜けた。 パソコンに「乳腺症」と先生が打ち込む。 「念のため、今後も一年に一度は検査をしていきましょうね」 「はい、はい!!」 私は力強く答えて、深々とお辞儀をして先生にお礼を言った。 嬉しくておかしくて、何よりほっとして、病院を出てひとりで笑った。 こうして、突然降りかかった54日間の試練は、幕を閉じたのだった。

■病気はしんどい 今回、幸運なことに私は癌ではなかった。 しかしそれは、「今、乳がんでなかった」というだけの話だ。 体の他の場所、また、将来のことは、わからない。 この経験は、私に多くの「気づき」を与えてくれた。 それを言葉にすると、結局は「健康のありがたみ」という月並みな言葉になってしまうだろう。 でも、本当にそれがすべてだと思う。 もし私と同じような不安な状態になった人がいるなら、私が言えることは1点だけ。 この時ばかりは、変に強がらずに、まわりの人を頼った方がいい、ということ。 とにかく不安で心配で、極限の精神状態になることは間違いない。 そういうときは、できるだけ一人でいないこと。 誰かと一緒にいて、病気の話をしてもいいし、全然関係ない話をしてもいいから、一人で考え過ぎてしまうのを避けるのが一番だ。 私も、多くの人に支えてもらった。 家族はもちろん、検査の日を覚えてくれて心配してメールをくれた多くの友だち。 みんなに「痛かった!不安だった!」と言うだけで、かなり救われた。 「きっと大丈夫だよ」 みんなが言ってくれたこの言葉が、一番のお守りになった。 病気はしんどい。 これは、間違いない。 それはなぜか、と考えた。もちろん、痛い、だるい、動けない、と病状に対する体のつらさもあるけど、何よりそういう状況になると、自分のことだけでせいいっぱいになり、余裕がなくなってしまうからだ。 人を思いやったり、誰かのために何かをする余裕がなくなってしまう。 我先にと自分のことを神頼みしてしまうのである。 キレイゴトではなく、人が生きる喜びは、誰かに必要とされ、誰かの役に立ち、誰かに感謝されることにあると思う。 自分のためだけに生きていく生活は、切なくて哀しい。 だから、そうならないために。 食べるもの、寝ること、ストレスをためないこと。 病気になる原因はさまざまあるけれど、この毎日の一つ一つの積み重ねが、やっぱり一番大事だと思う。

それでも、今は2人に一人は癌になってしまう時代。 治療の研究もどんどん進んでいる。まずは早期に発見するために、きちんと検診を受けること。 自分は大丈夫、は、絶対に大丈夫じゃない、と声を大にして言いたい。 私もこれからは、今までいじめ続けてきた自分の体をいたわって生きていこうと思う。 と、まぁ、33歳にしてこのことに気づけたのだから、胸に穴を開けられた代償としては、じゅうぶんだろう。 もし、これを読んでくださった方の中に、いま、体を酷使してしまっている人がいたら、ほんの少しの生活改善でいいので、始めてほしいなと思う。 自分の体の声に、しっかり耳を澄まして。 できうる限り、命を大切に、どうか、みんなが健康に生きていけるように。 この54日間を終えて、私はいま、そう願っている。 ※この記事は、乳がん検査を受けたことにより不安や葛藤を自身で体験したライターの体験記であり、乳がんをなかなか身近に感じることのない、またはライターと同じような不安を経験している方への啓蒙の一助となることを目的として掲載しています。

私、乳がんかもしれなかった①

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