スタートアップ・tsumug運営のシェアオフィスは、「街中に通勤する文化」を変える!?

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、働き方やオフィスの在り方にも変化が出る中、福岡市のスタートアップ「株式会社tsumug(ツムグ)」が運営するシェアオフィス「TiNK Desk(ティンク・デスク)」が注目されています。スマホが鍵になり、無人管理が特徴というシェアオフィスが、「街中に通勤する文化」をも変えようとしているのです。今回は、フクリパ編集部が、シェアオフィス「TiNK Desk(ティンク・デスク)」を取材しました。

出典:フクリパ
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LINE一つで、「予約」も「鍵の開閉」も「決済」も完結するサービス

ティンク・デスクを利用するには、まず通信アプリ「LINE」でティンク・デスクのアカウントを「友だち」登録する。画面上で近くのオフィスを探し、空室状況や15分単位の利用時間を確認して予約。オフィスに着いたらLINE上で「鍵を開ける」をクリックして開錠し、退出時は「利用終了」をクリック。利用時間に応じた料金をLINEペイやクレジットカードで支払う仕組みだ。 スマホを使って入退室の管理をするシェアオフィスのサービスは他にもあるが、ティンク・デスクは手続きの全てをLINEで完結し、無人で運営していることに特徴がある。チャットボット(自動応答)の機能を使ってやりとりをしていくので、操作も簡単だ。

出典:フクリパ: LINEを使って全ての手続きが完結する

ティンク・デスクの拠点は、福岡市に5カ所、東京に3カ所あり、オフィスビルやマンションの一室、ホテルの客室などを利用する(12月21日現在)。室内の設備は、基本的に同じ。パーテーションで区切られた個人用のスペースに、高さを変えられる電源付きのデスクや、高精細の4K対応のディスプレーを設置。室内には防犯のための監視カメラも付く。 必要十分な設備が置かれたシンプルな空間という印象。ビルやマンションの管理者は、わずかな空きスペースをシェアオフィスとして収益化できるのがメリットだ。

通信機能のある鍵を使って、安心・安全で、便利な暮らしを作る

ティンク・デスクの核となっているのは、スマートフォンを使った鍵のシステム。物理的な「鍵」がなくても、スマホと連動させることで誰がいつ入退室したかを、記録に残すことができ、無人管理がしやすくなっている。 ツムグは、通信機能を備えた鍵そのものを開発しようと、代表取締役の牧田恵里さんが2015年に設立した会社だ。牧田さんは以前、実業家・孫泰蔵氏の元で新会社を立ち上げた経験もあり、日頃からさまざまなビジネスのアイデアを考えていた。 「それはお金があってもやりたいことなのか。金もうけだけで考えるな」。孫氏の言葉を胸に起業のアイデアを絞り込んでいったという。 通信機能を備えた鍵に行き着いたのは、別れた交際相手に合鍵を使って自分の部屋に入られたという経験がきっかけだった。「信じている鍵が、実は安全ではないという状況を変えたい」。そんな思いが湧き起こった。その体験談を周囲に話したところ、意外にも同じような経験をした人が多いことを知り、事業化に踏み切った。 牧田さん: 「通信機能のある鍵を使えば、誰がいつ鍵を開けたか記録を残したり、不在時に訪れた友人や清掃業者に一時的に鍵を開ける権限を与えたりすることもできます。」 通信機能のある鍵を自社で開発して賃貸物件向けに販売する一方で、それだけでは限界があると感じ、こうした仕組みを使った空間サービスとして、ティンク・デスクのアイデアを2019年10月に発表した。 ツムグは、サービス開始に必要な鍵のシステム、電源付きのデスク、モニター、監視カメラなどの基本セット一式を用意し、空室の所有者である不動産業者などに販売。その後は、利用料に応じて手数料を得るというビジネスモデルである。

出典:フクリパ: 高さを変えられる電源付きのデスクや、髙精細の4K対応のディスプレーを設置した「ティンク・デスク」の空間と、このサービスを運営する㈱tsumug社長の牧田恵里さん

自宅の書斎のように使う、シェアオフィスを提供。街中に通勤する文化を変える

ティンク・デスクの利用者は当初、オフィスを持たずにフリーランスで働く人などを想定していた。しかし、ティンク・デスクのあるビルに住んでいる利用者から「家に集中できる場所がないので、自宅の書斎のような感覚で使っている」という話を聞き、同じようなニーズが潜んでいるのではないかと感じたという。 その後、コロナの感染が広がり、こうしたニーズが顕在化。緊急事態宣言後は、在宅勤務をしなければならなくなった会社員が急増する一方、家族がいる自宅では仕事に集中できないといった声も多く聞かれるようになってきた。シェアオフィスの多くは街中に集中しており、住宅地のカフェなどではパソコンで仕事をする人の姿が目立つようになった。 牧田さん: 「ティンク・デスクを住宅地でも増やし、街中に通勤する文化を変えたいですね。」 ツムグは、ティンク・デスクと同様の設備が置かれたオフィス空間を特定の企業だけが使えるようにした「TiNK Office(ティンク・オフィス)」のサービスも展開する。東京の大手広告会社がティンク・オフィスを利用し、社員の自宅近くに小規模なオフィスを設けたケースもあるという。 牧田さん: 「ツムグのコーポレートビジョンは、『それぞれの心地よい場所で世界を埋め尽くす』。コロナ禍で以前からあったさまざまな課題が顕在化し、空間ビジネスの可能性は広がっていると感じています。」

スペシャリストや企業と新たな価値を「紡ぐ」。そこから事業を展開する

牧田さんは、名古屋市生まれの東京育ち。幼い頃からものづくりが好きで、大学では都市計画を学んだ。卒業後は大手IT企業に入社して米国で働いたり、実家の事業をサポートしたり、不動産業界で働いたりと、さまざまな経験を重ねてきた。 福岡市に関心を持ったのは、前職時代だったという。英国であったイベントに参加した際、福岡市のスタートアップの関係者と出会い、スタートアップを応援する空気があると感じたのがきっかけだった。 実際、福岡市は2012年に「スタートアップ都市宣言」を打ち出し、国家戦略特区を活用して国税のスタートアップ法人減税などを適用、応援していく枠組みをつくっていた。しかも、牧田さんの元上司である孫泰蔵氏は、この取り組みを後押しするメンバーの一人でもあった。 東京でツムグを設立した牧田さんだったが、立ち上げから2年後の2017年には本社を福岡市に移転した。移転の大きな理由は、自社で開発した鍵の実証実験をすることにあった。 ツムグのこのプロジェクトは、福岡市がAI・IoTなどの先端技術を活用した社会課題解決や生活の質向上に繋がる実証実験プロジェクトを全国から募集する、「実証実験フルサポート事業」に2018年3月に採択された。採択されたことで、福岡市から、実証フィールドの確保にかかる関係者との調整の支援を受け、さらに福岡市を舞台に成長するスタートアップとして情報発信してもらうことができた。 こうした動きの中で、ツムグの通信機能のある鍵を使ったプロジェクトは、空間サービスである、ティンク・デスクの2019年のサービス開始へと繋がっていった。

出典:フクリパ

現在、ツムグは約20人と業務委託契約を結んでいる。社員という形のメンバーはゼロ。場所や時間にとらわれず、心地よい働き方を模索してほしいとの思いからだ。 牧田さん: 「起業前に勤めた米国では、社員も自ら確定申告をしなければならず、手間がかかる反面、自身の税金や資産について強く意識するようになりました。当時に近い形態の方がより自主的な働き方につながるのではないかと感じ、今の形に行き着きました。」 各メンバーとは委託したい内容をすり合わせて契約を結び、それぞれに予算や権限を与えている。ルールはシンプルに二つ。「ツムグを加速させるために使うこと」と「成功も失敗も共有すること」だ。社員という形にこだわらない方が、優秀な人材に関わってもらいやすいという狙いもある。 牧田さん: 「これもチャレンジの一つ。『紡ぐ』という会社名の通り、いろいろなスペシャリストや企業と新しい価値を紡ぎ出していきたい。」 ティンク・オフィスは、決済方法や料金プラン、友だちを招待する機能の追加など、サービスの拡充を進めている。コロナ禍で、世の中の常識や社会の在り方が大きく変化する中、ツムグのシェアオフィスがどのように評価されていくのか、今後に注目だ。 文=フクリパ編集部

出典:フクリパ: ティンク・デスクの拠点は、オフィスビルやマンションの一室、ホテルの客室など様々。現在、福岡市内には5カ所の拠点があり、天神エリアにある写真中央のオフィスビルは拠点の一つで、明治通りに面する

株式会社 tsumug

■創業 2015年12月14日 ■所在地 本社:〒810-0041 福岡市中央区大名2-6-11 Fukuoka Growth Next 301 東京BASE:〒150-0002 東京都渋谷区渋谷2-14-13 岡崎ビル707・708

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