娘が小学1年生、息子が幼稚園の年中組の時のお話です。その年の冬、私たちの住む地域では例年よりも雪が降り積もったのです。大人があくせく雪かきに精を出している傍らで、子ども達はまるでこの世の楽園を満喫しているかのように、雪の上を転げまわり、雪合戦をしたり、雪の坂をそりで滑ったりといった単純な遊びに毎日夢中でした。そんな雪遊びの中で、かまくらを作ることになったのですが…。
かまくら、作っちゃおう!
「せっかくこんなに雪が積もったんだから、家の裏にかまくら作ろうよ!」と娘と息子に提案したところ、かまくら遊びをしたことがない2人は、大喜び!
かまくらの高さが1m以上になるようにスコップで雪山を作り、子ども達は両手いっぱいに雪を抱えて運んでは、雪山にくっつけていきました。
雪山がある程度出来たところで、今度は丸い形にするためにスコップで雪を削ったり、足したりの作業です。スコップで雪をかき出して穴をあけ、子ども2人が一緒に座れるくらいになったので、かまくらが崩れないように、内側から雪をたたいて固めました。多少いびつな形のかまくらの完成です。
子ども達は早速かまくらにニコニコ顔で入りました。
「遊んでて疲れたらここで休もうか」
「雪玉を作ってここに隠しておこうよ!」と子ども達がいろいろな相談をしているのを聞いて、私は思わず吹き出してしまいました。
かまくらの中に飾ったのは…
次の日、
「お母さんちょっと来て!」と言われ外に出てかまくらへ向かうと、かまくらの中に何かが貼ってあるのです。それは家族で撮った幼稚園の行事や、家族で旅行に行った時の写真でした。
5、6枚ほどあったでしょうか。家にあるアルバムから2人で持ち出したのでしょう。
「お父さんとお母さんが雪かきで疲れてかまくらで休む時に、写真見てね!」そう子ども達は言いました。
「どうもありがとうね。かまくらで休むのが楽しみだな!」子どもらしい親への思いが伝わってきて、とても嬉しかったのを覚えています。
家のリビングには家族写真が飾ってあるので、かまくらの写真もリビングに見立ててのことなのでしょう。雪の塊で写真の角を押さえるようにして張り付けられていました。気温が上がると雪がとけて、写真が濡れてしまうのは、子ども達には予想がつかないことだと思いましたが、写真はこのままにしておきました。
かまくらがとけて…
それから数日後、気温は上昇しかまくらは天井がとけて穴が開き、小さくなってしまいました。写真は剥がれ落ちて濡れてしわが寄っていました。
「あっという間にかまくら壊れちゃった!」子ども達には、とけたというよりも、壊れたように映ったのでしょう。それほどに崩れてしまっていたのです。
「太陽の熱って強いんだね」と私が言うと、「太陽がかまくらを壊したのかー。」と子ども達は驚いたように太陽を眩しげに見上げました。「今度はもうちょっと大きいかまくらを作ってみようか」そう話しながら、私たちは家に戻りました。 かまくらがとけたその日から、濡れてしわになった写真をリビングに飾りました。あれから16年、随分と劣化した写真を見るたびに、あの時のかまくらの思い出がまるで昨日のことのように鮮やかに思い出されるのです。
(ファンファン福岡公式ライター/ぱぴんぱ)