誰もが自分らしく生きていく時代をつくるために。福岡LGBT事情。

昨今、企業や社会の成長につながるダイバーシティ(人材の多様性)が推進され、性別や国籍を問わない人材活用を取り入れる企業が増えています。その一環として福岡市でもLGBTに対する制度などが導入されています。 今回は、フリーライターの山内 亜紀子さんが、九州レインボープライドの代表をつとめる“あなたののぶゑ”さんに、福岡で働くLGBTの人たちを取り巻く環境や、行政・企業の取組など九州レインボープライドを通して感じていることを伺いました。

出典:フクリパ
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「パートナーシップ宣誓制度」をはじめLGBTに対する制度や取組みが増えている福岡市

出典:フクリパ: 九州レインボープライド代表のあなたののぶゑさん

ーー福岡市では、平成30 (2018年) 4月に「パートナーシップ宣誓制度」を導入。これは、LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)など性的マイノリティのカップルをパートナーとして公的に認める制度です。 のぶゑさん: 「福岡市がどんどん変わってきていると思います。パートナーシップ宣誓制度で嬉しかったのは、福岡市で都市連携がはじまったことです。福岡市、北九州市、古賀市、熊本市は、都市連携をしているので、引っ越ししてもパートナー制度がそのまま適用されるという先駆的な動きをしてくれています。 行政だけでなく、様々な企業もLGBTへの取組みを始めています。 とある企業では、お客様に個人情報を記入してもらう際、性別確認はしません。LGBT当事者の中にはとてもセンシティブなものを持っている人もいたりするので、そのちょっとした気遣いが、結果的に接客サービスの質を上げることにつながったという声を聞きました。 このような行政も企業もきちんとLGBTへの取り組みをしていることを皆さんに伝えることが、私たち九州レインボープライドの仕事だとも思っています。」

意識として皆がLGBTのことを認めていくことの大事さ

出典:フクリパ: LGBTへの認知を広めることも九州レインボープライドが担う役割のひとつ

ーーLGBTの制度や企業の取組みなどを目にすることによって、私たちも“性の多様性”を考える機会が増えます。LGBT当事者として、のぶゑさんはこのような社会の動きをどのように感じているのでしょう? のぶゑさん: 「これからは個性豊かに働く時代です。ダイバーシティという感覚は今後企業に必須な感覚だと思っています。優秀な人はそういう企業に集まってくると思います。本来、性別は仕事をする上において関係のないものだと考えています。 LGBTのことは理解しているという人の中にも、知識がなく会話の中に差別的な言葉を使ってしまう人もいます。セクシュアリティは他人がどうこういうものではないんです。何故なら生まれた瞬間から性は多様であって、どんな性であっても良いはずです。だから、その人のセクシュアリティは「その人の当たり前」として受け止めていくことが大事だと思っています。 私は2つのポイントがあると思っています。1つは制度です。今世の中にある制度を、当事者も当たり前に使えるようにしたいです。2つ目は意識の部分です。世間的にもLGBTの存在が当たり前になることが大事だと思います。 世界的な流れとして、LGBTに対する認知は広がってきているので、この流れを止めることはできないと思います。その流れを少しでも早く推し進めていくためにも活動をしなければと思っています。」

LGBTをはじめすべての人が自分らしく生きていける社会の実現を

出典:フクリパ: ステージや様々なブースが出展し、最後に福岡市街をパレードしてきた九州レインボープライド。

ーー九州レインボープライドは、2014年に福岡大学の学生が立ち上げた学生イベントから、あなたののぶゑさんが引き継ぎ、毎年開催しているイベントです。 のぶゑさん: 「九州レインボープライドは、“LGBTを始めとするセクシュアルマイノリティを筆頭に、世の中の差別や偏見から子どもたちを守り子どもたちが前向きに、自分らしく生きていくことができる社会の実現を目指している”団体の名前であり、イベントの名前でもあります。 学生がレインボーパレードを計画していると聞いた時、福岡でレインボーパレードなんかできるわけないと思っていたんです。世の中の差別や偏見を身を持って体験してきた私たちは、これまで諦めることに慣れてしまっていて、社会が変わるはずがない私たちのことを認めるはずがないと思っていました。 ですが、彼らは2,000人を超える人を集め、福岡で単独初開催のレインボーパレードをやってのけました。その後1回限りのイベントだったこのイベントを私が引き継ぎ “九州レインボープライド”が生まれました。」

イベントを開催することで、LGBTの人が自由になれる数少ない場所をつくる

出典:フクリパ: 中止ではなく、どうすれば開催できるかを考えていたというのぶゑさん

ーー毎年続けてきた九州レインボープライドですが、新型コロナウイルスの影響を受け、九州レインボープライド2020はオンライン開催が決定。 のぶゑさん: 「今まで積み上げてきたものがあるので、毎年やってきたものを止めたくなかった思いがあります。これからコロナ禍の状況でたくさんの方が苦しくなっていくと思っていたので、続けていかないといけないとも思いました。 今年の九州レインボープライド2020は11月7日(土)と8日(日)に、オフラインのフェスタ&パレードは行わず、WEBで開催します。フェスタの会場となるホームページ、SNSなどを活用してオンラインパレード、ライブ配信で例年のフェスタと変わらずの臨場感をお伝えします。 今まで経験したことがないことをやろうとしているのでチャレンジです。中止ではなく、どうやったら実現できるかを最大限に考えて、オンライン開催のイベントを企画しました。 オンライン開催に大きな可能性も感じています。毎年パレードを福岡市博多区中洲の冷泉公園で行っていますが、イベントの二日間は多様な人たちが集まり、とてもあたたかい雰囲気の中、様々なカップルやファミリーがイベントを楽しんでいる光景がみられるのがレインボープライドです。 ですが、そんなフェスタ会場にさえ行くことができない人たちがいます。「自分のセクシュアリティが誰かにばれたりしないだろうか」という不安や恐怖を感じている人はもちろん、障がいがあって会場にくることができない人たちもオンライン開催なら参加することができると思うんです。 これまで参加できなかった人たちが参加してくれたら嬉しいなと思います。今年のオンライン開催が成功できたら、来年以降はオンラインとオフラインの同時開催を目指そうと思っています。 今現在も、この社会の中でLGBT当事者は生きています。どんな人でも「らしく」いられる社会になれるように、活動を続けていきたいと思っています。」

LGBTに限らず、誰もが自分らしく生きていく時代をつくるために

九州レインボープライドは、二日間のイベント期間中だけでも様々なカップルが手をつなぎ自由に楽しんでいる姿をみることができ、それが嬉しいとのぶゑさんは話します。少しずつ性の多様性が社会で認められていますが、知識のなさから当事者を傷つけていることも多いそうです。 のぶゑさんが前述で「制度」と「意識」の変革が大事だと話していたように、適切な知識をつけて、LGBTに限らず様々な人がその人らしく生きていけるよう、それぞれの個性と認めることがこれからの私たちに求められているのではないでしょうか。 文=山内 亜紀子

三浦暢久(あなたののぶゑ)

出典:フクリパ

30歳で自身がゲイであることを隠さず生きることを決め、カミングアウト。翌年アロマヒーリングサロンOPEN。約2,300名のカウンセリングをする中で、LGBTもそうでない人も含め、沢山の自由に生きていない人たちと向き合う。その経験からセクシュアリティに関係なく、誰もが偏見のない世の中で幸せに暮らせる社会を目指し、2015年より活動をスタート。これまでたくさんのプロジェクトを手がけてきたが2018年に各プロジェクトをまとめ、NPO法人カラフルチェンジラボを設立した。現在は福岡市や多くの企業より賛同を受け、企業・地域、学校にも講演活動や研修、アドバイザーとして幅広く活動中。

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著者情報

成長する地方都市 #福岡 のリアルな姿を届けます。福岡のまちやひと、ビジネス、経済に焦点をあて、多彩なライター陣が独自の視点で深掘り。 「フクリパ」は「FUKUOKA leap up」の略。 福岡で起こっている、現象を知り、未来を想像し、思いをめぐらせる。 飛躍するまちの姿を感じることができると思います。 https://fukuoka-leapup.jp

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