“不条理粘土アーティスト”片桐仁が「ギリ展」福岡展で発見した“驚愕の真実”とは?

6月11日(日)までイオンモール筑紫野3Fイオンモールで開催中の、片桐仁 不条理アート粘土作品展「ギリ展」。同展の関連イベントのため来福した片桐仁さんに、粘土作品づくりの魅力や本展の見どころを聞いた(編集部)。

出典:ファンファン福岡

Q.そもそも片桐さんが粘土作品づくりを始めたきっかけは? 片桐:雑誌の連載で「1ページ自由にしていいよ」と言われたのがきっかけです。僕は美大(多摩美術大学)で版画科だったんですが、絵画の延長上にある版画の分野でも、僕は木を彫ったり、銅板を削ったりと2.5次元から3次元に行くのが好きだったんです。大学卒業後もアート活動は続けたいとは思っていましたが、自分にどんな表現が向いているのかよく分からなくて。 そんな時に、ラーメンズの相方(小林賢太郎)から、以前お笑いの雑誌でテーマに合わせて物を作る大喜利みたいな企画でやった粘土作品をやれば、と言ってくれて。それが1999年。僕としては、すごくいいアイデアだと思ったんですけど、当時は特に注目もされずに(笑)。とはいえ編集長が「今回は何なの?」と楽しみにしてくれたり、笑ってくれたりしたおかげで、雑誌の休刊で何回か雑誌は変わったものの、連載は生き延び、現在も「週刊フライデー」で月1回ほどの不定期連載が続いています。

Q.コンセプトは「何かに粘土を盛る」ということですが、なぜ「何か」に粘土を「盛る」んですか? 片桐:第一に、ゼロからオブジェを作るよりも、親切だし、笑えると思うんです。実際、くだらないけど、作品にすると違う意味になるというのが面白い。もともとフィギュアが好きで、昔からスカルピーという、オーブンで焼く粘土を使っているんですが、これを使えば何でも作れるな、と思ったのも理由のひとつです。 日常生活で使ったことがあるいろんなものが、粘土で覆うことによって思いもよらないものに変わる。使い勝手が悪いけど、逆に使う意味が分かってきたり、ユニバーサルデザインのように持ちやすいようになっているものが、持ちにくくなった時に、デザインのすごさに気づいたり。それがアートの力の一つである「日常を超える」ということで、アートの存在意義なんじゃないかと思います。あまりうまく言葉にできないけど…、言葉にできないから粘土作品にしてるんでしょうね。僕自身、作ってみて初めて気づくことばかりです。 基本的には「欲しいもの」「身の回りにあるもの」に粘土を盛る、あるいはテーマを決めて粘土を盛っています。携帯カバーは2000年から作り始めたんですが、携帯ってツルっとしているものばかりで面白くないな、と思っていて。そういう(機能的な)ものって、引き算の考え方でデザインされているから。僕は足し算のほうが好きなんです。携帯シリーズに関しては、もはや携帯を買い替えるために作っているという感もありますね。今は早くiPhone7に変えなきゃと思っています。

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Q. 片桐さんにとって粘土作品づくりとは? 多忙な中、一体いつ作品作りをしているのでしょう? 片桐:ほとんどライフワークですね。ただ、制作にかける時間は本当にちょっとですよ。昔は時間に余裕もあったので、制作に時間をかけていましたが、今は仕事も忙しいし、結婚して子どももできたし。家に帰って、お風呂入ったり、ご飯食べたり、犬の世話をしたり、そういう中で自分の部屋に入った時にやること…自分だけの時間というか趣味の時間。本当に趣味ですね。だから、アイデアが浮かばなくて、作るのが面倒くさいと思ったりしても、「好きでやってる」ということを忘れちゃいけないと、最近特に思います。

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Q.ずばり「ギリ展」の見どころを教えてください。 片桐:何より、この量を一度に見るのが面白いと思います。毎月1個ずつくらいしか作ってないのに、18年目ともなるとすごい量になるんですよ。今回展示されているだけで、160作品以上あります。20代、30代、40代、結婚前、結婚後とか時系列で展示して、僕の創作の変遷が分かるようになっています。立体物なので、実際の量感とかは実物見てもらわないと分からない。思ったより大きいとか、思ったより小さいとかあるし、写真だと回り込めないので、実物ならではの良さを楽しんでほしいです。 Q.最後に、福岡のご当地粘土作品「面太古」について教えてください。 片桐:やっぱり福岡は明太子発祥の地ですから。実は10年くらい前に、仕事で「ふくや」の工場見学に行ったことがあって、その時、描いていた絵が元になっています。マヤ文明の“ヒスイの面”という死者に被せるお面に発想を得たものです。だからタイトルは“太古の面”→「面太古」。今回は製作期間が3日しかなかったんですけど、ぎりぎりまで“明太子”っぽさにこだわって、今朝の5時半にやっと出来上がりました。 一番苦労したのは色。明太子の色って、ピンクでもなくオレンジでもないんですよ。ピンク塗って、オレンジ塗って…とやってたら「これシャアのザクと同じ色だ!」と気づいて。これは僕が世界で初めて発見した真実、福岡で展覧会が出来て、「面太古」を作ったからこそ分かった事実ですね。

出典:ファンファン福岡

★「ギリ展」観賞のための一口メモ 他にも、粘土を盛ることで一見まったくの別物に変身してしまう不条理粘土アート作品の数々が所狭しと展示されています。

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タイトルを見て笑い、盛られた粘土の造形に見入り、実物の用途に驚く。その不気味ながらも、面白おかしく、同時に美しい存在感には、360度全くの死角なし。四方八方から眺めまわし、いつまでも見つづけたくなる不思議な魅力に満ちている。その質感と存在感を、ぜひ会場で間近で楽しんでいただきたいので、じっくり時間をとって観賞に出かけることをお勧めします!

出典:ファンファン福岡

※本記事は「ARTNE(アルトネ)」との提携記事です。

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