佐賀市の洋館で〝スローライフの母〟 ターシャ・テューダーのメルヘン展

1990年代の後半、バブル経済がはじけて、ITの時代が始まった頃、日本でスローライフ――日々の暮らしに手間隙をかけ、生活そのものを楽しもう。口に入るものの品質や出どころにもっと気を使おう、幸せや豊かさはそういう心の満足度で計られるべきではないか、という考え方に、多くの人が賛同し、関心を寄せ始めました。

いまでは主流になりつつあるスローライフ的考え方の母が、アメリカのバーモント州で、19世紀のアメリカの開拓時代の自給自足の生活を実践し、世界中に影響を与えたターシャ・テューダー(1915~2008)です。

出典:ファンファン福岡

挿絵画家でもあったターシャの絵は「アメリカ人の心をもっとも良く表現する絵」と言われ、現在もアメリカのクリスマスや感謝祭、ホワイトハウスのポスターなどに使われています。 そのターシャにまつわる素晴らしいコレクションを、佐賀市柳町の旧古賀銀行2階で多数、展示中です。コレクションの持ち主、かつ、展覧会を企画・運営するのは、主婦の竹下ますみさん(ターシャ・テューダー絵本の会)。 ※旧古賀銀行では「吉武大地とハートフルな仲間達」のコンサートも開催(7/2)

出典:ファンファン福岡

展示は、ターシャの着用したイブニングドレス、ターシャのスケッチ帳、ドローイング8点、水彩画3点(これらは二つとない特に貴重なもの)、絵本・イラスト本120冊(ほぼ全部が初版本)、非常に状態のいいターシャのクリスマスカード・グリーティングカード。 竹下さんとターシャのご長男・セスさん一家との親交がうかがえる手紙や写真、カード類も紹介されています。

出典:ファンファン福岡

セスさんのお嫁さん(アーティストでもある)がターシャに習って作ったふくろうの人形(くちばしがひまわりの種、羽の部分は本物の鳥の羽が使ってあって、とても珍しいもの)などもあります。そのふくろうを入れる箱も手作り…。 竹下さんはターシャ・テューダーの大ファンで、最晩年の2007年と2008年の2度、実際にターシャと会って話をしておられます。ご長男のセスさんの家で返礼に日本食を作っていたところ、90歳を過ぎてすでに寝たり起きたりだったターシャが「食事をお願い」とセスさんに連絡が入り、そのまま、セスさんは竹下さんが作ったマーボー豆腐など日本の家庭料理をお盆に載せて運んでいったとのこと。 「こちらの気持ちとしては、もうこのままずっとターシャのお世話を毎日したいぐらいでした(笑)。会いに行くと、椅子に座って、『遠くからよく来てくれたわね』と声を掛けてくれて。私がお会いした頃は本当に最晩年でしたが、暗い中で、ろうそくの灯りの下、ターシャが絵を描いている姿を鮮明に覚えています。

出典:ファンファン福岡

ただの1ファンに過ぎない私を、ターシャ最後の日々に会わせてくれたセスにはいくら感謝しても感謝しきれません。福岡と佐賀で7回、これまでターシャの展示会をしてきましたが、全部、私の手作りで商業ベースではなく行なっています。 それを意気に感じてセスは、ターシャが最後まで気に入って身に着けていた黒いカーディガンやろうそくや、亡くなったときにベッドの上に載せられていたような、ごく身の回りの愛用の品々を「展示会用に」とアメリカから送ってくれます。今回ももうすぐ、その荷物が佐賀に届くと思います」 ターシャの死後(2008年6月18日)、ミニミュージアムを作るために、世界各国からの寄付がターシャの遺族に寄せられましたが、竹下さんも佐賀を中心に募金活動を行い、相当な数の人たちの気持ちを送ることができました。その方たちにはファミリーから丁寧なお礼の手紙が届き、名前はミニミュージアムにきちんと残されているといいます。

出典:ファンファン福岡

本来であれば、東京や大阪のデパートのギャラリーなど、沢山の人を集めて展示するような、世界的にも貴重な価値ある品々を、ターシャが実践した人生をあるがままに受け入れ、生活を愛し、それを守るために手間隙を惜しまない……そういう人生のあり方を皆さんに広く知っていただくために、無料で公開している竹下さんを、どうぞ応援してあげて欲しいと思います。 「ターシャのひいお祖父さんは、アメリカから氷を積んで中国やインドなどアジア貿易で財を成した方でした。ターシャの家には、ひいお祖父さんの時代に持ち帰った朝鮮や中国の陶磁器や花瓶が残っています。日本から行くと、NYに飛んで、また途中で一泊して……と数日かかるバーモント州で生涯を送ったターシャですが、ターシャが庭で丹精していた野バラは、このひいお祖父さんの時代から代々、家の庭に咲いていたアメリカにはないアジアの原生種が混じっていて、どこかで私たちのアジアとターシャの庭は繋がっているんですね」

おりしも6月24日(土曜)から佐賀市のシアターシエマで『ターシャ・テューダー 静かな水の物語』が公開されます。こちらはターシャの最晩年の生活と深い言葉の数々をおさめた永久保存版ドキュメンタリー。 ちらしで使われている写真の花瓶もよく見ると、中国か韓国の陶磁です。 ターシャが50代から92歳まで続けた19世紀アメリカの生活が、いま、スローライフと見直され、暮らしのために手をかける、時間をかけて生活する感覚を取り戻しましょうと、私たちの未来を形作る指針となっています。 ターシャについてよく知らない方もご心配なく。竹下さんが一つ一つの展示について、背景やとっておきのエピソード含め、丁寧にご説明くださいます。 シアターシエマも旧古賀銀行から歩いて行ける距離にありますので、ぜひ展示と合わせてどうぞ。

出典:ファンファン福岡

「ターシャ・テューダーのドリーム展」 ○日時:2017年7月17日(月・祝)まで ○場所:佐賀市歴史民俗館 旧古賀銀行2階(佐賀市柳町2-9・バス「呉服元町」下車) ○入場無料 ※7月2日(日)、7月14日(日)は、13:30~14:30までギャラリートークのイベントあり。 問い合わせ:竹下ますみさんTEL:090-6897-7732

※この記事内容は公開日時点での情報です。

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