佐賀市・松原神社は<神様のデパート>

きょうは、前回の<佐賀市・松原川のかっぱたち>の続きです。

松原川になぜ、かっぱのブロンズ像や石像が点々といるのか?  それは松原神社をぐるりと取り巻くように流れる川だから。そして、松原神社には、かっぱの神様がおられる。つまり、〝佐賀におけるかっぱの本家本元〟はこちらなのです。

出典:ファンファン福岡

佐賀市の有名な神社といえば、真っ先にあがるのが佐嘉(さが)神社と、そのすぐそばにある松原神社ですが、この二つは、佐賀の歴史と切っても切れない神社…… 佐嘉神社には、幕末~明治初期の佐賀藩を建て直し、近代化のレールに乗せた鍋島藩十代藩主・直正(なおまさ)公(佐賀の幕末維新の七賢人の一人といわれます)と、その子息の十一代藩主・直大(なおひろ)公をご祭神としておまつりしてあります。 その東隣にある小ぶりな松原神社には、時代をさらにさかのぼり、鍋島藩の藩祖・直茂(なおしげ・1538~1618)公と第一代藩主・勝茂公がおまつりしてありますが、これは1772年、八代藩主の治茂(はるしげ)公が日峯社(にっぽうしゃ=日峯様をおまつりするお社)を創設し、直茂公はもはや人ではなく、「日峯大明神」になられました。日峯とは直茂公の法号(亡くなられてからの御名)です。

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土地の人たちは、この神社を親しみを込めて、「日峯さん」と呼びます。 佐嘉神社や松原神社を参拝すると、そばの机に「八社詣之証」(添付の写真)が置いてあります。八つのお社を回って、ご朱印(ごしゅいん・現代風に言えば、神社のスタンプ)をいただいてコンプリートするといいことがありますよ、というもの。 ここ十年ほど、日本全国でご朱印帳をもって、寺社めぐりをする若い女性も増えています。パワースポットが流行った頃からでしょうか?

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中を開いて見ると、 一、佐嘉神社「文化、交通、学問の神」 二、松根社(まつねしゃ):第十代藩主・直正公に仕えた古川松根をまつる。「礼道、芸道、学問の神」 三、松原神社:「開運、勝利、招福の神」 四、佐嘉荒神社(さがこうじんじゃ):「かまど、厨房の神」 五、松原恵比須社(まつばらえびすしゃ):佐賀市内に800体~1000体 あるという言われる恵比須像、その中でも中心的な役割を果たす「とんさん(殿様)恵比須」をまつる。「開運、招福、商売繁盛、くじ当選の神」。 六、松原稲荷神社:全国のお稲荷さんの大神をまつる。「家内安全、商売繁盛の神」。 そして七つめが、今回目指す「かっぱの神様」……。 七、松原河童社(まつばらかわそうしゃ):河童の木像「兵主部(ひょうすべ)」が供えられている。「水害・水難防除、災難除、子どもの守り(安産)神」。

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最後が、 八、松原梛木社(まつばらなぎのきしゃ):梛(なぎ)の木は凪(海で波の立たない状態)、和ぎに通じ、心を穏やかにしてくれる。「大国主命(おおくにぬしのみこと)」「久久能智神(くくのちのかみ)」をまつる「縁結び・家内安産・魔よけ、病気平癒、子宝成就の神」。 と説明してあります。 「8つ回って、幸せにならなかったらおかしいぐらいの功徳(くどく)だけれど、全部回る時間もないし、蒸し暑いし、こういうのは全国のいたる神社にあるよね~、七福神めぐりとか」……と思いつつ、松原神社の境内に戻ると、こりゃおどろいた!  手前のほうからずーーーっと向こうまで、大きな看板が掲げてあり、「荒神社」「恵比須社」「稲荷神社」「河童社」……はこちらです、「松根社」がこちら、と〝→(やじるし)〟が書いてある……。 神様にこういうたとえをするのは、気が引けますが、スーパーのレジがずらっーと並んでいるところに、「現金のお客様はこちら」「電子マネーのお客様はこちら」と待ち時間を減らすために、指示する看板のよう…… それにしても、この境内にそんなにいくつもお社があるの? ともう一度、「八社詣で」の地図を確めると、なんと8つのうち、佐嘉神社以外の7つが、この境内の中に固まってあることが判明。 ぐるりと見渡しても、そう大きくはない境内に? 残りの一つの佐嘉神社だって本殿まで歩いてここから5分ぐらいです。 その気になれば、ぱぱっと短時間に、8つのお社にお参りができるとは……。こういうのを〝お得〟と呼んでいいのかどうか……? でも、やっぱりこれは「佐賀のお得な八社めぐり」というべきでしょう。 前言撤回します。こういう<神様のデパート>は他では見たことない。 あたりを見回すと、平日の午後に30代・40代の一人で来ている参拝客が数人、順々にお社を回っているのに気が付きました(私も一人で取材してるんですけどね)。 松原神社、ここはパワースポットの穴場なのかもしれません。 鍋島の殿様をおまつりしてある神社にいる恵比須さんだから、「とんさん恵比須」と名づけられた、背丈3メートルの巨大な恵比須さまが、にこにこしてこちらを見ておられました。

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台座は、金の原料となる金鉱石で出来ているそうで、日本でほぼ唯一の金鉱山のある鹿児島県菱刈町から贈られた石で出来ているのだとか。うーん、なかなか奥深いし、おめでたい感じ。 神様とは違いますが、松原神社には味のある「こまいぬ」もいます。 いい具合に苔(こけ)も付いていて、だいぶ古そう。

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こまいぬもまた、「魔よけ」の効力ありで、「高麗犬(こまいぬ)」……その昔、大陸(高麗は朝鮮半島にあった王朝の名前)から渡ってきた動物で、いまでいう獅子(しし・ライオンに近い動物)だったのを、日本でいえば、平安時代の頃の当時、獅子がいなかったために、「犬」と呼んだのだろうと。 高麗人参なんていうのもありますね。 それはともかく、神社にいるこまいぬは、犬でも獅子でもない、架空の生き物、神社で手を合わせる人間をまもっている……。 神社の本殿に続く門をくぐると、軒下に白磁でできた灯篭が立っています。有田焼の佐賀らしい一品。神様になられた鍋島藩祖・直茂公に敬いの気持ちを込めて、有田焼の陶工たちが陶器で作った塔を作り、神社に奉納したとのこと。

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ちょっと歩いただけでも、歴史が詰まりに詰まった松原神社。 さて、次は、かっぱの神様にお参りすることにしましょう。 <取材・文 佐賀市シティプロモーション室 樋渡優子> 

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