みなさんは、両親に溺愛され「やりすぎだ」と感じてしまうことはありませんか? これは、私への愛情が強すぎた母による運動会の恥ずかしい記憶です。
愛情たっぷりの母
だんだんと周囲の目が気になりだした、いわゆる思春期に入った小学6年生の時の話です。季節は初秋、さあ運動会シーズンという気候の良い時期です。私自身は、シャイな性格で思春期を迎えていたので、運動会に参加したいという気持ちはさらさらなく、学校を休みたいくらいでした。
そんななか母は、昔から写真撮影が好きなこともあって運動会の為にカメラを新調。当日の撮影の練習がてら家族の食事中の様子まで写真で撮る日々。母はとにかくわが子を写真に収めたいようで、ところ構わず写真を撮りにきます。
例えば、授業参観の時クラスメイトの親が大勢いる中で、一番前に陣取り周囲のことなど関係なしに撮影を行います。クラスメイトからは
「お母さん、お前の事好きすぎだろ」と、からかわれ周りの親達からはクスクス笑いが…。母としてはわが子を思う気持ちから、そのような行動をとるのだと思いますが、私からしたら恥ずかしいだけです。
そんな気合の入った母を気にしながら、ついに運動会の日になりました。
小学校最後の運動会
運動会には玉入れや玉転がし、二人三脚などの一般的な競技のほか、最後のトリで400mリレーがあります。クラスの中で特に足の速い人が選ばれる400mリレーでしたが、私はその代表として選ばれました。私は、当時小学校内で1位2位を争う足の速さを誇り、50m走では6秒台の速さもあって、陸上競技の選抜メンバーにも選ばれていました。色々な競技を終えて、トリの400mリレーが始まろうというところ。
私は、運動会終盤であることや、カシャカシャと撮影音が聞こえるほど近距離で母に撮影にされていたことで疲労困憊の状態でした。「疲れた… 帰りたい」と思う私をよそに400mリレーの招集がかかります。同時に動く母、もう文句を言う気もなくそのままスルーします。
私は最終走者のため最終地点へ移動します。当然母は付いてきて、トラック外で常に自分にカメラを向けていました。ついにスタートの合図がなり、クラスメイト達が走り出します。私のクラスは2位で、1位との差はごくわずか。私は、練習の通りバトンを受け取り、全力で走り抜けようとしました。
100mという短い距離の中、集中していて周りは見えません。力を出し切り走り抜けるも順位は変わらず2位でゴール。残念でしたが気持ちよくゴールを切ることができ、ゴール前にいた母の撮影待ちも気にもなりませんでした。
母がゴール前で撮影待ち?
そこで私はおかしな事に気がつきます。スタート前まで私の近くでカメラを向けていた母が、ゴール前にいたことを。母を見ると笑顔で待っているものの肩で呼吸をしており、周囲の親やクラスメイトからは笑いが溢れています。
なんと、母はスタートと同時にトラック外からゴール前まで走ってきた上、ゴール前でカメラを向けて待機していたのです。走るの速すぎないか? と驚きましたが、周囲の笑い声でわれに返り急に恥ずかしくなりました。
愛情による馬鹿力なのか速すぎる母、恥ずかしすぎて頬を赤くする私。球技が苦手で運動神経は悪い方だと聞いていましたが驚きです。その後の学校でも、先生やクラスメイトなどから
「お前の親すごい足速かったな!」と話題にされほとほと疲れました。皆さんには、子どもが学校で過ごしやすいよう、子どもへの愛情はほどほどをお勧めします。
(ファンファン福岡公式ライター/中山達也)