わが家から電車で小一時間ほどの町に住んでいる夫の祖父母。どちらも90歳近い高齢の上、「コロナに感染したくない」と言っていたため、新型コロナウィルスが流行しはじめてからは会うのを控えていました。ところが昨年の年末近くなって、「やっぱりひ孫の顔が見たい」と言ってきたのです。
会わせるべきか悩んだ末、最寄り駅で短時間面会することに
コロナが流行しはじめてからというもの、曾祖父母は電話やメールで連絡をとるたびに
「あなた達のところは乳幼児もいるし、誰かがどこかで感染しているかも。会うのは流行が終わってからにしよう」と言っていました。
けれども、流行が長引くにつれ、感染への不安とひ孫に会いたい気持ちとの間で揺れはじめたようで
「食事はしないで、ちょっとだけ会うなら大丈夫かな」などと、漏らしはじめたのです。
私達も、成長した子ども達を会わせたいのはやまやまなのですが…。もしその後で誰かがコロナに感染していることが分かり、命にかかわる事態になってしまったとしたら。悔やんでも悔やみきれません。
私達夫婦も子ども2人も自覚症状はなかったのですが、無症状の感染者も多いと聞きますし、「感染していない」とは言きれず…。 ですが、同じような状況は、何か月、何年と続きそうです。この先、曾祖父母ともに元気でいられる時間は限られているかもしれません。
どうしようか相談した結果、私達が曾祖父母の最寄り駅まで出向き、駅前で短時間、面会することにしました。
元気すぎる曾祖父母。Go Toで全国を飛びまわり…
迎えた面会の日。曾祖父母は、駅に着いた私達を改札口で出迎えてくれました。会うのは約1年ぶりです。
「2人とも、大きくなったねえ!」 1歳の娘のほかは全員マスク装着。5~10分くらいの短い間でしたが、ひ孫と手をつないだり、一緒に写真を撮ったり。2人とも目を細めてとてもうれしそうでした。
「あなたたち、あちこち出かけてるんでしょう?」別れ際に聞かれたため、近場の公園やショッピングモールには出かけており、秋には1泊2日でキャンプへ行ったと話しました。
やはり感染していないかどうか不安なんだろうな、と思ったのですが…。
「こっちなんか、こないだGo Toキャンペーンを使って京都に行ってきて~」と話しだしたので、びっくり! さらに聞いていると、ほかにも飛行機や新幹線に乗って各地を旅行していたことが判明。この日も、私達に会う前は繁華街へ出かけていたとのこと。
「お元気そうだな」と感心するとともに、「感染リスクはそちらのほうが高いのでは…」と、あ然としてしまいました。 コロナの流行以来、親類や友人知人と交流する際は、迷うことの連続です。こちらが「え!?」と思った行動も、相手にとっては常識の範疇だったり。逆にこちらが考えてとった行動も、他の誰かには「え!?」と思われている可能性もあります。
感染者数や政府の方針など、状況も刻々と変化しています。それぞれの置かれた立場や健康状態、家族構成などをふまえて判断していくしかなさそうです。
曾祖父母も、まだ体が動くうちに行きたいところへ行って、食べたいものを食べることを優先したのかもしれないなと、考え直しました。 曾祖父母に会ったことを、物心がつきはじめた4歳の息子はきっと、この先も覚えていることでしょう。幸い、今のところ2人とも元気に過ごしています。短いけれど濃い時間を過ごせてよかったな、と思うようにしています。
(ファンファン福岡公式ライター/桐谷きこり)