健康志向の人なら実食済みかもしれない、ケフィアをご存じでしょうか? ケフィアとは、ロシアのカフカース地方を起源とする発酵乳飲料で、複数の乳酸菌や酵母を発酵して作られるもの。日本で一世を風靡したヨーグルトキノコに似ています。そんなケフィアをきっかけに、嫁舅の間で巻き起こった、ちょっとおかしな話をしましょう。
友人Aさんの義父は、職業柄、健康食品に詳しい健康オタク。 今、最もハマっているのがケフィアで、毎朝、コップ一杯のケフィアをゴクゴクっと飲み干すところから、義父の一日ははじまります。 義両親の家に遊びに行くと、もちろん、お茶のかわりにケフィアが出てきます。そして飲みはじめてから、どれだけ腸内環境が整い、体調が良くなったか、義父はとうとうと語り、「どうだい?ケフィアって凄いだろう。君もはじめてごらんよ」と毎回勧められるのです。 個人的な味覚の差はありますが、Aさんにとって、ケフィアの独特な酸味が邪魔をして、喉をするすると通っていくものではありません。 しかも義父が勧めるのは、自家製培養のケフィアで、発酵に最適な状態で、温度管理をするのが面倒な上、ケフィア作りに最適な有機牛乳は、普通の牛乳よりも割高です。 どれだけ健康と美容に効果的だと言われても、素直に「ケフィアはじめました!」と言えませんでした。 どんなに勧めても、一向にケフィアをはじめないAさんに、苛立っていた義父。 友人や旦那、義家族が参加するLINEのグループトークで、可愛い孫の写真を送っても、「それはそうと、そろそろケフィアをはじめたかね?」と孫よりケフィアの心配ばかりしているのです。 そして、義父は頻繁に尋ねるだけでは飽き足らず、ついにAさん宅にケフィアの種を持って現れました。 到着して早々、「ケフィアの培養に必要な有機牛乳や、ガラスの保存容器はあるかね?」と勝手に冷蔵庫や台所を漁りはじめました。
Aさんは、慌てて「有機の牛乳なんて常備してませんよ〜!ガラスの保存容器も、こんなものしかありません」と、手持ちの容器を見せました。 義父は「これじゃ駄目だ!もっと密閉する容器じゃないと、雑菌が入って、ケフィアが駄目になる!じゃあ後で買い物にいこう!」と一歩も譲りません。うんざりしながら、Aさんは頷きました。 義父の買い出しに付き合い、すっかり疲れたAさんは、夕飯を作ることを諦め、外食をしました。 脂分と塩気の多い、ファミリーレストランの食事だったせいでしょうか。その夜遅く、Aさんは喉が渇いて、目が覚めました。お茶を飲もうと台所へ向かい、寝ぼけ眼でお茶を飲んでいると、義父がヌッと現れたのです。 「喉が渇いちゃって。お父さんもお茶いりますか?」と尋ねると、義父は嬉しそうにこう言いました。
「君の胃腸は繊細で、外食に向かないようだね。ほら、もうケフィアをはじめるしかないよ!」 深夜にも関わらず、義父の熱弁は止まりません。 眠くて堪らないAさんのイライラはピークに達しましたが、ここで苛立ってみせたら、「やっぱりケフィアを飲んでいないから、体調不良で苛立ちやすいんだよ」なんて言われるかもしれません。 まさにケフィア・ハラスメント! 寝ぼけ眼をこすりながら、適当な返事をして、深夜の熱弁をなんとかやり過ごしました。 その後も、「ケフィアははじめたかね?」「最近の胃腸はどうだい?」と義父のケフィア・ハラスメントは止まりません。 最初はイライラしていたAさんですが、徐々に「また言ってる!!」とおもしろくなってきた様子。 最近では、義父から連絡がくるたびに旦那や友人達に「またケフィア勧めてきた!」と報告して、笑い話にしています。 Aさんの周囲の人々は「そんなにいいなら、ケフィアはじめてみようかな」と、義父のケフィア布教は、思いもしれぬところで、花を咲かせようとしているのでした。 (ファンファン福岡公式ライター)