辻仁成さんの著書『99才まで生きたあかんぼう』。主人公が生まれてから死ぬまでを1年ごとに描いた作品です。舞台は初めてのコメディーに仕上げ、大笑いしつつも最後に泣ける作品となっています。脚本・演出を手掛けた辻さんに話を伺いました。
発行から15年経っての舞台化なんですね。 僕の作品のなかでも、特に舞台化したいと思っていた小説です。人生とは誰にも予測できない演劇のようなものだと思っています。だからこそステージで表現したかった。実は、コメディーの舞台を手掛けるのは初めてなんです。今まではシリアスなものが多かったのですが、最近は「人生って泣いても仕方ない。笑って進むしかないな」と思うようになりました。ゲラゲラと笑える物語だけれど、最後には自分の人生とリンクして泣いてしまう。これまでの経験全てを凝縮させた作品です。 6人の俳優でつくり上げると聞きました。 はい。主人公以外の5人で、彼の人生を彩る登場人物全てを演じます。主人公も0歳から99歳までを演じなくてはならないから大変なんですよ。99年を2時間程度で表現しますから、1年に充てられる時間は1分ちょっと。役者たちが舞台上で常にドタバタと走り回ります。10歳の女の子を演じていた人が、3秒の早着替えで70歳のおばあさんに変わるんです。1年の経過を知らせるゴングを役者に叩いてもらうので、着替えて叩いて着替えて、の繰り返しですね(笑)。 福岡のファンにメッセージを。 子ども時代を過ごした福岡は、僕にとっても特別な街です。福岡のエネルギッシュな人々にはコメディーが似合う。ひたすら笑って、最後に泣いて、スッキリとした気持ちで帰ってほしい。そして、自分の人生を見つめてもらえたらうれしいです。
99才まで生きたあかんぼう
あるシェフの0歳から99歳の人生を、神の視点から描く。全ての登場人物を6人で演じ分け、人の一生がめくるめく展開される。 ■日時 3月20日(火) 開場 18:30、開演19:00 ■場所 福岡市民会館 大ホール(福岡市中央区天神5-1-23) ■料金 8000円(全席指定) ※各プレイガイドで販売中 Profile 辻仁成 東京都出身。作家、ミュージシャン、ラジオパーソナリティ、映画監督、演出家と活動は多岐にわたる。1985年、ロックバンド「ECHOES」のボーカルとしてデビュー。1997年、『海峡の光』で芥川賞を受賞。現在はパリを拠点に創作活動を続けている。