世界のトップクラスが欲しがる八女伝統本玉露

 国内でお茶のメッカと言えば、煎茶の「静岡」や抹茶の「京都」というイメージの方も多いかと思いますが、世界基準では、おそらく今後、違ってきます。

 日本を代表するワインテイスターや世界的フレンチの巨匠など、錚々たる面々が視察に訪れ、また料理に取り入れる最新のトレンドは『福岡県八女市』の”玉露” なぜ八女市なのか。それは最高峰の「八女伝統本玉露」が16年連続で農林水産大臣賞(日本一)を受賞していることはもちろん、近年、日本茶で唯一、国のGI認定(※)を受けたことも大きいかもしれません。 ※Geographical Indications(地理的表示):「八女伝統本玉露」の名称は国に保護され、八女エリアで栽培・厳選された茶葉および伝統的な製法を用いることを含め、一定の基準を満たさないと名乗れません。  これは、実は大きな一歩で、ワインの世界では当然のように語られる「テロワール(=その土地らしさ)」が、日本茶においても確立されつつある(あるいは確立された)ことを意味します!  つまり、ただ上質であるというだけでなく、料理等に合わせる味わいの新しいカラーが”公式に”誕生したということ。ひとつの転換点と言えます。  今回、世界が今まさに注目する新たなカラーの片鱗を味わってきました。そこで待っていたのは、これからの日本茶との付き合い方が根底から変わってしまいそうな素晴らしい体験!  訪ねたのは、玉露生産日本一の八女市星野村にある老舗メーカー「木屋芳友園」(きやほうゆうえん)プロデュースの茶房「星水庵」(せいすいあん)。こちらは、多くのお客様に八女茶・星野茶を学び楽しんでいただく同社の母艦的な位置づけで、店内で商品を購入できるほか、奥のスペースには八女茶を気軽に楽しめるリッチなカフェが設けられています。

出典:ファンファン福岡
出典:https://fanfunfukuoka.aumo.jp/

 入店直後、予約していたためか、まるでホテルのVIPルームに案内されるかのようなお出迎え。眼の前には極厚の一枚板を贅沢に使った和モダンなバーカウンター。

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しかも、サービスを担当されるのは、お茶の香りや味に対して並々ならぬこだわりを持った日本茶鑑定士でもある木屋社長自ら!ここから始まる90 分間のコース中、饒舌なまでに語られるお茶の深イイお話も必聴ものです。  期待に胸が膨らむ中、さっそく供されたのは、ワイングラス(なんと、リーデル社製!)に注がれたエメラルドグリーンに輝く液体。数時間前から予約客のためだけに用意されるという水出し煎茶です。

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 ひと目で”非日常”の世界に引き込まれる鮮やかな色合い。出だしから安易に茶器を用いないところに感じられる凄み。お茶の魅力がまずは視覚面から塗り替えられます。口に含むと仄かなグリーンの芳香に清々しい喉越し。全身に染み渡るようなピュアな美味しさ。。。さしずめ、星野村まで遥々遠出してきた者たちへの労いの一杯といったところでしょうか。

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 安らぎの味で心が洗われた後は、さっそく目玉となる八女伝統本玉露の「星野しずく 1年熟成」を純白の作家一点物の磁器で。

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「五煎目に至るまでの変化をお楽しみ下さい」と穏やかな口調で仰りながらも、木屋社長の瞳に宿る”自信”と”熱”はただ事ではなく、思わず生唾をゴクリ。  渇望の1煎目。聞けば、茶葉から最上の旨味を抽出するには、茶葉の量は少し多目、湯量は極少量、さほど高温ではない40~50度程度のお湯で時間をかけて煎じるとか。木屋社長のゆっくりと丁寧な所作を愛でつつ、茶菓子を頬張り、高まる鼓動を抑えます。

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 数分後、思いもよらず提供されたのは、わずか15ml 程度の微かに緑色を帯びた透明に近いお茶。。。思わず礼を失して「これだけ!?」と口から出そうになる言わば数滴分の量。急須から滴り落ちる”最後の一滴”まで愛情深く注ぐ様子は、日本酒造りで言うところの大吟醸の”雫取り”のようにも思えましたが、予想だにしない展開に唖然。

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 ところが、これが絶句するほどの旨さ。色の薄さに反して驚くべき味の濃さ、上質なお出汁のような香りの豊かさ、旨味成分のアミノ酸が絡み合ったような複雑味と程よい甘み、トロりとした粘性の高さ、飲んだ後にいつまでも続く余韻の長さ。いずれも極上と呼べるもの。このねっとりとした高貴な味わい。。。実は以前に近い経験をしたことがあります。記憶の糸をたどって行き着いたのは、フランスはボルドー・ソーテルヌ地区が誇る世界最高峰の貴腐ワイン「シャトー・ディケム」。まさに、それに比肩するレベルです。  日本茶とは、今ここまでの高みにあるのかと衝撃を受けた瞬間でした。冒頭に記した世界のトップクラスが視察に訪れるのも無理はない感動のひとときです。  以降、五煎目に向けて、煎じる温度(高↑)、時間(短↓)、湯量(増↑)が徐々に変化していき、味わいもスッキリと軽やかなものに。この劇的な変わりようは、まるでお茶が語りかけてくる一遍の物語のよう。それを紡ぎ出すのは、他の誰でもない木屋社長その人です。

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 日本茶の驚くべき真髄を堪能した後は、高ぶった気分を鎮めてくれる「焙じ茶」で締めの一杯。

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 興味を惹かれたのは、”薫る器 香貴(こうき)”と題された見た目にもインパクトの強い大振りな茶器。”日本茶の繊細な香りを最大限に楽しむ”ことを目標に、朝倉郡東峰村小石原の窯元と共同で一から作り上げたというそれは、口元に優しい高度な技術の薄造りと、フランス・ブルゴーニュの赤ワイングラスの脚を落としたような香りを閉じ込める大胆な形状。

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 絶妙な火加減で焙じられた茶葉の芳ばしい香りが、凝縮した茶器の中から一気に鼻腔を突き抜ける喜び。体中の毒素が抜けていきそうな、清らかで心地よい感覚にしばし沈黙。

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 至上の満足感で細まった目をおもむろに時計にやると、この時点でコース開始から優に2時間半を超えていることにはたと気が付きます。余りの居心地の良さとお店への申し訳なさを痛感すると同時に木屋社長のホスピタリティの高さに脱帽。  その原動力となる想いを伺えば、「個別の企業やお店としてより、八女(星野村)の玉露の本当の魅力を少しでも多くの人に伝えたい」とその語り口は飽くまで謙虚で言葉少な。しかしながら、その純粋な想いの強さこそがここまでの高みの味わいを支えているのだと妙に納得させられました。  退店後の自分は、日本茶のひとつの究極形を体験してしまったという、ある種の恍惚の面持ちだったことでしょう。まさに万感の思い。そして、ここまでのコースが、”わずか3240 円”という採算度外視な価格に設定されていることも見逃せません。木屋社長の業界全体の活性化に向けたひとつの強い覚悟が垣間見えます。

木屋芳友園

※情報は2018.4.16時点のものです

※この記事内容は公開日時点での情報です。

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