昭和の歌謡界に生きる人々の愛憎うごめく世界を描いた音楽劇「歌妖曲(かようきょく)~中川大志之丞変化(なかがわたいしのじょうへんげ)~」。タイトルにも名前が入っている中川大志さん主演の舞台が12月8日(木)~12日(月)、キャナルシティ劇場(福岡市博多区)で上演されます。シェイクスピアの「リチャード三世」をベースに、大手芸能プロダクションの鳴尾一族に生まれながらも、容姿の醜さゆえに闇の中で生きることを強いられた鳴尾定(なるお さだむ)の復讐劇。醜い風貌の定から絶世の美男子に変身してスターダムにのし上がる桜木輝彦を演じる中川さんと、鳴尾家に恨みを持つレコード会社の社長・蘭丸杏(らんまる あん)役の松井玲奈さんに、本作への思いなどを聞きました。
「1年半ほど前からのボイトレで体を強化しました」(中川さん)
―コントの脚本なども手掛ける倉持裕さんの作・演出による本作の魅力は。
中川 僕が今まで観劇した倉持さんの舞台は笑いの要素をちりばめた作品が多く、でも決して分かりやすい笑いとは言えません。演じる側もすごく難しいだろうし、観る側も考えさせられるような、僕はそういう笑いが大好きです。今回は復讐劇で、結構ディープな感情をさらけ出します。登場人物の会話や空間を演出する倉持さんと一緒にやっていると新しい発見もあり、面白いです。
松井 鳴尾定の復讐劇というのが中心にありつつ、登場人物それぞれに目的があって、いいせりふがたくさんあります。せりふの一つ一つをパズルのように積み重ねていくことで、定が最後の決断をする結末に向かい盛り上がっていく。その構造の面白さが倉持さんらしいと思います。お稽古で自分の言葉にして体を動かしていくと、脚本を読んだ段階では想定できなかった化学反応がどんどん起こっています。
―中川さんは本格的な舞台初挑戦にして主演、さらに音楽劇です。劇中で歌うことへの思いを。
中川 今回48公演あるのですが、芝居をして、しかも歌を歌うというのは初めての経験です。自分の体がどういう状態になるのか予測がつかないところもあるので、1年半ほど前からボイストレーニングを始め、体を強化してきました。倉持さんが書いた歌詞は、鳴尾定や桜木輝彦が見ている景色や心情を表現しています。しっかり役をつくり上げていくことで、楽曲への理解や表現がどんどん変わってくるのかなと思っています。
―松井さんはいかがですか。
松井 脚本には「こういう雰囲気の曲で」と書いてあって、お稽古に入る前にそれを聞きながら脚本を読んでいくと、いったいどんな舞台になるんだろうとワクワクしました。稽古場でも楽曲の振り付けや舞台の構成がだんだん形になってきて、(本番では)昭和歌謡の世界を楽しんでもらえるのではと期待しています。
「昭和40年代の衣装とヘアメークで役が完成するのでは」(松井さん)
―舞台となる昭和の歌謡界のイメージは。
中川 ステージのセットも衣装も華やかで、そんな時代の雰囲気がいいなと思うし憧れもあります。当時は一人でステージに立っている歌手の方が多くいらっしゃって、その人の人生みたいなものも楽曲に乗せているようなイメージがあるので、そういう部分も取り入れたいと考えています。
松井 私の中では、この作品に描かれていることが昭和の歌謡界のイメージにすり替わってしまって…。(スターの人たちは)大変だなと思う点と、光と影というか、オンとオフの瞬間があったのかなと脚本を読んでいるときに感じました。
―桜木輝彦が脚光を浴びる昭和40年代の衣装については。
中川 僕らの世代から見ても、おしゃれでかわいい物がたくさんあります。当時のファッションはすごく好きですね。色味も今では考えられないような、特にスターの方々は「なんでこの色とこの色を合わせたのだろう?」と思うような、自分にはない発想のビビッドな色の組み合わせで…。でもそういう衣装をなかなか着る機会がないので、(ポスターなどの)ビジュアル撮りのときはすごくテンションが上がりました。衣装からもらうエネルギーもたくさんあるので、まだ稽古中ですけど、衣装など全てがそろったとき、桜木輝彦をどういう風に完成させられるのか、楽しみにしています。
松井 私も当時のファッションの色使いはとても特徴的で印象的だなと思います。あとヘアメークも今とは違って、髪を巻いてセットしたり、アイラインはかなり太く引いたり、アイシャドウの色もはっきりと、唇の色もパキっとみたいな。ポイント全てに色が乗っているような印象です。きっとヘアメークをして衣装を着たときに初めて、きりっとしたイメージの私の役が完成するのではないかなと、今からすごく楽しみです。
―本作をどう楽しんでほしい?
中川 人間の持つ負の感情というか、人を恨んだり、ねたんだりという心の動きが、登場人物のエネルギー源になっていたりします。時代に関係なく、人はそういう負の感情に触れたくなくて、心の奥底にしまっていたりすると思うのですが、(観客は)その辺りがゾワゾワとするかもしれません。僕もそういう感情を大事にして演じたいと思っています。
※キャラクター写真は宣伝ビジュアル用です
音楽劇「歌妖曲~中川大志之丞変化~」福岡公演
日時:12月8日(木)17:30
9日(金)、11日(日)12:30、17:30
10日(土)、12日(月)12:30
場所:キャナルシティ劇場(福岡市博多区住吉1-2-1 キャナルシティ博多 ノースビル4階)
料金:S席13,500円 A席8,500円 ※いずれも税込み ※未就学児入場不可
問い合わせ:キョードー西日本
電話:0570-09-2424(平日、土曜11:00~17:00)