似顔絵師「しきっしー」ファン急増。凶暴ながら愛される謎の生態

色紙の形をした顔面から手が伸び、不敵な笑みを浮かべて街をぶらつくゆるキャラがいる。新天町商店街(福岡市中央区)などに気まぐれで出没する「しきっしー」は自らを色紙の妖精と称する似顔絵師。ゆるキャラなのに、ゆるさを感じさせない「俺様」な態度と毒舌ぶりがなぜか受け、繰り返し描いてもらうリピーターが急増している。

出典:ファンファン福岡

白目むき、歯茎を強調 悪意さえ感じる絵 仕事嫌いのしきっしーは似顔絵師の活動は月1回1時間程度。無料で描く。ただその似顔絵は一風変わっている。似顔絵は本人に似せることはもちろん、少しきれいに、年配者なら若々しく描くのが相場。しきっしーは、白目をむいたり、歯茎を強調したり、悪意さえ感じる絵を描く。描き上げた後には色紙を地面に投げつけ、「どうだ」と言わんばかりの態度を取る。

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色紙を地面にたたきつけられ「きゃー!」 なぜ人気なのか。7月のある日、新天町の時計台の下に姿を現したしきっしーの様子を探った。 家族ぐるみでファンという福岡県春日市の20代女性が興奮気味に駆け寄った。 「完全に追っ掛け。彼の生きざまが好きです」 しきっしーは、黒の筆ペンと、人によって赤、ピンク、水色などの中からもう1色を選び、計2色で描く。お絵かきボードを使って筆談を交わしながら彼女の色を決めると、踊りながら数分で描き上げた。目元、口元、輪郭などの特徴を捉え、画力はある。が、タッチは荒々しく、顔はやはり白目をむき、とても女性が喜ぶ絵とは思えない…。 最後に色紙を地面にたたきつけると、女性は「きゃー」とうれしそう。まるでフィギュアスケーターの羽生結弦さんを見つめているようなうっとりした表情で語った。 「これでも良いなら来いという態度が好き。何かすればネットですぐたたかれる時代に、なりふり構わず描く姿がかっこいい」 「俺様」な態度に完全に心を奪われた様子だった。

フォロワー3500人 月1回の出没に「追っ掛け」も そんなしきっしー、年齢や顔出しはNGだが、その正体は似顔絵スタジオ「フェイスロック」イオンモール福岡店(福岡県粕屋町)のスタッフの一人。似顔絵の全国大会や世界大会で部門別優勝を飾るなど驚きの腕前を持つ。2016年に「ゆるキャラグランプリ」にエントリーし、「似顔絵が描けるゆるキャラ」という異色の存在として注目を集めてきた。 異様な外見から子どもたちには逃げられてばかりだが、毒舌好きな高校生以上の大人を中心にファンを増やし、出没情報をツイッターで告知すると集まる「追っ掛け」もいる。フォロワー数は現在3500人以上。

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俺様キャラ? ツンデレな一面も 人気の秘密は「俺様」一辺倒ではなく、しっかり筆談で意思疎通を取りながら似顔絵を仕上げていく点か。作風を知る常連から「かわいく描いて」と言われても、あえて殴り描きする一方で、たまたま通りかかった阿利文武さん(67)、弘美さん(67)夫妻には「ラブラブだから朱色で描いた」と優しさをうかがわせた。夫妻は「握手した手から温かみを感じ、愛着が湧いてきました」。 俺様キャラのようで、不意に人情味や柔らかさをのぞかせるツンデレな一面がじわじわと熱狂的なファンを増やしている一因のようだ。今年もゆるキャラグランプリにエントリーし、上位入りを目指すしきっしー。「今後は外国のイベントにも出演したい」と捨てぜりふを残し、天神の雑踏へと消えた。 =2018/07/23付 西日本新聞夕刊=

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