明治生まれの祖母が話してくれた、ちょっと怖くて不思議な思い出を紹介する連載「祖母が語った不思議な話」シリーズ第2弾です。
小学3年生の秋も終わろうとする頃。
愛犬チロの吠える声で目が覚めた。時計を見ると深夜0時をまわっている。
縁側に出ると既に祖母が起きていて、庭を見ていた。
よく見えるようにと庭の灯を点けた瞬間、カサっと人影が逃げて行った。
祖母が連絡を入れると二人の警官が訪ねて来た。
話によるとこの近辺で空き巣狙いが連続していてその犯人だろうということだった。
「すっかり目が覚めちゃったね」
「じゃあ私が子どもの頃に飼っていた犬・シロの話をしてあげようか?」
「うん、聞きたい!」
コクリとうなずくと祖母は語り始めた。
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祖母が七歳の秋。
夜中に厠(かわや)に立つと庭に白い影がぼんやりと見えた。
音を立てないようにそろそろと戸を開け、庭に出てみるとシロは四肢を踏ん張って門の方を見ている。
「どうした? 何かおるんか?」
そう言いながら背中をなでたが、ガチガチになっていて動かない。
心配になった祖母は父親を起こし、提灯を持って戻ったがやはり一点を見つめたまま微動だにしない。
何を見ているのか気になった二人は門を開け、表に出たが何もいない。
庭に戻ってみるとシロはもう自分の小屋で横になっていた。
翌朝早く、村の巡査が見知らぬ男を連れて訪ねて来た。
その男は皆が寝静まった時刻にこの近辺を軒並み荒し回っていた泥棒だった。
巡査と男の話から、隣近所も皆やられていたが祖母の家だけ無事だったことが分かった。
「忍び込もうとしたけんど、庭いっぱいの大けな犬の顔が睨(にら)んで…金縛りのごとなって入れなんだ」
男はそう言うとぶるっと震えた。
その晩、シロはたいそうなご馳走にありついた。
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「犬って不思議な力があるのかな?」
「人より何十倍も敏感だからね。かわいがってあげると恩も忘れないし。さあ、そろそろ寝ようか」
話し終えた祖母に促され布団に入った。
翌日、チロもたいそうなご馳走にありついた。
チョコ太郎より
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