本のことは書店員さんに聞くべし。福岡の本のことなら、福岡の書店員さんに! というわけで、毎月1回、ファンファン福岡編集部が書店員さんから福岡ゆかりの本を紹介してもらうことになりました。「福岡の書店員さん、君の推薦する本を読みたい」略して「福岡キミスイ本」。初回はMARUZEN博多店の第二売り場長、徳永圭子さん選です。
福岡で本に関わる人たちの本音トーク!
「本屋がなくなったら困るじゃないか 11時間ぐびぐび会議」
JR博多シティ8階のMARUZEN博多店を訪問しました。徳永さんが用意してくれていたのは…写真の2冊。
―まずは「本屋がなくなったら困るじゃないか 11時間ぐびぐび会議(棚ブックス)」(ブックオカ編、西日本新聞社、1,800円+税)ですね。 本と本屋の今後について、出版の構造や問題点について、本作りや販売に携わる人たちが大いに語り合った一冊です。福岡市内で毎年開かれている本のイベント「ブックオカ」の2015年10月開催時に2日に渡って実施された車座トークの内容を収録しています。 ―参加者はどんな方々ですか。徳永さんの名前もありますね! ブックスキューブリック(福岡市中央区、東区)の店主・大井実さんのような個人書店、弦書房(同市中央区)や忘羊社(同)といった出版社、業界紙「文化通信」などの方々、全国展開する書店の書店員など12人。東京や広島から参加された方もいます。珍しいのは、トーハンや日販など取次店の方がいる点です。書籍流通に関しての話もしていて、これは他の本ではほとんど見られない内容だと思います。
―収録の現場はどんな雰囲気でしたか。 出版業界の中心である東京から距離がある福岡という場所や、ブックオカというイベント内の試みだったのが良かったと思うのですが、みんなリラックスしていて質問し合っていましたし、普段はあまり言わないことも「話してみようかな」といった空気がありました。日々感じている疑問や困ったこと、時には怒りの本音トークです(笑)。 ―サブタイトルの「ぐびぐび」というのは… これも福岡ならではというか、1日目のトーク後はわいわいと打ち上げ。2日目は二日酔い気味でスタートみたいな(笑) ―内容への反響は? 東京の大手出版社の方などからも「知らなかったことがあった」という声が多かったですね。私も20年書店に勤務していますが、とても勉強になりました。ドイツの出版業界の現状や人口が減っている街でアイデアを絞って書店を続けている方のエピソードも参考になります。今話題の東京荻窪の人気書店「本屋Title」の辻山(良雄)さんが書店を開く前のタイミングだったので計画表を持参されていて、参加者からアドバイスを受けるシーンもあるのですが、書店に限らず、これからお店を始めたいと思っている人にとっても面白いと思います。しかも読みやすくまとめてあります。 ―「本というより本屋が好き」という言葉が出てきますし、徳永さんの「必ずしもみんなが本好きではない」という言葉も印象的です。 この言葉については、いろんな方からメールをもらいました(笑)。本好きが前提の話だけじゃダメなのではないかと思いまして。本を読まない人、本が好きじゃなくても行きたくなる本屋さんとは? という試みは、すでに始まっていますよね。
全国の書店の新しい試み、未来への動きが分かる!
「もういちど、本屋へようこそ」田口幹人著
―次は「もういちど、本屋へようこそ」(田口幹人著、PHP研究所、1,500円+税)です。7月の新刊ですね。 岩手県盛岡市で独自の経営をしていて存在感を放ち、「書店で働いている人なら知らない人いないよね」という「さわや書店」に勤める田口幹人さんによる一冊です。全国の書店員、ジャーナリスト、司書などのインタビューや寄稿で構成されています。 ―どんな内容でしょうか。 本屋って何なのだろう? という問いかけ、書店だけに限らない本と読者をつなぐ活動、販売データの活用などについて取り上げています。本屋のこれからや存在意義について、いろんな立場から語られています。 ―全国各地のさまざまな書店が登場しますね。 SNSを活用することで、本屋さん同士の横のつながりができました。情報交換もするようになりましたし、「あの書店に行ってみよう」とお互いが訪ね合い、切磋琢磨する現状が生まれています。そんな現場の様子も伝わってきます。 ―福岡からも1人登場されていますね。ファンファン福岡の紙面にも登場していただいている… リブロ福岡天神店の書店員、福川キャサリンさんです。「ブックオカ」について取り上げています。 ―とても丁寧に教えてくださって、きょうはありがとうございました! 本と本屋のこれからについて、福岡でもおもしろい発信をしていることがこの2冊で知ることができます。ぜひ手に取ってみてくださいね。
※2018年10月時点の情報です。