幼稚園や小学校の役員決めって大変ですよね。全員が平等にやるわけではないので「誰かがやってくれるんじゃないか」と、みんなやりたがりません。そんな役員決めで、まさかの状況におちいったときのことをお話します。
幼稚園の役員をやりたくない人が多い
息子が通っていた幼稚園では、運動会などの大きなイベントのときにお手伝いをする「保護者役員」というものがありました。
基本的には立候補制で、たまにスッと決まることもあるのですが、たいてい決まるまでに時間がかかります。役員になれば時間は取られるわ、めんどくさいわで、やりたくない人の方が多いのが現実。
その日、役員決めに集まったのは約20人のお母さん。田舎なのでそれほど大きな幼稚園ではありません。円の形になって座り、みんなの顔が見えるようにして話をすすめます。
案の定、立候補者はおらず、話し合いで決める流れになりました。基本的には保護者だけで話し合って決めなくてはいけません。とはいえ、それではなかなか進まないので、幼稚園の先生が進行役のようなものを務めてくれます。
「困りましたね、さて、どうしましょうか…」沈黙が続き、幼稚園の先生も困った様子。 しばらくの沈黙に耐えきれなくなってくると、ポツポツと話し出す人が出てきます。しかしそれは立候補ではありません。
「自分はなぜ役員をできないか」について語り始めるのです。
最初に話し始めた人は、私のななめ向かいの人でした。
「本当は役員をやりたいのですが、小さい子どもがいて手がかかるのでできないんです、すみません」 なるほど。それは仕方ないですよね、的な空気がなんとなく場に流れます。続いてその隣の人が話し始めました。
「本当はやりたいのですが、仕事をしていて忙しくて…」 なるほど。それは大変ですよね。と、どうやら時計回りで一人ずつ話すルールが暗黙のうちに決まったようです。
次の人、また次の人、と自分が役員をできない理由を述べていきます。
次々と不幸な話が?!
「これ最後までみんなできない理由を言い終わったらどうなるんだろう?」とぼんやり考えながら話を聞いていたのですが、5人目の人が
「実はいま夫が仕事をしていなくて…」と強烈なパンチを繰り出してきたことにより流れが変わりました。
これまでの理由とは明らかに重さの違うカミングアウトに、私たちはくぎ付けです。
「この人にはお願いできない」そんな空気が確かに生まれたことを私は感じました。絶対的な免罪符を手に入れた5人目の次に話す方はさぞプレッシャーだったと思います。生半可な理由では吹き飛ばされてしまう、そう考えていたのではないでしょうか。
6人目の人はこう切り出しました。
「私は義理の母とうまくいっていません…」 姑との確執来たか… とゴクリと喉をならした私は「お主もやるな」という不思議な感覚になっていました。
さらにその後も
「夫と離婚の協議中で…」
「借金があって…」不幸がどんどんうなぎのぼり。
中には
「5年前の事故の話」や「小学校のときいじめられた話」など、「それいま関係ないよね」というエピソードもありましたが、もはや不幸カテゴリーに入っていればなんでも良し! 的な雰囲気からすべては受け入れられていったのです。
私の決断! まさかの結末
最初は興味本位で聞いていた私ですが、徐々にしんどくなってきました。なんせすべてが不幸話です。この不幸の見本市のような場で、私はどのような不幸話を持ち出せばいいのでしょうか。たとえあったとしてもここで話す意味は本当にあるのでしょうか。
耐えられなくなった私は、自分の番を待たずしてそっと目をとじ、そして手を上げました。
「私が役員をやらせていただきます」
こうして不幸の見本市は無事? 終了しました。 実際に役員をやってみると、なかなか楽しく良い経験になりました。次はみんなが不幸話を持ち出す前に立候補するようにしたいと思います。
(ファンファン福岡一般ライター)