究極の食育?!我が家を襲った伊勢海老パニック!

 『ブタがいた教室』という2008年に公開された映画を、観たことはありますか?小学生が1年間ブタを育てて、食べるという、実際に行われた命の授業がもとになっています。子供達は、命の尊さと食べ物の大切さを実感するのですが、実際に目の前で、屠殺(とさつ)するのは大変だったことでしょう。我が家でも、そんな食育の難しさを実感する出来事がありました。

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 皆さんは、自宅で魚を捌く時、子供にその様子を見せますか?そもそも、スーパーで3枚おろしにされた魚しか買わないというご家庭も多いですよね。我が家は、なるべく子供達に調理の様子を見せたり、食事中に「今日のオカズは、こうやって作ったんだよ」と、話して聞かせたりするのですが、まだ魚を捌いたところはもちろん、生きたままの食材を調理するところを、見せたことがありませんでした。  今年の夏、家族で海へ遊びに行った帰り道、漁村の鮮魚店に立ち寄りました。水槽には、大きな伊勢海老が泳いでいます。生き物大好きな娘は、水槽にへばりついて、伊勢海老の様子を観察しています。  「今朝、届いたばかりの伊勢海老だよ。昨日まで海にいた生きの良いやつだから、お刺身で食べるといいよ」  伊勢海老のお刺身なんて、素人ができるのでしょうか。鮮魚店のおばちゃんに、捌き方を聞いてみます。  「簡単だよ!まず包丁で頭を落とすでしょ。胴体の方を手にとって、蛇腹になった腹の左右を、調理バサミでチョキチョキと切るの。腹の皮をとって、背の殻から身を外せば出来上がりだよ。簡単簡単!」  簡単と連呼されると、素人でもやれる気がします。伊勢海老2尾を頼むと、おばちゃんは水槽に手を突っ込み、油紙に包んでくれました。クーラーボックスに、大量の氷と伊勢海老を入れて、持ち帰りました。娘は「わー!大きな海老、かってくれたの?嬉しいな」と喜んでいます。このとき、私は「伊勢海老を買ってくれた」と思っていたのですが、娘は「飼ってくれた」という意味で話していたことに、気づいていませんでした。  さて帰宅して、クーラーボックスに入れておいた伊勢海老を取り出すと、動きは緩慢ですが、もちろん生きています。娘が「大きい海老だねぇ!すごい!それどうするの?(意味:どうやって飼うの?)」と尋ねました。  「今夜の夕ごはんだよ。伊勢海老っていうの。大きいでしょ。お刺身も美味しいし、頭でお出汁をとって雑炊にしてもいいかなぁ」と答えると、サッと娘の顔色が変わりました。  「え…生きているのに食べるの?」

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 「そうだよ、いつも食べているお刺身だって、お肉だって、みんな生き物の命を貰っているんだよ」そう話すと娘は、納得できてない表情のまま頷きました。  鮮魚店のおばちゃんは、簡単簡単と話していましたが、やはりいざ生きた伊勢海老を目の前にしてみると、捌ける気がしません。旦那に包丁役を任せて、私は子供と調理風景を見守ることにしました。  まな板の上でもぞもぞと動き、ビービーと鳴く伊勢海老。水槽から油紙に包まれる時も、鳴いていましたが、今はもう断末魔のようです。旦那は、まな板の上の伊勢海老を、勢いよくダンッ!と包丁で叩き切りました。子供達と私は、「ひぃっ」と息を飲みましたが、目の前の様子に目が離せません。さすがに活きの良い伊勢海老! 頭部と尻尾に半分に分かれても、頭部はビービーと鳴き、足もビクビクと動いています。  娘はその様子を見て「あぁ!まだ生きてる!育てたい!!!」と思ったのだとか。それなのに、旦那は、頭部から海老味噌を掻きだし、残った頭の殻を、沸騰したお湯に入れてしまったから、さあ大変!

「やめてぇぇ!まだ生きてる!生きてるのにぃぃ。生き物は大事にしなくちゃ駄目なのにぃぃ!!」  そう叫んでギャン泣き。伊勢海老で大パニックです。旦那に伊勢海老を託し、大粒の涙を流す娘を抱っこしてあやします。30分もの間、泣いて泣いて涙も涸れ果てた頃、伊勢海老の刺身と、海老味噌焼き、頭の殻で出汁をとった雑炊が出来上がりました。  最初は、まだグスグスと泣きながら「食べない…可哀想だから食べられない」と言っていた娘ですが、周囲が「美味しい美味しい!」と食べているのに釣られて、一口…。「ぅわぁぁ今まで食べた海老の中で、いっとう美味しい…!」と今度は目を輝かせるのでした。  我が家は、育ててはいないものの、生き物を捌いて食べさせるだけで、この大騒ぎ。ブタを育てて食べる食育の授業は、さぞ大変だっただろうと、思いをはせるのでした。 (ファンファン福岡公式ライター)

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