福岡の書店員さんに、福岡ゆかりの本を紹介してもらうファンファン福岡の「福岡キミスイ本」シリーズ。第6回は、「福岡金文堂 姪浜南店」の古賀和義店長を訪ねました。商業施設ウエストコート姪浜(福岡市早良区)内にあり、2019年2月にリニューアルしたお店です。
人生や過去とは何? 福岡県で育った作家の本屋大賞候補作!
「ある男」平野啓一郎 著
―古賀店長、よろしくお願いします。きょうは、どんな本を紹介してくださるのでしょうか。 現在、全国の書店で力を入れている「本屋大賞」選考の時期で、2月末に2次投票が締め切られました。ノミネート10作品の中に、福岡にゆかりのある作家さんの作品があるので、それにしましょう。本屋大賞コーナーへどうぞ。
―なるほど、力を入れておられる陳列ですね。作品によって冊数に差があるような… 受賞作を予想して発注するので、差が出てしまいます。外れることもありますけれど(笑)。同じ冊数を注文するお店もあるでしょうし、当店のように個性が出ている店もありますよ。 ―手にされているのが、今回の本ですね! はい、平野啓一郎さんの「ある男」(文芸春秋・1,600円+税)です。平野さんは幼少期から高校生まで北九州市で育った方なんですよ。1998年のデビュー作「日蝕」(新潮社)で芥川賞を受賞、今回はこの作品で本屋大賞にノミネートされました。
―平野さんは、西日本新聞の「提論」に寄稿されています! 職場には平野作品ファンの男性先輩がいて、そういえば「ある男」も読んだと聞きました。どんな内容なのでしょうか。 簡単に言うと…「夫が亡くなって手続きをしていたら、戸籍の名前の人とは全くの別人だったことが分かる。そこで本当の夫の姿を探っていく」という話です。 ―ふむふむ。妻が調べを進めるのですか? 妻の友人である弁護士・城戸という男性が、依頼されて調査しながら真相を追っていきます。サスペンス的な要素があるのですが、それよりも人生とは何か、人間の過去や現在についてなどを考えさせられる作品です。男性にも女性にもおすすめです。
―同じように「亡くなった妻が無戸籍だったことが分かった」という事件が、昨年末に北九州市で起こりましたよね。平野さんが新聞でコメントされていたのを思い出しました! そうです、そうです。事件が起こったときに「この作品とそっくりだ」とネットなどで話題になったと聞いています。平野さんが育った北九州市で同様の事件があったというのも奇遇です。 平野さんは2016年に出版された前作「マチネの終わりに」(毎日新聞出版・1,700円+税)がロングセラーで、この作品は特に女性に人気が高かったのですが、映画化も決まって、ますます注目されそうです。「マチネの終わりに」は、今も売れている作品なんですよ。当店の女性社員も、今読んでいると言っています。
―こちらは、大人の恋愛小説ですよね。 切なくて美しい物語です。ヒロインが40代で、魅力的に描かれているというのも支持されている理由だと思います。映画は福山雅治さん主演で話題になっています。 ―「ある男」は本屋大賞(4月発表)が決まる前に、「マチネの終わりに」は映画化前に読んでみたいと思います! きょうはありがとうございました。
※情報は2019.3.14時点のものです