24時間ずっと子どもが側にいる生活から一転、子どもが幼稚園に通うようになって、すっかり負担が減りました。気分は、育児の第1フェーズ完了!と言いたいところですが、逆に大変になったところもあります。それはお弁当作り。忙しい朝に、SNS映えするキャラ弁なんて、そんな手間のかかるものは作れません。こんな私と違って、すごいお弁当を作っているママがいたのです。
ある時、3歳の息子が幼稚園から帰宅して早々「A君のお弁当に、仮面ライダーがいた! すごく格好良かった! 僕にも作って!」と、私のスカートを掴んで、まとわりついてきました。 普段なら「キャラ弁なんて作らないよ!」と一蹴するところですが、日頃、幼稚園での出来事を報告したことのない、マイペースな息子が、はじめてお友達のことを教えてくれたので、うれしくなってしまったのです。 「仮面ライダーがいたって、どういうことー? 仮面ライダーのお弁当箱だったの?」と尋ねてみました。すると息子は、違う違うと首を振り、「ご飯の上に仮面ライダーがいたんだよー! 僕も同じお弁当がいい!」と、ねだるのです。 ご飯の上に仮面ライダー? 仮面ライダーの形にくりぬいた海苔があるのでしょうか。それとも、仮面ライダー柄のソーセージが入っていたのでしょうか? 仮面ライダーのキャラ弁をどうやって作るのか興味がわき、A君のお母さんに連絡してみることにしました。 「息子から、『A君のお弁当がすごく格好良かったから、作って』とおねだりされちゃった。仮面ライダーのキャラ弁ってどうやって作るのかな? 良かったら作り方を教えてもらえないかな?」 するとすぐにA君のお母さんから返信がありました。 「格好いいって言ってもらえてうれしい! オブラートアートって知っているかな? わが家の仮面ライダー弁当は、オブラートの上に食用色素と筆で絵を描いて、それをスライスチーズの上に載せているの。ネットで『オブラートアート』で検索すれば、作り方が詳しく載っているから、見てみてね」 すぐに検索してみると、ありました! せっかくなので、作り方をご紹介しますね。 《材料》 ■オブラート ■クリアファイル ■食用色素(黒、その他の色) ■細い筆 ■霧吹き ■ラップ ■イラスト 1.クリアファイルの中に、イラストを挟み、上からラップを敷いたら、霧吹きでラップを湿らせる。その上にオブラートがシワにならないように貼り付けて下準備完了。 2.オブラートの下には、イラストが透けて見えるので、筆に黒い食用色素で主線を描いて、イラストを転写します。 3.主線が乾いたら、他の色を塗っていきます。 4.半日ほど乾かせば、オブラートアート完成。
インスタグラムをのぞいてみれば、オブラートアートを、お弁当のご飯やパン、チーズトーストやクッキーに貼り付けているものがたくさんありました。カフェラテに浮かべて、ラテアートを楽しんでいる人も。こんなものが流行っているなんて、ちっとも知りませんでした。
作り方が分かって、「A君のママは、こんなに手間のかかるものを作っていたんだ!」と驚き、尊敬しました。驚いたのには訳があります。なにがすごいって、このお弁当を作ってるママは、4人の子持ちで、しかも来月出産予定の妊婦さんだったからです。 臨月の時なんて、大きなおなかを持て余して、少しでも横になっていたいと思うはず。子ども達を、幼稚園や小学校に送り出した後は、昼寝しかしたくありません!(私だけでしょうか) 妊婦さんが、どうしてこんなに手間のかかることを…なぜ?!と思い、尋ねてみると、またまた意外な答えが返ってきました。 「実は、A君が今、情緒不安定になっているんだ。3年前、Aの妹を出産した時に、1週間入院をしたんだけど、その時におうちにママがいなくて悲しかったことを覚えているのよ。だから、自分が幼稚園にいる間に、ママが入院していなくなっちゃうかもとおびえているみたいで、毎朝泣いて幼稚園に行きたがらないんだ。だから少しでも幼稚園を楽しんでほしくて、オブラートアート弁当にチャレンジしてみたの。お昼ごはんのお弁当に、大好きな仮面ライダーがいたら、元気がでるんじゃないかなって」 そこにあったのは、まぎれもなく母の愛。 幼稚園のお昼ごはんの時間、A君がお弁当箱をあけると、周囲の子ども達がのぞき込んで「わぁ! すごい! 格好いい!」と感心したり、うらやましがったりすることでしょう。A君の恥ずかしそうな、でも誇らしい気持ちでいっぱいになっている様子が目に浮かびます。 正直なところ、これまでキャラ弁に対しては「SNSで自慢したいだけでしょ? ママの自己満足じゃない? 食べるものにイラストなんて描いて、不衛生じゃないのかなぁ」なんて思っていましたが、そんな自分が恥ずかしくなりました。 優しいママの愛情と手間暇がこめられていた仮面ライダー弁当。まだチャレンジできていないのですが、私も息子のために、オブラートアート弁当を作ってみたいと思います。 (ファンファン福岡一般ライター)