福岡の書店員さんに、福岡ゆかりの本を紹介してもらうファンファン福岡の「福岡キミスイ本」シリーズ。第9回は、福岡市博多区のJR博多シティにある「MARUZEN 博多店」に伺い、和書売場担当の篠崎里絵さんに博多祇園山笠に関する2冊を紹介してもらいました。※取材は2019年6月
山笠が描かれ、中洲に生きる無戸籍の子どもが主人公
「真夜中の子供」 辻仁成 著
―こんにちは。きょう紹介していただけるのは、どんな本でしょうか。 6月に入ると、博多の街は(博多祇園)山笠の雰囲気が盛り上がってきます。7月になるとJR博多駅前には飾り山笠が立てられ、祭りも本番を迎えます。そこで辻仁成さんの小説「真夜中の子供」(河出書房新社、1,600円+税)を選びました。中洲に住む無戸籍の子どもが主人公で、とにかく山笠に対する情熱、熱量がすごいんです。2018年6月に出版された作品です。 ―私も読みました! 博多弁がばんばん出てきて、スピード感ある展開でした。 そうなんです。無戸籍や児童相談所など、今、社会問題になっている話題も盛り込まれています。親に愛されず、学校にも行けず、でも親がいるので施設に入っているわけでもなく、母親も問題はあるけれど責められるほど悪い人間でもない…。実際にありそうな設定なんです。
―確かに、現実にどこかで起こっていそうです。 けれど救われるのは、主人公の蓮司が中洲の人々に愛されて生きている点。蓮司は、その場所しか知らないのですが、中洲や山笠に“自分の全てがある”と誇りを持っているのです。リアリティーがあるというのか、場所が身近なこともあって、私、中洲を通るときに、いつもこの小説が頭をよぎってしまうんですよ。 辻作品というと、これまで恋愛小説の印象が強かったのですが、この本ではガラリとイメージが変わりますよね。フランスで子育てをされていることもあり、子どもの問題を描きたかったとも聞きました。
―そういえば辻さんは昨年、山笠行事の集団山見せで中洲流(ながれ)の台上がりを経験されましたよね。「真夜中の子供」は映画化も進んでいて、今年の山笠ではロケをするという話も聞こえてきています。 昨年は、山笠の時期に当店にもお見えになって、サインをしてくださいました。店でお見かけしたご本人は、優しそうな雰囲気の方でした。
―あれ? 手に持たれている本と棚にある本では帯が違っていますね。 映画化が決まって帯が新しくなりました。この季節になって、新しく手に取られる方もおられます。そういえば、昨日も男性が2冊購入されましたよ。山笠の関係の方でしょうか。
山笠の各流の紹介や雑学などが詰まった一冊
「博多祇園山笠」 博多祇園山笠振興会編
―どうもそんな気がしますね(笑)。さて、もう1冊の本もご紹介ください。 これも山笠関連で「博多祇園山笠」(博多祇園山笠振興会 500円+税)です。今年は令和元年の記念号として、元号が変わるタイミングの5月1日から発売されています。各流の紹介や雑学などが詰まっていて、「真夜中の子供」についてもコラムで紹介されているんですよ。
―これは山笠の行事を知るには、必携ですよね。私も令和元年号、すでにゲットしました! 山笠関連本は「郷土の本」コーナーに通年置いていますが、やはりこの時期になるとよく売れます。歴史や行事スケジュール、行事の意味を知っていると、祭りをさらに楽しめると思います。ぜひ手にされてはいかがでしょうか。
―今年は「真夜中の子供」を読み直して、山笠見学に出掛けたい思います! きょうはありがとうございました。
※情報は2019.6.19時点のものです