福岡の街角に出没「自転車移動喫茶」 最小限のコストでかなえた夢

 福岡市中央区平尾の自転車専門店「Sputnik(スプートニク)」の一角で、ドリップコーヒーを提供する秋利康介さん。

屋台のように自転車を土台にしたコーヒースタンドで、福岡市内のいたるところに出向く移動喫茶「Hand anything(ハンドエニシング)」を運営しています。もの珍しそうにのぞいていく通行人や気になって声を掛けるお客さんも多いそうです。この自転車移動喫茶をオープンさせたのは2018年11月のこと。どういう流れで店を出すことになったのでしょうか。

出典:ファンファン福岡

 島根県生まれの秋利さんは、名古屋の大学で建築とデザインを学び、大学卒業後はものづくりを志して関西の家具メーカーや工業用金属製品の製造会社に勤めていました。

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「コーヒーと生き方」を教えてくれた先輩

 関西に住んでいたころに、自家焙煎(ばいせん)のコーヒーショップ「もなか珈琲」(大阪市)に出合ったことがターニングポイントになったと語ります。「世の中に、こんなにおいしいコーヒーがあるのか と初めての感動を覚えましたね。店主とは家族ぐるみで仲良くなり、次第に店主の人柄と生き方にも憧れを抱くようになりました。彼も下積みを経て28歳の時に独立開業したそうで、コーヒーのおいしさと、働くことへの価値観、この二つを同時に教わったような感覚です」

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 秋利さんも独立開業しようと決心したものの、飲食業界についての知識も経験もなく、開業時に多額のローンを抱えることに不安を抱いたそうです。  前職がメーカー勤務とあって、原価計算は得意。コーヒーを生業にするために、いくら必要で1日何杯売らなければいけないかを計算し、もんもんと立ち往生する日々だったと言います。初めての飲食業で、ましてや知らない土地で人脈もゼロからのスタート。「こんな状況で、最初から大きなばくちは打てないなと。僕は石橋をたたいて渡るタイプなので、まずは一番小さい規模から始めることにしました」。そこで、実店舗を持たない移動販売を選んだのです。

真っ赤な自転車にひとめぼれ

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 移動販売を行う場合、車だと初期費用がかかり、駐車代やガソリン代、保険料などのコストがかかります。また駐車できる場所が限られるので、提供スポットも限られてきます。他に策はないかと考えていたときに、秋利さんは初期投資も維持費も低価格で済む自転車に目をつけました。  「自転車を使った仮設の喫茶店なら、街中を回れて、軒先に止めさせてもらったり、店舗に乗り入れできたり、営業場所が幅広くて画期的だなと。本当は前輪が二つ付いた3輪タイプの自転車が欲しかったんですけど、海外製だと40万円くらいの高額になってしまいます。またしても頭を抱えていたら、自転車屋さんで偶然この愛車に出合ったんです」

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 たまたまセールで赤色の自転車が30万円から20万円に値引きされているのを発見。 「もう、これは運命だと思って、購入しました」と秋利さん。この縁もあり、今では平日午前中に「Sputnik」で出張喫茶を開くのがお決まりになりました。  

移動販売で市場調査や人脈づくりも

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 福岡市内の各エリアの雰囲気や、住人の特徴などを知らずに移住してきた秋利さんだったからこそ、拠点を1カ所に絞らずに、あちこち回れる自転車の移動喫茶が正解だったそうです。  「いろんな街を行き来して、地域の人と触れ合うことが市場調査になり、今後路面にお店を出すための判断材料になっています。また、この自転車だと目立つので、いろんな人から『何のお店ですか?』と声を掛けられますし、自然と人との繋がりを育めています」

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出張イベントを希望するショップ関係者も声を掛けやすいようで、秋利さんに「うちの店でも開けませんか」とたびたびオファーがあるそうです。

DIYで開業資金を節約

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 「開業資金には、前職のボーナスと、失業保険(再就職手当)を充てました。この自転車が約20万円で、コーヒーやドリンクの仕入れの費用と器具など。そうそう、自転車を自分でコーヒースタンド仕様にしたので、その材料費もかかりましたし、開業後の運転資金も含めて、ざっと100万円くらいでしょうか」  

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 それまでに培った設計・デザインの技術を生かして、自転車のカスタムをしたので、その分が大きな節約となりました。必要経費も店舗サイズも最小限にして、フットワーク軽くあちこち回れる移動喫茶になっています。  

空き時間を利用してダブルワーク

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 秋利さんは、移動喫茶の空き時間を使ってデザイン業務も行っています。移動販売の特性上、雨天時は営業できず、また客足が緩やかな日もあるので、空いた時間を使ってイラスト作成などをしているのです。「移動販売だと、実店舗と違って空き時間に仕込みができないので、場所を問わないデザインの仕事を持ち込みながら時間を有効利用しています。今はショップカードや名刺、ロゴマークを制作していて、物販店からも設計デザインの依頼をいただいています」  今後は商売道具の自転車を増やすかもしれないし、はたまた実店舗を持つかもしれない。「どうするかは、しばらくこのスタイルを続けながら考えていこうと思っています」と語る秋利さん。「可能性を自ら限定したくない。偶然なのか必然なのか、運命の出会いとその時の流れに身を任せながら、自分らしくいられる道を探っていきたいです」

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Hand anything 秋利康介

1989年生まれ、島根県松江市出身。大学で建築・デザインを学んだ後、関西の木製パネル家具のメーカーに就職。工業用金属製品の製造販売での仕事を経て、2018年に妻の地元・福岡へ移住した。同年11月に自転車移動喫茶「Hand anything」をオープン。趣味はカメラ。

※情報は2019.6.24時点のものです

出典:mymo

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※この記事内容は公開日時点での情報です。

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