歌手のMISIAさん=長崎県出身=が初めて手掛けた絵本「ハートのレオナ」が発売された。舞台はアフリカ。現地を何度も訪れ、子どもたちの教育支援を10年以上続けてきた中で、肌で感じた命のメッセージを詰め込んだ。MISIAさんは「リアルなアフリカを知って、もっと身近に感じられるきっかけになったらいいな」と話している。
母校の西南学院大(福岡市早良区)で今月26日、後輩たちに披露した。絵本は、おでこにハートの模様があるライオンの女の子レオナが、仲良しのペリカンのムワリと広大なアフリカ大陸を旅するストーリー。旅先はMISIAさんが実際に訪れた国々で、絵は画家で作家の大宮エリーさんが担当した。
「貧困の本当の状況を知りたい」と、MISIAさんがアフリカの地を初めて踏んだのは2007年春。ケニアだった。ライフルを持った護衛に付き添われ、降り続く雨で洪水のようになった未舗装の道を抜け、スラムの奥にある小学校を訪ねた。「何が大変で、何が必要なのか」を真っ先に教えてもらえると思っていたら、子どもたちから掛けられた言葉は違った。 「雨、大丈夫だった?」 「貧困は、こんな素晴らしい子どもたちの笑顔を壊してしまう。どんなものなのか、もっと学ばないと」。アーティストや著名人らが音楽とアートの力でより良い社会の実現を目指す一般財団法人「mudef(ミューデフ)」(東京)を10年に設立し、学校運営費の寄付や、進学のための奨学金支援を続けてきた。
昨年、小学校に足を運び、当時の子どもたちと再会した。高校生や大学生になり夢に向かって歩む子も、会社勤めを始めている子もいた。「教育だけは人に盗まれることがなかった。人生の財産になった」と話す姿に「教育こそ希望と実感した」というMISIAさん。絵本には、現地で心に響いた言葉をちりばめた。 多彩な伝統音楽や文化、マラリアなどの感染症や密猟の問題、ルイボスティーの茶葉は南アフリカ産で「実は世界中の人を支えていること」…。多面的にアフリカを見つめる物語には「世界を知ることは大切なものに気づき、守っていくことにきっとつながる」という思いが込められている。 税込み1,944円。売り上げの一部は「mudef」を通して、アフリカと日本の子どもへの支援に充てられる。