九州大学六本松キャンパス跡地に完成した「六本松421」(福岡市中央区)など、再開発でにぎわう地下鉄六本松駅周辺。新しい道、新しい建物が次々に生まれる中、昭和のレトロな雰囲気を色濃く残すコーヒー専門の喫茶店が「三和珈琲館 六本松店」です。六本松交差点を通ったことがある人なら「あ、あの緑の看板の店ね」とすぐに思い浮かぶ、六本松の顔のような存在です。
「(昭和40年代前半に)脱サラして東京のコーヒー専門店で修業し、ここで1974年にオープンしました」と店主の井手一博さん。「その当時は、まだ日本人に本物のコーヒーのおいしさがあまり知られていない頃でした」と振り返ります。産地偽装や質の悪い豆の売買が横行していたことに胸を痛め、「本当においしいコーヒーを福岡で届けたい、伝えたい」を信念に店を始めたと言います。
「カウンターの回転椅子は飛騨高山で作った注文家具で、50年近く使っていても丈夫です。味が出ていいでしょう」とカウンター越しに井手さんが話すように、ブロンズ色をした木製家具は、コーヒーの香りまでも染み込んでいそうな雰囲気で店の歴史を物語っています。
井手さんの横でスタッフが黙々と「生豆を選別する」作業をしている様子は、店のおなじみの光景です。「人の目で豆を選別するから、うちのコーヒーはおいしいんですよ」と井手さん。虫に食われていたり、腐っていたり、発酵が進んでいて品質が落ちていたりする豆を1粒たりとも残さないのが信条。そうすることで雑味がなく、何杯も飲めるコーヒーがいれられるといいます。さらに、「ミルクや砂糖を入れたくなるのは、コーヒーに雑味が出ているから」とテーブルにはミルクも砂糖も常備せず、頼まれるまでは提供しないスタイル。コーヒーそのものの味に自信があるからです。
井手さんおすすめの「エンペラーズブレンド」(1杯税込み1,130円)をいれてもらいました。専用の冷凍庫に保存していた焙煎済み豆をネルドリップでゆっくり抽出します。むくむく膨らむ豆から、ふくよかな香りが広がります。井手さんが「琥珀(こはく)色」と表現するように、明るく澄んだ色合いが印象的。最初は香ばしさ、次に深み、余韻には甘味も感じる豊かな味わいでした。
九州大学教養学部のお膝元として多くの卒業生を見送ってきた井手さん。今もコーヒー豆の取り寄せを続ける、店のファンの卒業生も多いそうです。「子どもを連れて遊びに来てくれる子もいてね。うれしいよね」と顔がほころびます。
店ではコーヒーのいれ方を教える「コーヒー教室」を開いています(詳細はホームページで確認を)。井手さんのコーヒー談義を楽しみながら、雑味のないクリアなおいしさを味わってみてはいかがでしょう。
<店のこだわり> ●手作業で豆の選別 ●砂糖やミルクはテーブルに置かない ●ネルでじっくりいれる ●いれ方講座を随時開催
三和珈琲館 六本松店
住所:福岡市中央区六本松4-1-14 電話:092-711-8735 営業:10:00~21:30(L.O.21:00) 不定休
施設名:三和珈琲館 六本松店(サンワコーヒーカン)
住所:福岡県福岡市中央区六本松4-1-14
※情報は2019.8.1時点のものです