福岡の秋の恒例イベント「アジアフォーカス・福岡国際映画祭2019」がスタートしました。今年は9月13日~19日(木)、キャナルシティ博多(福岡市博多区)の「ユナイテッド・シネマ キャナルシティ13」で開催され、アジア17カ国・地域の27作品が上映されます。 その中で公式招待作品は15作。同映画祭のディレクターを務める梁木靖弘さんは「今回は、闇を描いた作品が多い」と話します。果たして“闇”とは??
「今回は、いわゆる感動作品がありません。世界の情勢がそうなのでしょう、ヒューマニズムで映画を撮れる時代ではなくなったのかもしれません」と梁木さんは今年の傾向を話します。 「人間や社会の闇を描き、クセが強い作品が集まりました。印象として<凄(すご)みのある作品>や<苦味の効いた作品>が多いのではないでしょうか」と、いくつかピックアップして作品を紹介してくれました。
<凄みがある作品はこれ!> ■ナイト・ゴッド(2018年/カザフスタン/110分) 「悪夢の世界をここまでアートとして映像化しているという凄み。美しいけれど悪い夢を見ているような暴力や不条理、カオスの世界です。闇の支配者“夜の神”の正体とは?」 ■アルファ 殺しの権利(2018年/フィリピン/94分) 「フィリピンの巨匠、メンドーサ監督により完成度では今回ナンバー1といえそうな作品。フィリピン・マニラの麻薬戦争、現地警察の腐敗の奥にある闇を描いています。ドキュメンタリーのようなすさまじい衝撃作です」
■轢(ひ)き殺された羊(2018年/中国/87分) 「広大なチベットの風土を舞台に、過去なの未来なのか、現実なのか幻想なのか分からない世界が圧倒的な画力で描かれます。まるで『マッドマックス』のような、イマジネーションをすごく刺激する作品です」 <苦味が効いた作品はこれ!> ■恋の街、テヘラン(2019年/イラン、イギリス、オランダ/102分) 「夢に破れた3人の中年男女の物語が紡がれていて、シニカルでアイロニカル(皮肉っぽい)、冷めた視線が特徴です。イランの現在が伝わってくる作品です」
■マンタレイ(2018年/タイ、フランス、中国/105分) 「監督は福岡に長く滞在していて、世界的にブレークしました。社会性とアートをどちらも同じくらいの重さで扱う力量を持っている注目すべき人物です。ミャンマー国境近くの海と森が舞台。見た後に苦味が残る作品」 ■自由行(2018年/台湾、香港、シンガポール、マレーシア) 「中国当局と問題を起こし、中国を離れて香港で暮らす映画作家が、中国にいる家族と台湾で落ち合って再会するという話。監督自身の境遇が投影されていて、現在の中国、香港、台湾の関係性が見えてきます」
■夜明けを待ちながら(2018年/インドネシア/82分) 「ジャカルタのきらびかやなナイトライフが、キレのいいサウンドとともに描かれます。数人の主人公がバトンタッチしてモザイクのように絡んでいきます。人間に対する冷めた視線を感じる表現が特徴的。音楽も楽しめる作品です」
このほか、福岡で撮影された「福岡」(2019年/韓国/86分)など、気になるラインアップです。今週、ぜひ足を運んでみてください。 アジアフォーカス・福岡国際映画祭2019 期間:~9月19日(木) 場所:ユナイテッド・シネマ キャナルシティ13(福岡市博多区住吉1-2-22) ※上映スケジュール、料金については公式サイトで確認を ※当日券はLINE Payで購入できます