福岡市などで朗読教室を主宰するフリーアナウンサーの塚本博通(ひろみち)さん(71)=同市南区=が、朗読のユニークな普及活動に6年前から取り組んでいる。同市・天神で年に1回開く受講生たちとの発表会は、朗読に音楽の生演奏やイメージ映像を組み合わせ、オリジナルのSF小説も読む「朗読ライブ」だ。今年は29日に開催、「エンターテインメントとして楽しんで」と呼び掛けている。
塚本さんは1970年に開局した民放FM「エフエム福岡」に第1期アナウンサーとして入社。85年に退社してフリーに転身し、テレビやラジオに出演するほか、通販番組のプロデューサーやCMのナレーションなど幅広く活動する。 朗読教室は2009年、福岡市南区で開いた。当初は後進の育成が目的だったが、アナウンサー志望ではない一般の受講希望者が続出。その後、教室を増やし計4拠点(福岡市と北九州市)を構え、20~70代の男女32人を指導する。 「声が小さいのがコンプレックス。仕事にも影響するので改善したい」(会社員、39歳女性)、「小説や詩の世界を身近に感じたくなった」(会社社長、31歳男性)、「仕事漬けの日常に刺激がほしくて」(理学療法士、29歳男性)、「遠くにいる生徒も呼び止められるようになりたい」(中高教員、33歳女性)-。
受講の動機で目立つのは自身の能力を高め、より充実した生き方を目指す“自分磨き”だ。そんな彼らの発表の場が13年に始まった朗読ライブ。塚本さんは「声を出して文章を読む音読の中で、必ず聴き手がいるのが朗読。表現にエンタメを追求すれば、聴き手の満足度は高まり、朗読=地味というイメージも払拭(ふっしょく)できる」と意気込む。
また、塚本さんは会員制交流サイト(SNS)が急速に普及する時代も見据え、「肉声で言葉を伝えることの大切さを見つめ直す機会になれば」と話す。 ライブは29日午後2時から、天神のアクロス福岡で。第1部は福岡3教室の受講生15人が、江戸時代の下町を舞台にした時代劇小説をリレーで朗読。作品のイメージに合わせた音楽と映像で盛り上げる。第2部は塚本さんのステージ。欧州の古い街で妖精たちが繰り広げる幻想的な物語を描いた自作の短編小説を、北九州市のバイオリニスト栗田佳奈さん(34)の生演奏やイメージ画像で演出された空間で読み上げる。 入場料1,000円。アクロス福岡=092(725)9111。