私は幼少時から、超ド級の怖がりです。緊張がMAXになると、失神することもあります。例えば、高校の職場体験初日や、夫の両親への挨拶で卒倒…。そんな私が、今まで一番怖かったのは出産です。経験がなく、予測できないことがとにかく恐ろしい! 妊娠中、逆子になったわが子。帝王切開なら予定日も事前に決まるし、麻酔で陣痛も無い。そう思った私は、帝王切開で出産することを狙うのですが…。
穏やかな妊婦生活が一転!
妊娠初期は穏やかに過ぎていきました。赤ちゃんに必要な栄養の勉強をしたり、ウォーキングをしたり、至って真面目な妊婦でした。
つわりが安定した私は、インターネットで出産体験談を読むことに。母も祖母も乗り越えてきた出産。私も大丈夫だろうと楽観的に考えていました。しかし…
「この世のものとは思えない痛さ」
「突然の破水でパニックになりました」
「会陰切開する前に股が裂けました」衝撃の内容に、心がボキっと折れました。絶望した私は、恐怖で食欲もなくなり、急に元気のない妊婦になりました。
逆子になった娘
「あらぁ、逆さだね」
予定日の3カ月前、娘が逆子になりました。
「大丈夫ですよ、ほとんどの場合は出産までに自然に戻ります」と先生。
帰り道、私は帝王切開で出産する為には、どうすればいいかを真剣に考え始めます。実はもっと早い段階で「無痛分娩にしたい」と考えていました。しかし「陣痛に耐えてこそ母親」という考えもあり、決断が出来なかったのです。帝王切開は、怖がりの私にぴったりかもしれない、という思いが浮かびました。
出産予定日まで1カ月。娘は相変わらず逆子のままで、ついに帝王切開の手術日も決定。夫は有休を申請し、出産に備えてワクワクです。
無事に産まれればそれで良い、と開き直った私は、逆子体操を完全に放棄しました。
お腹に感じる違和感
予定日まで1週間、もう帝王切開で決まりだろうと、安心して眠りにつこうとしたその時です。
「うぅっ!?」思わず声がでてしまう程の、とてつもなく激しい胎動を感じました。娘が心配になりましたが、不思議と違和感や痛みはありません。私はハッとしました。10カ月一緒にいたから分かります、これは娘が方向転換しようとしているのだと。
「右を下にして寝てくださいね。赤ちゃん回りやすくなりますから」と、先生の言葉が頭をかすめます。
「させるかぁぁぁ!」私は体を左向きにして、必死に語り掛けました。
「お母ちゃんはアナタをこのまま産みたい。だから止まってほしい!」と。
思わぬ誤算
翌日は最後の検診日。
「はい、戻りませんでしたね。1週間後にオペします」と先生。
私は非常に残念… といった表情で、診察室を後にしました。しかし心の中ではガッツポーズ! こうして見事私は、娘と協力し帝王切開の権利を獲得したのでした。
そして手術は無事に終了し、元気な赤ちゃんが産まれました。
親族はガラス越しに初孫に集まり
「小さ~い! 動いてる~!」とキャイキャイ。一方私は、初めての開腹手術が怖すぎて、涙と鼻水でぐしょぐしょでした。楽しそうな親族を横目に、ひとりストレッチャーで運ばれていきます。
麻酔の効果が薄れ、足の感覚が戻ってきた頃、猛烈な痛みが私を襲いました。寝返りはおろか身動き一つ出来ません。皆さんは知っていますか? そう、帝王切開は産んだ後が激痛なのです。
出産はやっぱり痛かった!
翌日、元気いっぱいの看護師さんに
「さぁ、トイレまで歩きましょう!」と言われた時には、
「嘘だろ… 腹を切ったばかりだぜ!?」と心の中でキレてしまう程でした。そして呻きながら、私は看護師さんに見守られ、用を足したのでした。
今回は幸い、失神せずに済みましたが、“楽な出産などない”と痛感させられた出来事でした。
(ファンファン福岡公式ライター / きさらぎ)