テレビドラマや映画で俳優、ナレーターとして活躍するイッセー尾形さん。「一人芝居の第一人者」ともいわれ、さまざまな人物の日常を活写する舞台を国内外で展開してきました。2012年以降は文豪の名作をモチーフにした新たな作品も手がけています。そんなイッセーさんの10年ぶりの福岡公演が決定。2023年1月14日(土)と15日(日)、西鉄ホール(福岡市中央区)で一人芝居「生きとったと!」を上演します。10月12日に福岡市内で開かれた記者会見で、今作の見どころや福岡公演への思いなどを聞きました。
「一人芝居の世界はまだまだ広がる」
イッセーさんの一人芝居は、サラリーマンや学生、高齢女性などの日常の一こまを切り取り、10~15分に仕立てます。1回の公演で演じるのは約7作品=人物。舞台上で次に演じる人物のメイクや衣装替えをするのも、イッセーさんのスタイルです。
「一つのネタ(作品)が終わった瞬間に舞台が暗転するんですよ。これでおしまい、って。そのときにお客さんが笑ってくれると、ほっと胸をなで下ろします。“笑うことは認識の一つ”で、このネタは笑うに値すると認識してくれたんだと」。
1980年代に確立されたイッセーさんの一人芝居。2012年には「それまで一緒にやってきた演出家たちが一人芝居の限界を感じて(一人芝居づくりを)やめた」ため、事務所所属からフリーに。イッセーさんは「(そのときは)大きな分かれ目だったんですが、僕はもっと追求してみたかった。それから10年やって、まだまだ一人芝居の世界というのは広がると思っています」と意欲的です。
この10年は、文豪の名作に着想を得た一人芝居も手がけてきました。「以前は現代の人物を写し取っていたのですが、現代の人が見えづらくなっていたんです。そんな折、たまたま“夏目漱石を題材にして一人芝居を”という機会をいただき、小説を読み返してみると、脇の人物がすごく魅力的に書かれていて。ひょっとしてこれは自分が長年やってきた人々のことかもしれないと思い、脇の人物を主人公にして別のドラマを作ったところ、だんだん作ることに対する活力が湧いてきたんです。そして太宰治、サルトルなどの作品も扱ううちに現代の人物も見えてきて、現代をダイレクトに扱うようになりました」と話します。
上演作はこれから選定「候補を幾つかピックアップすると…」
福岡公演では、現代の人物を描いた近作をラインアップ。上演作品はまだ決めていないそうですが、候補作を幾つか紹介してもらいました。
■「雪子の冒険」
「近年の話題作です。自分で言うなって感じですが(笑)。雪子ちゃんはお面をかぶって、小学校の前で立体紙芝居をするおじさんなんです。この雪子ちゃんがあちこちに行くというのを展開しているんですけど、これはほとんど即興です」
■「ストーカー」
「ストーカーの嫌疑をかけられた男子高校生の話です。生活指導の先生に目をつけられ、疑い続けられ、逃れるすべはない。高校生はすごく不利な状況なんですが…」
■「スモーキングルーム」
「薄暗くて妙に閉鎖されている空間に、閉鎖されている男がやって来るんです。それは大企業に勤め、昭和を生き抜いてきた男。この昭和と閉鎖という対立した概念を込めた作品です」
「人生はね、70歳過ぎてもいいんじゃないかな」
イッセーさんは福岡市出身の70歳。「福岡は面白い所ですね。街は活気があるし、3人集まるとうるさいほどしゃべる(笑)。ところが劇場で出番を待っていると、シーンと静かなんです。誰もしゃべらない。コロナ過前からそうです。「この人たち、笑ったりするの」と毎回不安になるんですけど、舞台に出ると歓声や笑い声に包まれる。あの静寂は謎ですね。ただ、あの静寂に触れたいです」と福岡公演を楽しみにしている様子。
10年ぶりの福岡公演への思いをこう話します。
「フリーになる前の12、3年はイムズホールでやっていたんです。ホームグラウンドともいえるイムズホールがなくなって、今回10年ぶりの福岡公演は、イムズの向かいの西鉄ホールです。ずっと長年見てくださった方々、あるいは新しい人たちに会いたいと思います。再会と出会い、まだまだ広がります。人生はね、70歳過ぎてもいいんじゃないかなと思うとります」
イッセー尾形 福岡公演「生きとったと!」
日時:2023年1月14日(土)15:00
15日(日)15:00
場所:西鉄ホール(福岡市中央区天神2-11-3 ソラリアステージ6階)
料金:全席指定5,500円 ※税込み
問い合わせ:イッセー尾形事務所
Eメール:info@issey-ogata-yesis.com