39歳の時に13歳年上の52歳の主人と再婚。夫婦だけで穏やかに余生を過ごすことになるだろうと思いきや、主人が思いのほか強く子どもを望んでいることが判明。コウノトリが自然に運んできてくれる年齢ではないので、急いで産婦人科の門を叩いたのですが…
1回のセックスですぐに妊娠すると信じていた夫
主人は女性の妊娠について呆れるほど無知で、一回のセックスですぐに妊娠すると信じている程でした。実際、主人と前妻との間には結婚して間もなく子どもが授かったそうなのですが、それはふたりが20代半ばと若かったからの話。
私たちの年齢で自然に子どもを授かることは難しいね、と結婚前に話してあったのですが、主人は内心(まぁ、子どもなんてすぐにできると思うけどね)と思っていたそうです。
結婚生活が1カ月、2カ月を過ぎても妊娠しない私に、
「病院で検査を受けてみたら」と主人が提案してきました。
主人がそれほどまでに子どもを望んでいたことに驚いたのですが、
「あなたも一緒に来て検査を受けるならいいよ」と答えました。不妊の原因は女性にあると決めつけている主人に多少腹が立ちましたが、私も可能であれば子どもを授かりたいと思うようになっていたのです。
羽が生えているかのように飛んでいくお金
私たちが選択した地域でいちばん人気の産婦人科は、子どもを望む夫婦で常に予約がいっぱいで、初診が数カ月待ちになるのが当たり前でした。
長く待った検査の結果、夫婦ともに異常は見つかりませんでしたが、加齢による卵子の劣化と、精子の数や運動率の低下などが原因で妊娠しにくくなっていたようです。
「タイミングや人工受精という方法もありますが、おふたりの年齢を考慮すると体外受精と顕微授精を並行してやっていく方法をお勧めします」という医師のアドバイスに従い、早速不妊治療が開始されました。
私たちの通っていた病院では、ホルモン剤や注射などの薬剤や検査費用とは別に、採卵に10~20万円前後、体外受精や顕微授精をした胚の移植に5~50万円前後、余った凍結胚の保存に3万~60万前後かかります(卵子や胚の数による)。
当時、収入の少ない若い夫婦には助成金の制度などもありましたが、年齢を重ねていてそれなりに収入のあった私たち夫婦には受給資格がありません。
また、妊娠しやすくなると言われるサプリメントや、プラセンタ注射にも手を出すようになりました。
プラセンタ注射は皮膚科で打つと1回5,000円もしたのですが、美容クリニックで打つと半額以下で受けられました。とはいえほぼ毎週打っていたので、それだけでも相当な金額です。
結局、不妊治療を開始してから1年2カ月で妊娠することができたのですが、かかった総額は250万円ほどになっていました。
狂ってきた金銭感覚
初めて病院の会計窓口で高額な請求を受けたときは(ひぇ~! 大卒の初任給!)(○○のバッグが買える!)などと思いながらドキドキして会計を済ませました。
しかし慣れとは恐いもので、毎回会計で
「16万円です」とか、
「20万円です」などと言われるうちに金銭感覚が麻痺してしまい、1万円の重みが変わってきました。
以前の私であればセーターに5,000円もかければ上等だったのですが、2~3万円のものを買っても高いと感じなくなっていたのです。
不妊治療中の精神的なストレスを買い物で発散していた部分もあり、洋服だけで月に10万円ほど使っていたかもしれません。今考えると本当に恐ろしい感覚です。
特に妊娠に失敗したことが判明した日などは、(こんなに頑張っているのに…)と、やるせない気持ちで涙を流しながらデパートに寄って散財していました。今では800円のスマホケースを買うのに1週間かけて悩む倹約家に戻りましたが、そのまま浪費していたらわが家の家計は間違いなく崩壊していたことでしょう。
双子育児は目が回る忙しさで、年齢的にも体力がないので毎日ヘトヘト。それでも子ども達の寝顔を見ていると、ささやかな幸せを感じ、あのとき不妊治療をがんばってよかったなと思うのです。
(ファンファン福岡公式ライター/あそうママ)