当時2歳の双子男児は、イヤイヤ期真っ只中。「走っちゃだめ!」という制止の声もむなしく、2人で部屋の中でよく追いかけっこをしていました。マンションの5階だったので、ご近所迷惑になっていないか気になっていたのですが、想像もしなかった形でクレームを受けることに…
コロナ禍で遊び場を失った子ども達
当時は新型コロナウイルスが流行り始めたばかり。恐ろしい未知のウイルスに誰しもが厳重な警戒をしていた頃でした。
緊急事態宣言と共に公園の遊具は閉鎖され、買い物以外の外出はほとんどしなくなりました。夫は体力と時間を持て余した子ども達を見かね、室内用のジャングルジム、ロッククライミング、そしてブランコまでも購入。
しかし、遊具だけでは飽き足らず、2人で警察や泥棒になりきって
「こらまて、どろぼう!」
「たいほだ!」
「キャー!」などと叫びながら部屋中を走り回っていました。
一応、床には衝撃吸収のマットを敷き詰めていましたし「昼間だけなら大丈夫」と、多少、大目に見ていました。
玄関の下の隙間にメモが…
そんなある日のこと。ふと、玄関の方に目をやると、玄関のドアの下の隙間にA4サイズの紙が挟まれていることに気がつきました。
紙を引き抜いて見るとそこには、「子どもの足音がウルサイ。何とかしろ!」と、極太の黒いマジックで書かれていたのです。まるで何かの脅迫状みたいで、とても驚いたのを覚えています。苦情が来るとしても、直接言いに来るか、管理人を通してだと思っていたのでこんな形でくるとは…。
当時住んでいたマンションは、元々主人が1人で住んでおり、そこに私が転がり込む形で同居を始めたため、お隣さん以外にはまともに挨拶をしたことがありませんでした。ひとりで住むには広すぎる4LDKのマンションは、主人が前妻と離婚した際「いつか再婚した時のために」と購入したファミリー向けのものでしたが、それももう20年近く前のこと。
当時はたくさん住んでいたであろう子ども達も、今では成人している年齢です。苦情の紙を玄関に挟んだ人はおそらく下の階に住む人だとは思うのですが、面識がなく、どんな人かも分かりませんでした。
その日の夜、帰宅した主人に苦情の書かれた紙を見せました。主人は驚くというよりは、何やら考え込んでいるような表情でしばらく紙を眺めていました。
「下の階に菓子折でも持って謝罪に行こうか」と私が言うと、
「謝罪したところで子どもを大人しくさせるのは無理だよ」と主人。
「じゃあ、どうするの?」と私が詰め寄ると、主人はあっさり、
「この際だから引っ越すか」と言ったのです。
主人のその台詞は想定外でしたが、私たちはそのクレームがきっかけで本当に引っ越すことになったのです。とはいえ双子育児をしながらの引っ越しは大変で、子ども達から常に目が離せないため荷物を箱に詰めるだけでも一苦労でした。
マンションでは最初の挨拶が肝心?!
幸い引っ越し先の新しいマンションには小さな子どもがいる家庭も多く、引っ越しの挨拶に行った際に、
「子ども達がうるさくてご迷惑をお掛けするかもしれません」と私が言うと、にっこり笑って
「うちも同じだから」とか、
「うちの息子も昔そうだったから」なとど、温かい言葉をかけてもらいました。
確かに、夜、子ども達を寝かしつけていると上階から「ドドドドド…」と子どもが元気に走る音が聞こえてきます。でも、その子の顔や、両親のことを知っているので「お、運動会が始まったな」「元気がいいな」と、微笑ましく思えるのです。
今では感染対策のための規制も緩和され、子ども達も再び公園で思い切り遊べるようになりました。室内で走り回ることはほとんどなくなりましたが、未だに大きな声を出したり叫んだり泣いたりするので、そういった際は窓を閉めるなどして声がなるべく外に漏れないように工夫しています。
ご近所の方と親しくなって分かったことなのですが、夜勤の仕事をしていて昼間は寝ている住民の方もいらっしゃるようです。
クレーム文を書いた人も、もしかしたらそんな生活スタイルを送っていたかもしれません。やはり最初のマンションでも、しっかり挨拶をし、近隣の方としっかりコミュニケーションを取っておけばよかったなぁと反省しました。
(ファンファン福岡公式ライター/あそうママ)