ルイス・キャロルの児童文学小説「不思議の国のアリス」の初版本や挿絵の原案などが展示される展覧会「不思議の国のアリス展」が福岡市美術館(福岡市中央区)で2020年1月19日(日)まで開催中です。会場の様子をリポートします。
約150年、世界で愛される少女と不思議な世界
作品誕生から約150年。初版から途切れることなく毎年出版され続け、170言語に翻訳され各国で愛されている名作「不思議の国のアリス」。少女アリスが迷い込む不思議な世界と、個性豊かなキャラクターは世界中のファンを魅了しています。 今回の展覧会は、リアル脱出ゲームとのコラボレーションも実施され、見るだけでなく遊んで楽しめる内容です。
音声ガイド(1台税込み600円)も豪華に2パターン用意されています。 1つは映画「アリス・イン・ワンダーランド」(米/2010)でマッドハッターの日本語吹き替え版声優を務めた平田弘明さんが案内する「魅惑のワンダーランド編」。 もう1つは東大発“知識集団”QuizKnock(クイズノック)が展示作品に関するクイズを出題する「クイズ・バトル編」です。
会場は3つの章に分けられています。 第1章は「始まりの話―アリス誕生」と題し、「不思議の国のアリス」が生まれるまでのいきさつが展示されています。
英・オックスフォード大学の数学者として研究する一方で詩や小説を書いていた青年ルイス・キャロルが、学寮長の娘アリス・リデルとその姉妹に即興で創作し語り聞かせた話が、「不思議の国のアリス」の原点となる「地下の国のアリス」でした。
この話を気に入ったアリスが「今日のお話を本に書いて」とせがんだため、キャロルが手描きの挿絵を付けてクリスマスにプレゼント。その後、周囲から出版を勧められ、人気画家ジョン・テニエルの挿絵を依頼し1865年に出版されたのが「不思議の国のアリス」です。
貴重な初版本や日本初公開のテニエルが描いた挿絵の原案、キャロルやアリスの肖像が展示されています。各国の翻訳本、テニエル以外の画家が挿絵を描いた本が収納された本棚もあります。まるでリデル家に遊びに来たような気分です。
「アリス」にはキャロルの独特な言葉遊びが散りばめられているので、当初は各国の言語で翻訳するのは難しいと考えられていたそうですが、その懸念とは裏腹にさまざまな言語で翻訳刊行されています。
第2章は「アリスの物語―不思議の国への招待」。 「不思議の国のアリス」とその続編「鏡の国のアリス」の、トランプの国とチェスの国に登場する個性的なキャラクターたちが、現在世界中で活躍しているアーティストの手によって描かれています。
「不思議の国」をテーマにした絵は色彩豊かな絵が目立ち、「鏡の国」をテーマにした絵はモノクロで緻密な絵が目に留まります。物語を知らなくても、いつの間にかアリスの世界に引き込まれてしまいそうです。「鏡の国」の展示を見終わるとなんだか夢から覚めた気分。すっかりアリスになったような気分です。
フォトスポットも用意されているので、身も心もアリスになりきってみてください。
第3章は「アートの国―世界が愛する永遠のアリス」。 アリスの世界が持つ不思議な魅力に、過去さまざまなクリエーターが創作意欲に刺激を受けてきました。そんなアーティストによる多種多様な「アリス」作品が展示されています。
シュルレアリスムの巨匠、サルバドール・ダリ、「はらぺこあおむし」で知られるエリック・カール、前衛芸術家の草間彌生、ポスターやCMなどで作品を知られる清川あさみら多彩なジャンルのアーティストが表現したアリスの世界に存分に浸ってください。
ファッションデザイナー舘鼻則孝による「もしアリスが靴をオーダーしに来たら」をコンセプトに製作したガラスストーンが輝くキラキラのヒールレスシューズは見応えがありました。
anno lab(アノラボ)が手掛けたインスタレーション作品「ミミクリーの小部屋」は、「アリスの世界と少しだけつながったような体験を味わってほしい」という気持ちから作られたとか。これはぜひ体験してほしいと思います。
グッズは本展オリジナル商品をはじめ、福岡市中央区大名にある人気のコンセプトショップ「水曜日のアリス」とコラボレーションした商品など500種類強のアイテムが並びます。かわいくてちょっぴりダークな?! 雰囲気のグッズはついつい手に取ってしまいます。
人々を魅了してやまない「アリス」の世界に浸りに、福岡市美術館へ足を運んでみては。
不思議の国のアリス展
日時:~2020年1月19日(日) 9:30~17:30(入館17:00まで) ※月曜休館、12月28日(土)~1月4日(土)休館。1月13日(月・祝)は開館、14日(火)休館 場所:福岡市美術館(福岡市中央区大濠公園1-6) 料金:一般1,400円、高大生1,000円、小中学生600円 問い合わせ:福岡市美術館 電話:092-714-6051
施設名:福岡市美術館
住所:福岡県福岡市中央区大濠公園1-6