福岡市美術館が新春に贈るFukuoka Art Museum Concert 「ジャズを聴きたくて」

2023年1月9日(月)福岡市美術館が新春に贈るFukuoka Art Museum Concert「ジャズを聴きたくて」。今回のライブ・リーダーを務めるギタリストの内山覚さんに、ジャズに惹かれたきっかけと今まで歩んできた道、そしてこのライブの魅力などをうかがいました。

福岡市美術館にて草間彌生作品と共に
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音楽との関係は父の影響

僕の父は作曲家、またクラシック音楽の指導者でしたから、必然的にピアノを習っていました。もう練習がいやでいやで…中学2年で止めてしまいましたが。(苦笑)
けれども幼いころから「父=クラシック音楽」として憧れは抱いていたので、何かしら父と対峙できる、共有できることはやりたかったのだと思います。サティ、ラヴェル、ガーシュウインなどはクラシックからジャズに繋がる音楽ですし、キース・ジャレットやチック・コリアはまさに父と話が通じました。

ピアノを止めてから1年ぐらい経って、(例え叱られながらでも)何かしら楽器をやっていないことが不安になってきて、こっそりエレキギターを始めました。もとをただすと小学生の頃にテレビ「夜のヒットスタジオ」でチャーの演奏を観て、とてもギターに興味を持っていたんです。それを父に告げると「国の法律でまずはクラシックギターから始めなくてはならないことになっている」と言われ、幼い僕はそれを信じ(笑)、井尻のフカノ楽器へクラシックギターを習いに行きました。

宮城道雄の「荒城の月」を練習しながら、本当にこれでいいのか?!と子どもながらに自問自答していました。昔のことですから、父からするとエレキをやると不良になるとでも思っていたのでしょうね。(笑)

現在愛用しているギターと共に

ジャズの世界に魅せられて

高校生になってからヤマハの教室へ通いました。それがどんどん面白くなってきてこれを専門に勉強しようと卒業後に上京、丁度フュージョンやコンテンポラリー・ジャズの全盛期に入ってきており、渡辺可津美、カシオペア、MALTAなど日本にも魅力的なミュージシャンがどんどん出てきている時でもありました。

この時代だったからこそ、自分もこの世界に入っていけたのかもしれないですね。アール・クルー、ジョージ・ベンソンなど次々にすごいアルバムが出てきて、特にジョン・スコフィールドやパット・メセニーなどはまさにギターのための新しいジャズを創った!これが大きな刺激になりました。

福岡市美術館のカフェで大濠公園を眺める

ボストン バークリー音楽大学へ

アメリカに渡りボストンのバークリー音楽大学に行こうと志したのも、「穐吉敏子さん、渡辺貞夫さん、そしてジョン・スコフィールドやパット・メセニーも通った学校ってどんな処なんだ?!」と思ったことも理由の一つ。
当時はインターネットもありませんから。けれどもそれだけで俄然行きたい!と思っちゃったんですね。

実際に入学し、寮に入ったのですが、ルームメイトのロイがあまりにでかくてパンツ一枚で迎えてくれました。(笑)わずか6畳ほどの小さな部屋で二段ベッドの暮らし。ロイがなかなか個性的な奴だったおかげで、わが部屋は学生達のたまり場みたいになり、英語もろくにしゃべれなかった僕にも友達がたくさんできました。学校生活そのものは充実して楽しかったですね。

ボストンには素晴らしい美術館があって、たまたま近くに住んでいたので夏場は涼みに入り浸っていました。学生は無料だし…

ありがたいことにこの美術館のクリスマス・コンサートを3年ほどやらせていただきました。このコンサートは一般の人は入れないんですよ。いわゆる美術館のパートナー、パトロンを対象にしたもので、すごいお金持ちや名士達が一堂に会するのでみなさん仮面をつけます。写真も当然NGです。数億もするようなピカソの前に料理が並ぶのはさすがアメリカでした。日本では考えられないですよね。良い経験をさせてもらいました。

ボストン美術館でのクリスマス・コンサート(内山氏は右端)

バークレーは3年ちょっとで卒業しました。理論なんかは日本でしっかりやっていたし、夏休みも授業をとっていたので飛び級できたんです。アメリカにはなんだかんだで5年ほど滞在し、実家の問題も色々あったので福岡に戻ってきました。
生まれ育った福岡ですが、この地のジャズ・シーンをほとんど知らなかったので、知人が先ずは「コンボ(福岡で老舗のジャズクラブ)」に挨拶に行けとアレンジしてくれました。

ここ福岡の地にしっかり足をつけて活動の場を広げていこうと思いました。
それでも毎年、年末年始はNYに飛んで色々なミュージャンとセッションやレコーデイングもしています。残念ながらコロナのおかげでここ数年は実現していませんが。

バークリー音楽大学の卒業式

アート油絵の魅力は田部光子氏から

音楽以外に興味があったことですか?
別に話を作ったわけではないけれど「美術」なんです。(苦笑)

僕の祖父は日本画を描いており、長野で美術の先生をしていました。その影響もあって小学生の頃から近所で油絵を習っていたんです。その先生というのが田部光子氏。ここ福岡市美術館にも作品が収蔵されていますし展覧会も何回も開催されているかと。我ながらすごい先生に教えてもらっていたなと思いますね。当時4人の子供たちが習っていましたがそのうちの一人は画家になっています。

みぞえ画廊で田部先生の個展が開催された際に30年ぶりくらいにお会いしました。みぞえ画廊の社長が演奏で声をかけていただきました。これも不思議なご縁です。

福岡市美術館内にて(取材撮影は11月に行われました)

まさに音楽と美術、アートの橋渡しができたら

福岡は“商人の街”なので、芸術とか音楽で継続して活動するのは難しいこともあるかもしれないと帰国当初アドバイスしてくれた人がいました。正直なところ、そんな経験がなかったとは否定できませんが、根本的に熱い人が多い土地なので、僕たちがそこに火をつけられずにいるのかもしれません。

ボストンに留学していたので尚更そう感じるのかも。ボストンはアメリカの中でも特にARTに対する意識、支援度がとても高い街なんです。
だからこそ今回、福岡市美術館でライブをやらせていただけるのはとても嬉しいことです。ある意味、自分が音楽と美術の橋渡しの一端を担わせてもらっているような気がしています。

今回共演するピアノの塚本美樹さんとベースの丹羽肇さんはそれぞれが福岡の第一線で活躍されていて、テクニック、マインドが本当に素晴らしいミュージシャンなのでどうか期待してください。
どこかで聴いたことがあるメロディ、馴染み深いスタンダードを中心にプログラムを組んでいますので、ジャズに初めて触れる方大歓迎です! 楽しいと思ったら足でカウントをとってくれていいし、何か面白いぞと感じるものがあればどうぞ演奏中でも拍手してください。
ジャズの楽しみを一人でも知ってくれたらこんな嬉しいことはありません。美術館がジャズクラブに変わる時間をぜひご一緒しましょう。

(聞き手 樋口洋子)

Fukuoka Art Museum Concert ジャズを聴きたくて 公演概要

□日時 2023年1月9日(月・祝) 2回公演 1st Stage 13:30開演 / 2nd Stage 16:00開演 

□会場 福岡市美術館 ミュージアムホール (福岡市中央区大濠公園 1-6)

□出演者 ギター内山 覚/ピアノ塚本美樹/ベース丹羽 肇

□演奏予定曲目 ムーン・リバー/A列車で行こう/テイク・ファイブ/二人でお茶を/枯葉 他

(曲目は当日変更になる場合があります)

※公演入場希望の人は必ず事前の申込みが必要です。各回定員180名で申し込み多数の場合は抽選となります。(入場無料)下記サイトよりお申込みください。抽選の結果は当選メールの送信をもってかえさせていただきます。

申込み締め切り:2022年12月20日(火)必着

公演詳細とお申込みはこちらから➡http://www.fukuoka-art-museum.jp/event/63610/

※この記事内容は公開日時点での情報です。

著者情報

長年音楽・楽器業界で仕事をしてきました。わくわくドキドキと感動をお届けできるアーティストの情報をご紹介していきます。

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