初めての妊娠で、安定期に入るまでつわりに耐える日々。つわりの症状は人それぞれと言いますが、私は食べ物全般のにおいがダメでした。もちろん生の魚介類なんてもってのほか。そんな中、日帰り旅行から義母がお土産に持ってきたのはなんと刺身用の生エビ! しかもある要求つきで…。嫁いびりを疑った義母とのエピソードです。
義母がもってきたお土産は…
ある日の夕方、つわりで寝込んでいると突然玄関のチャイムが鳴りました。恐る恐るインターホンを見にいくと
「嫁ちゃーん、いる? お土産持ってきたのよー!」と画面越しでも「開けて!」と言わんばかりの義母の姿が…。
「あ、はい… 今開けますね」とだるい身体をどうにか動かし玄関のドアを開けるや否や
「はい! これ! 〇〇の市場に行ってきたんだけど、ちょうど新鮮な刺身用のエビがあったのよ~! こんな山盛りひとかごで1000円だったの。いい買い物でしょ?」とまくし立てます。
「そうなんですね… 私、(この間も言いましたけど)つわりがひどくて、生ものとかちょっとあれなので、あとで夫くんが帰ってきたらごはんに出しますね」とだけ返答する私。
つわり中の嫁にまさかの要求
テンションが低い私をよそに、義母の熱弁は続きます。
「これ、おいしいから新鮮なうちに夫くんに食べさせてあげたいのよ! 出すときはねほら、食べやすいようにここの殻を剥いて出してあげてちょうだいね!」と言い出すお義母さん。(ん? わたし、今、つわりで生もの無理と言いましたよね?)とまさかの要求に思わず固まってしまい、「今にも吐きそうな私に生エビの殻を剥けですって?」と口に出す元気はなかったので心の中で叫びます。
とにかくこの場をはやく終わらせたい一心で
「そうなんですね、ありがとうございます。ちょっと、具合悪いので」と御礼を言い、半ば強制的に帰ってもらいました。
義母をやり過ごしたはいいものの、渡されたビニール袋からは生臭いにおいがプンプン。ざっと見ただけでも20尾以上はあります。強烈なにおいに耐えられなかったので、袋を何重にもして封をし、即冷蔵庫へ入れることに…。もちろんエビの殻を剥く余裕などなく、すぐにソファへ横たわります。横になっている間も義母&エビ対策が頭をよぎります。義母のことなので、明日には夫に「エビ美味しかったでしょ?」と感想を聞き、嫁が殻を剥くという任務を成し遂げたか探りを入れるに違いありません。
ここは先手を打つことに… すぐさま夫に事の顛末をメールします。
「お義母さんから、エビの殻を剥いて刺し身で夫くんに食べさせるように言われたんだけど、私はつわりで無理だから自分でやって」と私。「ちなみに私がやるように言われたんだけど、つわりでそんなの絶対無理だから!」と軽く義母へのクレームも入れました。
あれこれと考える気力はもうなかったので、あとは夫に任せることにしました。しばらくして夫から「OK」の返信があり、どうやら帰宅後に美味しく味わったようでした。
「自分が正しい」を貫く義母
次の日、思ったとおり義母から、夫と私それぞれにエビの感想を尋ねるメールが入りました。殻を剥いたかには触れずに
「今は生ものが食べられないので、夫くんが美味しくいただいていました。たくさん食べられて喜んでいましたよ」と返信。感想を聞いておきながら、それに対して義母からの連絡はありませんでした。
後日、義母に会った際、自身はつわりの経験がなかったそうで、生ものが食べられないなんて信じられない!といった表情で
「気持ちの問題じゃないの?」
「つわりで生ものが食べられないことなんてあるの?」などと軽く諭された私。
義母はむしろ、妊婦検診の通院の帰りに羽根を伸ばして美味しいお寿司屋さんに寄るのが楽しみだったそうで
「医者が何と言おうと、私の身体のことは私が一番よく知っているのよ!」とお寿司の話を武勇伝のように語ってきました。どこまでも「自分が正しい」を貫く義母。私もバカ正直に答えるのではなく、次回から嘘をついてでも適当にスルーしようと思った出来事でした。
(ファンファン福岡公式ライター/西本結喜)