【続編|カップルカウンセリング】史上最大の夫婦喧嘩でぶつかった結果は…

 私と夫は結婚して20年以上たつ夫婦。男の子2人にも恵まれ、一見幸せそうに見える家族ですが、内情は家庭に無関心な夫と鬼嫁というカップル。そんな冷え切った夫婦関係を修復した、カップルカウンセリング体験記の続編をお伝えしたいと思います。

目次

カップルカウンセリングに出会った経緯

写真AC

 その当時、夫の無関心ぶりにたまりにたまった不満が爆発し、鬼嫁と化した私は、夫に激を飛ばしてなんとか家庭に引き込もうと必死でした。しかし一向にやる気のない夫に対して怒りが頂点に達した時、私たち夫婦は最大の危機を迎えます。そんな夫婦関係に転機が生じたのは、ママ友の紹介で受けることになったカップルカウンセリングです。
 
 熱心なカウンセラーの先生の下で夫婦問題を話し合ううちに、夫は少しずつ家庭に目を向けるようになります。しかし義両親の不仲が原因で夫が抱えている根深いトラウマが浮き彫りに。トラウマが原因で夫は人間不信を抱き、人との深いやりとりを避けて生きてきたのです。夫がトラウマを乗り越え、人と真正面から向き合えるようにならなければ本当の家族の絆は築けません。

 そこで先生が考え出したのは「史上最大の夫婦喧嘩大作戦」夫婦の本音をガチでぶつけ合い、血の通い合ったやりとりは深い絆を生むということを経験させようという目論見です。過去の恨みつらみを思いっきりぶつけてやろうとほくそ笑む私と、何もしらずにのほほんとしている夫。さてこの作戦の結末はいったいどうなったのでしょう?

決戦の火ぶたが切って落とされた!

写真AC

 カウンセリングの前日、先生から「おもいっきりやっちゃってください!」と激励をもらった私は、拳をボキボキと鳴らさんばかりの勢いで会場(カウンセリングルーム)入り。闘志むきだしの私とリングにあげられたことにさえ気づいていない夫という2人のファイター、間に先生というレフリーをはさんで、ついに決戦の鐘が鳴りました!

 「家事を多少手伝うようにはなったが、休日のほとんどが寝るか携帯かTV!」
 「子どもと雑談はするが、学校とか大事なことになると途端に見て見ぬふり!」
 「家族という責任から逃げようとしているとしか思えない!」
 「なんで私ばっかり責任を背負わなきゃならないの!」

 感情が高ぶった私は次々とパンチをくりだしていきます。それに対して
 「わかった」や
 「今仕事が忙しいからさ…」などと、煮え切らない態度の夫。

 「わかったと言っては何度も同じことをくりかえしてる! もう我慢の限界!」と、とどめ! すると返事に困った夫はだんまりを決め込み、会場がシーンと静まり返りました。

写真AC

 その瞬間、先生が1枚の紙を差し出しました。そこに書いてあったのはあるカップルカウンセリングの事例。中心にはメビウスの輪が描かれ、妻が怒りを表すとそれが夫に流れ、夫は自信をなくし無気力に。ますます無気力な夫を見て、また妻が怒りだすという悪循環の輪が描かれていたのです。
 そしてお互いの輪の裏側にあったのが、妻と夫の本音。妻側には「孤独」、夫側には「自信喪失」と書かれていました。今の私たち夫婦の姿そのままです。

 自分のやっていることの愚かさを悟った私。私が叱れば叱るほど夫は自信をなくし家庭に関わらなくなること、そして私の怒りの根本には、家事や子育ての責任を1人で抱えてきた「孤独」があったのです。先生が紙について説明している傍らで、恥かしさと孤独感が押し寄せてきました。先生は
 「今のお気持ちはいかがですか?」と私たち夫婦に問いかけてきました。

 「私の怒りは孤独からきていたのですね。うすうすは感じていましたが、今はっきりと自覚しました。このメビウスの輪のような不毛な関係を続けることにもう疲れ果てました。将来的に離婚か卒婚をしたい」と夫に訴えました。
 般若の面がポロリとはげ落ちた私の顔には大粒の涙がいくつもこぼれ落ちていきます。夫は相変わらず無言でそっぽを向いていましたが、肩が小刻みに震えていたので、もしかして泣いていたのかもしれません。

自分の愚かさに気付いた妻

写真AC

 疲れ果てた私は何日も寝込こむことに。数日たち、少し冷静さを取り戻した私は、今後について考えてみることにしました。私の今の稼ぎでは経済的な自立は難しいので、現時点ではメビウスの輪を断ち切る方法を模索してみるか残された道はない。では私はいったいどうしたらいいのだろう?

 その答えをくれたのは夫でした。私が具合悪そうにしていると
 「大丈夫?」と声をかけるようになったのです。結婚以来初めてといっていい、私を思いやる言葉。今までは私がどんなに咳き込もうが熱を出そうが、携帯とTVばかりを見つめていたのに。ただビックリするばかりでしたが、私が夫に本当に求めていたのは、家事育児という実務的なことよりも、相手を思いやる心だったのです。

写真AC

 それは私が鬼嫁化する前、夫に対して一生懸命かけてきた言葉たち。でもどんなに優しくしても私や子どもに無関心な夫に孤独感を深め、孤独がいつしか怒りへと変貌。ますますうまくいかない関係性に絶望した挙句、夫と同じ無関心な態度をとるようになっていったのです。
 夫も幼少期、両親の不仲を目の当たりにして、孤独や怒りから自分自身を守るために無関心でいることを選んだのかもしれません。夫と義両親の中でできあがったメビウスの輪を、自分の妻と子どもで見事に再現しているのです。

 メビウスの輪を良い循環にかえるには、思いやりのある言葉ではないだろうか?そう思った私はあたたかみのある言葉をかけるように心がけました。夫の方はまだメビウスの輪の関係性をよく理解していないようでしたが、私の「孤独」をつきつけられ、さすがにこれではいけないと、家事や育児、会話などとりあえずできそうなことを手当たり次第やっている様子です。

夫婦のその後

Adobe Stock

 1カ月後、カウンセリングルームを訪れた私達。
 まだ関係はギクシャクしていましたが、とにかく夫が頑張っていることを褒め称えました。日を追うごとに家事や育児に関わり、ごくたまにある夫のあたたかい言葉が嬉しかったのはまぎれもない事実ですが、人前での賞賛、それがなによりも夫の自信回復につながると思ったからです。先生は
 「私が予想していたよりも、素晴らしい結果がでましたね」とニヤリ。先生は私の怒りを発散させ、内省を促し、鬼嫁を見事に退治しました。

 私は、それから世界がグンと広がったように感じています。子どもや夫を信頼して任せるようになったり、本音を話し合えるママ友ができたり…。メビウスの輪は夫との関係だけでなく、私の生活全般を縛っていたのです。解き放たれた私は、以前にないほど軽やかな感覚を味わっています。

 それでも時には失敗したり落ち込んだり、また頭に角が生えてきたり… いつのまにか足元に鎖が絡みついていることに気づきます。それをなんとか振り払い、また前に進む、そんな繰り返しです。仲のいい夫婦になったのかと問われたら、決してそうではありません。
 私は鬼言葉を変換してやわらかい言葉で伝え、夫は自分の殻に閉じこもっていますが、時々ヒョイとでてきてやさしい言葉をくれる、といったような感じです。

Adobe Stock

 私のように夫に怒りを抱えている妻、家族に無関心な夫は世の中にゴマンといると思います。それはあなたや夫だけのせいではなく、その両親、そのまた両親から受け継いできた鎖の輪なのかもしれません。
 そしてその怒りの奥底に隠れているのが孤独。その孤独に向き合うこと、その孤独を相手に伝えることが鎖を断ち切る第一歩。すると不思議なことになぜか胸に希望が灯りはじめるのではないか、そんな気がしてならないのです。

(ファンファン福岡公式ライター/日野原 花)

※この記事内容は公開日時点での情報です。

著者情報

ファンファン福岡(fanfunfukuoka)は、街ネタやグルメ、コラム、イベント等、地元福岡・博多・天神の情報が満載の街メディア。「福岡の、人が動き、人を動かし、街を動かす」メディアを目指しています。

目次