私が小さい頃、明治生まれの祖母がちょっと怖くて不思議な話をたくさん聞かせてくれました。少しずつアップしていきます。
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6歳の春、庭の築山の隅に一尺四方(約33cm)の石の蛙がある事に気がついた。
「おばあちゃん、大きなかえるがいるよ」
「石の蛙だね。おじいちゃんが若い頃に彫ったものだよ」
「なぜほったの?」
「雨が長く降らない年に、いくつも彫ったそうだよ。今はこれしか残っていないね」
「ふーん。雨は降ったの?」
「私が聞いた話だと…」
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干ばつの夏、雨乞いの祈りを込めて祖父は十数匹の石の蛙を彫り、村の人々の家に据えて回った。
毎日、その蛙に水をかけて雨を願ったが一向に降らない。
「あんまりご利益がないねえ…」
皆がそう思い二週間くらいたった頃、やっと雨が降った。
石の蛙のおかげとは誰も思わなかった。
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それから十五年…戦争が終わった秋。
「お久しぶり! 今日はお礼に来たよ」
石の蛙を据えたうちの一軒、Nさんが山ほど食べ物を抱えて訪ねて来た。
あっけにとられる祖父母にNさんは語り始めた。
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「ある晩、南方に出征している息子が夢に出て、『母さん、水を頼む!』って言うから飛び起きたんだけど、どうしようもないだろ。藁(わら)にもすがる思いであの石の蛙に一生懸命水をかけたんだよ。戦争が終わって帰って来た息子にその話をすると、ちょうどそのころ大勢の敵兵に囲まれてもう駄目だと思っていたら、天の底が抜けたような大雨が降って脱出できたって言うじゃないか。まったくあの蛙のおかげだよ。本当にありがとうね!」
Nさんは頭を下げ下げ帰って行った。
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「じいちゃんのかえるすごいね!」
「食べ物の無いときだったからありがたかったね。無事かえる…時々水をかけておやり」
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