福岡市地下鉄藤崎駅4番出口から紅葉八幡宮(福岡市早良区)方面へ徒歩約7分、「紅葉山(もみじやま)公園南口」交差点すぐの場所に2019年12月にオープンした「マカオカフェ」(同)。マカオの家庭料理やスイーツが楽しめるアットホームな店で、大きな緑色の看板が目印です。
マカオ出身の呂さんが腕をふるう家庭料理をどうぞ
「いらっしゃいませ!」と笑顔で迎えてくれたのは、マカオ出身の呂詩詠(リョ・シヨミ)さん。テーブル2つ、全8席の小さな店内には、まるでヨーロッパのような雰囲気のマカオの風景画などが飾られて異国情緒を盛り上げています。マカオは1999 年までポルトガルの植民地だったことから、アジアとヨーロッパの文化が融合しています。 「中国本土の南、香港の対岸に位置するマカオは、アジアとヨーロッパの交易の中継地でもあったので食文化も多彩で豊かです。マカオ料理は、ココナツミルクやレモン、魚醤(ぎょしょう)、シュリンプペースト、黒コショウなど東南アジアから伝わった調味料を多く使い、辛過ぎないので親しみやすい味ですよ」と呂さんは流ちょうな日本語で教えてくれます。
呂さんは、マカオ大学で日本語を専攻し、05年に志學館大学(鹿児島県)、08年に広島大学大学院と2度の留学経験があり難しい日本語もなんのその。香港で日本語に携わる仕事をしていましたが、自身も香港出身の夫も大の日本ファンだったことから18年に日本へ移住しました。 「マカオも香港もビルだらけで、狭くて大都会過ぎます。けれど私も夫も訪れたことのあった福岡は適度に便利なのに山も海も近く、しかも香港へのアクセスも良いということで福岡へ。夫は現在、市内のIT関連会社に勤務しています」と呂さん。人との交流が大好きで明るい呂さんは「どこかに勤めて福岡にただ“住む”のではなく、一刻も早く“なじみたい”と思いました。福岡というコミュニティの一員になりたい、だから得意な料理を生かして地域の人にマカオを知ってもらえるお店を開こうと考えたんです」。
香港や中国広東省から福岡に来る人の数に比べてマカオからは珍しく、「みんなから『マカオってどこ?』『マカオってカジノでしょ』とばかり言われて、もどかしかった」と移住当時を振り返ります。
12歳から家族の食事を作っていたという料理自慢の呂さんが作る、本場マカオの家庭料理や日本人に人気の麻婆豆腐など多くのフードメニューがそろう同店で、最近人気急上昇しているのが、メロンパンをバンズにして中に肉を挟んだ「マカオ風バーガー」(税込み800円)です。 香港には日本のメロンパンに見た目も味も似ている、パイナップルパンという意味の「菠蘿包(ボーローパウ)」というパンがあり、それにバターを挟んだり、中にチャーシューを入れた飲茶メニューが人気で長く親しまれているといいます。
「それを同店流にアレンジしました。バンズ用にサイズや甘さを指定したメロンパンをパン店にオーダーしています」と呂さん。サンドする肉はポークかチキンかが選べ、目玉焼きとチーズ、野菜を挟んだボリューミーなメニューです。今回は、マカオでよく食べられているというポークを選びました。
軽く焼かれたメロンパンの表面がカリッと香ばしく、ひと口かぶりつくとパンのクッキー生地の甘さと、玉ネギと一緒に甘辛く炒めたポークの甘じょっぱさがクセになりそうです。
バーガーに挿してある緑の旗はマカオの区旗。「マカオは特別行政区ですから、国旗ではなく区旗なんですよ。蓮の花がデザインされています。店の看板の緑もこの旗からイメージしました」とのこと。呂さんは、まるで民間のマカオ観光大使。話していると、マカオのことをたくさん知ることができます。
同バーガーは、数量限定なので、食べたい場合は事前に電話で問い合わせを。なお、アイスクリームなど溶けるメニュー以外は全てテークアウトOKです。
店の看板メニューでもある、マカオを代表するスイーツ「マカオ風エッグタルト」(220円)も楽しんでほしい一品です。エッグタルトは元はポルトガルの伝統菓子「パステル・デ・ナタ」が原型で、それがマカオでも作られるようになったとされます。
「本場ポルトガルのタルトは中がとろっとしたカスタード。日本でもいろんな店のエッグタルトを食べましたが、ほとんどがそれでした。マカオのエッグタルトは中がプリンのようにほどよく固まっていて濃厚な卵の風味が楽しめるのが特徴です」と呂さん。
呂さんは地元マカオで食べるのと同じように焼きたてアツアツで食べるのが好みだそうですが、あえて冷蔵庫で冷やして中がよりプリンのように冷えた感じで食べているという常連客もいるとか。焼きたてが食べたいというファンは、店に到着する30分前に予約の電話をしてくるほどだそうです。
「儲けようと思ったらこの値段ではできないのですが、私の目的は、マカオを福岡の人に知ってもらうこと。そしてこの店が地域になじんで憩いの場になることです。ワンオペなので、ドッとお客さんが来ても対応ができずご迷惑をかけてしまうかもしれません。ぜひ電話予約や、混雑状況などの確認をしてくださいね」と呂さんは話します。
ほかに、香港でよく飲まれるコーヒーと紅茶をミックスした「コーヒーティー(鴛鴦茶)」(380円)など、福岡ではほとんどお目にかかれないメニューがずらり。月替りのランチもあります。
マカオファンやマカオに行ったことがある人だけでなく、今後行きたい、本場のマカオ飯が食べたいという人も足を運んで、呂さんとの会話を楽しんでみてくださいね。
マカオカフェ
住所:福岡市早良区高取1-21-10 電話:050-5308-5510 営業:11:00~ 21:30(L.O.21:00) 日・月曜休 インスタグラム @macaocafe2019