進化する人工透析治療。ライフスタイルに合った治療で社会復帰を後押し。【福岡東ほばしらクリニック】

 血中の老廃物や余分な水分を排泄することで、血液・体液の状態を適正に保つ腎臓。その働きが10%を切ると、透析治療などの「腎代替療法」を受けなければ、生命維持が困難になります。腎代替療法には、透析器に血液を通して体に戻す「血液透析」と、腹腔内に透析液を溜めて血液を浄化する「腹膜透析」、腎臓の提供を受ける「腎移植」などがあります。患者の病状だけでなくライフスタイルによって、治療法を選択できるようになった現在の人工透析の現場について、「福岡東ほばしらクリニック」の張同輝先生にお聞きしました。

出典:西日本新聞
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【腎臓専門医】医療法人やまびこ会 福岡東ほばしらクリニック 張同輝 先生

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 大阪府出身。弘前大学医学部卒業。日本透析医学会指導医、認定医。2019年「福岡東ほばしらクリニック」院長就任。内科、腎臓内科、糖尿病内科を中心として、地域の「灯台」になるような安心できるクリニックを目指す。

血液透析と腹膜透析、自分に合う治療法を選択

 腎臓は、かなり機能が落ちてからでないと異常に気づきにくい臓器であり、透析治療開始のタイミングを逃すと治療の難度だけでなく、生命予後にも関わってきます。  「透析導入基準」と呼ばれるスコアリング(数値)だけでなく、むくみや慢性的な倦怠感などの自覚症状、患者さんがどういうライフスタイルを重視したいかなどの希望を総合的に判断し、治療が進められます。  人工的に血液を浄化する透析治療は「血液透析」と「腹膜透析」に大別され、血液透析はさらに、週3回・1回あたり4〜5時間の「標準透析」、週4回以上の「頻回透析」、標準透析を1回あたり6時間以上行う「長時間透析」、透析装置を自宅に設置して行う「在宅血液透析」に分類されます。  腹膜透析と在宅透析は、ともに在宅医療のひとつです。血液を体外に取り出し、人工腎臓(ダイアライザ)でろ過する血液透析と異なり、腹膜透析は腹腔内にカテーテルを挿入する外科的処置を行い、そこから透析液を入れて一定時間貯留することで、腹膜を介して毒素や余分な水分の除去を行うため、週に何度もの通院を必要とせず在宅での治療が可能です。

日中の活動に支障が少ないオーバーナイト透析に注目

 近年、血液透析で注目を集めているのが、夜間就寝中に透析治療を行う「オーバーナイト透析」です。週に3回、日中に病院に通う通常の透析治療は生活や仕事に時間の制限が生じ、周囲の理解も必要です。  しかし、オーバーナイト透析は睡眠時間を活用した治療のため、日中の生活への支障が少なく、寝ている間に終わるので治療の体感時間も短く感じられる傾向にあります。  特に当院は「全室完全個室」のため、プライバシーなども守られます。また、透析時間や回数が多いほど血液データの改善が見込めるため、日中行われる一般的な4〜5時間の透析の約2倍にあたる8時間程度の時間を使って、ゆっくりしっかりと毒素を抜きます。  1時間あたりの除水量が減らせることも、体への負担を少なくしてくれます。

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在宅血液透析という 新しい選択肢。毎日の透析で体の負担を軽減

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 腹膜透析と同じく在宅での治療が可能な「在宅血液透析」も、週に何度もの通院を必要としない治療スタイルです。  日本には現在、約34万人の人工透析治療患者がいて、その97%以上の患者さんが施設での透析治療を行っています。しかし在宅血液透析は、自宅というリラックスできる環境で、自分の生活リズムに合ったスケジュールで透析ができます。  週3回の通院が不要なだけではなく、治療は月14回までという保険請求上の回数制限もなく、毎日透析を行うことも可能です。毎日透析ができれば1回あたりの透析時間を短くすることもできるので、まさに自分に合ったオーダーメードの治療ができるというわけです。    自分で穿刺したり、透析装置を操作したりすることに不安を感じる方は、施設に通院して安心感を。例えば当院は、「日曜透析」が可能で、週3回以上の透析を希望される方もしっかり治療ができます。  このように多様な透析方法の中からライフスタイルに合わせた治療を選択し、病と上手につき合えるよう努めています。

在宅透析は自分で管理できる力と介助者の存在が必要

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<在宅透析のメリット> ● 週3回の通院の必要がない ● 自宅で人の目を気にせず透析ができる ● 治療回数に制限がなく、自由なスケジュールで透析ができる ● 毎日の透析が可能で血液検査データの改善が期待できる <在宅透析のデメリット> ● 装置の設置や配管工事などが必要 ● 電気・水道代がかかる(地域によるが月に数千円~2万円ほどプラス) ● 装置や物品を置くスペースが必要 ● 介助者が必要

オーバーナイト透析は主に、日中仕事がある方に向いている治療。福岡東ほばしらクリニックの患者平均年齢は約52 歳

<オーバーナイト透析のメリット> ● 長時間かけて毒素を抜くので血液検査データの改善が期待できる ● 除水速度がゆるやかなので体への負担が少ない ● 就寝中に透析を行うので日中の時間制限が少ない <オーバーナイト透析のデメリット> ● 週3日、夜が不在になるので家族の理解が必要 ● 透析をしながらの睡眠に多少の慣れが必要 ● 個室ではない施設の場合、他の患者のいびきや装置音、プライバシーなどが気になる

福岡東ほばしらクリニック

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