「コロナ禍と睡眠」の関係 眠りの質を上げて感染症対策を【福岡浦添クリニック】

 不安が募るコロナ禍にあっても、ぐっすり眠れる健康な毎日を過ごすコツとは。コロナ禍と睡眠の関係について、編集部が専門医にインタビューを行いました。

出典:西日本新聞
目次

【総合内科専門医】睡眠障害センター 福岡浦添クリニック 山口祐司先生

出典:西日本新聞

 福岡市出身。自治医科大学卒業。浜の町病院、熊本大学病院、ハーバード大学医学部ベスイスラエル病院などで研鑽を重ね、2000 年から「福岡浦添クリニック」院長。「グッドスリープ・グッドライフ」をモットーに日々診療を続けている。日本睡眠学会専門医。 ●先生の著書/「専門医が教える症状から見た睡眠障害の診断と治療」では睡眠障害の具体的な症例、治療法などを詳しく紹介されています。

2020年春以降、不眠症外来の患者が増加中

編集長:コロナ禍発生以降、睡眠に悩む人は増えているのでしょうか? 山口先生:確実に増えています。睡眠障害の中でも一番増加している病態は不眠症で、当院の外来でもこの半年間、初診の不眠症患者数が増えました。潜在的にはもっと多いと思いますね。 編集長:なぜ不眠症の人が増えているのでしょうか。 山口先生:ストレスホルモンであるコルチゾールは不安によって分泌され、脳を覚醒させて、睡眠の分断化と不眠症状を引き起こします。COVID‐19によってもたらされた健康、収入、将来などに関する不安感が、外出制限によるコミュニケーション不足でいっそう増悪して、不眠の元となっているのでしょう。巣ごもりでテレビやスマホなどを見る機会が増加したことも、一因かと思います。 編集長:ストレスが引き起こす不眠症は治療できるのでしょうか。 山口先生:可能です。治療法には薬物療法と非薬物療法がありますが、薬に頼りすぎると根治に結びつかないため、近頃では「出口の見える治療」を行い、睡眠剤の服用を徐々に減らし、最終的には服用を中止する治療法を行っています。 編集長:睡眠不足は免疫力の低下を招くと聞きますが、本当でしょうか? 山口先生:そう考えていいでしょう。全米健康栄養調査によると、睡眠不足の人は、上気道感染症に罹患しやすいことが判明しています。また、睡眠が不足している人より睡眠を十分に取っている人の方が、インフルエンザワクチンの効果が上がるという研究結果もあるんですよ。  免疫力を低下させないため、ひいては新型コロナウイルス感染症にり患しないためにも、十分な睡眠をとることは非常に大切です。

入眠前の環境を整えれば睡眠の質は上がる

編集長:では、どうすれば、よい睡眠を得られるのでしょう? 山口先生:就寝6時間前から、チョコ類も含めカフェインの摂取を控えてください。ニコチンもアルコールも睡眠に悪影響を及ぼします。 編集長:アルコールも?眠るためにお酒の力を借りる人も多そうですが。 山口先生:確かに、寝る前にアルコールを摂取すると入眠は早くなりますが、中途覚醒を起こすために睡眠の質が下がるんです。ですから寝酒はNG。  それから大切なのは、やはり規則的な運動です。ただし、就寝6時間前以降に運動すると体温が上がって入眠を妨げる可能性があるため、夜の運動はおすすめしません。 編集長:睡眠の質には体温も関係するのですね。 山口先生:体の深部体温が下がると眠気を催します。ですので、入浴は就寝1時間前に済ませるのがいいですね。  ストレスはしばしば不眠の原因となりますから、就寝時間に気持ちをリラックスさせることも有効です。リラクゼーション運動やアロマなども睡眠を改善させます。自律神経訓練法も取り入れるといいでしょう。

出典:西日本新聞

編集長:眠るための環境はどのように整えればいいのでしょうか。 山口先生:遮光カーテンやスポットライト、バックグラウンド音楽、耳栓などを利用して、静かで暗い環境を作ることが重要です。また、スマホやタブレットは少なくとも就寝1時間前には使用を終えてください。 編集長:医療機関に相談したほうがいい症状は? 山口先生:生活に支障をきたしている時ですね。それに、睡眠がとれていないことに対して、悩んでいたり不安感を抱いている時。さらに、不眠の自覚がなくともいびきや無呼吸、また夜中の大声などでベッドパートナーや家族に迷惑や心配をかけている場合も、受診するようにしましょう。

出典:西日本新聞

睡眠障害センター 福岡浦添クリニック

※この記事内容は公開日時点での情報です。

著者情報

「こんなとき、だれに相談すればいい?」
気になる病気や症例を専門医がアドバイスします。

目次